外国人技能実習生の帰国から


 先日、下記のメッセージがフェイスブックに掲載されていました。

 ATTENTION 
 お知らせ

 To those who have plan to go and work to JAPAN this month.
 今月日本に働きに行く人に対して

 WHAT
 目的

 Free Orientation-Seminar on Japan Basic Labor Laws
 無料の日本の労働の法律についての基礎知識セミナーの開催

 WHEN
 日時

 At your most convenient time.Online orientation is also available
 あなたの都合の良い時間に。インターネットによる方法も可能です

              By Hiroshima Group for Workers Support for Filipinos
              フィリピン人労働者を支援する会

 このメッセージを書いたのは7月にフィリピンに帰国した技能実習生の内の1人です。何故、彼がこのメッセージを投稿する気になったのか、投稿せざるを得なかったのかをその背景を紹介いたします。旧約聖書のヨブやギリシア悲劇のオイディプス達は自分にはなんらの非もないにも拘らず神に弄ばれ、自分に問題があるかのように周りからは非難を受けました。彼らもこれと同じように全く非がないにもかかわらず3年の研修期間を全うできず1年以上残した状態で帰国させられることになりました。この原因をつくった協同組合と受け入れ企業は自分達に都合のいい方向での解決しか考えていませんでした。不法行為を行えば当然それに対する補償は当然のことといえますがまったくそれに応えずビザの期限がないことを盾にまともに解決に向かっての努力をせず、砂を噛むような思いしか残っていません。彼も同じ思いからこのメッセージを投稿したといえます。
 この事件の問題点は三点あります。(1)研修目的外の仕事に従事させられていたこと、(2)時間外手当の未払い、(3)ビザが半年残っている者への雇用保険受給の問題です。これらについて紹介します。
(1)研修目的外の仕事に従事させられていたこと
 技能実習生が研修の目的で従事できる仕事は66職種123作業(2010.7.1)に限定されており、最初の1年間は研修期間として技術の習得に励み、基礎2級の技能検定に合格して初めて2年目以降の研修が可能となります。当然、従事する職種は3年間同じものでなければいけません。彼らは「建築配管作業」の目的で来日していましたが全く違う作業に従事させられており、JITCOの巡回指導でこれが発覚したようです。会社は労働基準監督署の調査で指導されたといっています。研修目的が違っていることは彼らも知っていますが、それに抗議すれば強制帰国させられるのは分かっていますし、それ以前に技能実習生達には出稼ぎとの意識しかありませんし、会社にとっては安い労働力であり、また第1次受入機関の協同組合にとっては金のなる木でしかありません。ちなみにこの協同組合は管理費として毎月一人当たり5万円を会社から徴収しているとのことでした。
 こうした協同組合と会社の違法行為が発覚して帰国させられるとなれば残りの研修期間に対する損害賠償や慰謝料の問題が発生します。この問題について全く補償を受けることはできませんでした。ビザの残りの期間がなかったこともありますが、今後同様の問題が発生すれば裁判に進むことを前提とした対応を取っていかざるを得ないと考えています。
(2)時間外手当の未払い
 研修生時代は日々の残業時間と休日出勤時間については毎月各70時間程度ありながら一切支払いはされていませんでした。技能実習生になってからは会社の言い分に従うと一応まともに支払われておりその額も少ない額ではないので真面目に対応しているのは分かりますが、次の二点での問題がありました。一つは、残業時間の計算方法です。毎日の労働時間から30分未満の端数を切り捨てていることです。労働時間は1分単位で計算するのが原則であり、日々こうした処理を行うことは認められていません。ただ1か月の労働時間を集計した結果30分未満について切り捨て、30分以上は切り上げの処理については認められています。毎日15分の切り捨てがあったものと仮定し、時間給は最低賃金として計算すると、
 15分×26日=390分(6時間30分)×704円×1.25=5,720円
 の未払が毎月発生することになります。
 二番目の問題は1年単位の変形労働時間制を導入しているとの理由で土曜日の労働に対する割増賃金が支払われていないことです。労働基準監督署に提出したという届出書を持ってきていましたが全くいい加減なもので労働基準監督署が受け取ったこと自体理解できない内容でした。
(3)ビザが半年残っている者への雇用保険受給の問題
 3人の内の一名についてはビザが翌年の1月まであるため失業保険を受けられる期間日本に残りたいとの希望がありました。会社都合による解雇ですから3か月の待機期間を待たずにすぐに失業保険が受給できます。期間は90日です。当然この権利行使については何ら問題がないにも拘らず会社はこれを拒否してきました。理由は簡単な話で彼らの後任として高齢者を雇用し厚生労働省の特別雇用開発助成金を受けるためです。過去2年間の内に会社都合による解雇があればこれを受けることができないのがその理由です。このまま帰国すれば解雇ではなく自己都合退職で処理して助成金を不正受給するためです。不正受給して自分達だけが甘い汁を吸うのであればそのうちの幾何かを契約期間の残りに対する損害補償として支払ってくれと声を大きくしたい思いがあります。
 会社が倒産したり、今回のような場合には、研修目的に合致した仕事が見つからなければ帰国せざるを得ません。制度上やむを得ないとはいいながら、本人達には全く非がないため、研修目的外での使用の場合には協同組合また受け入れ企業に対して本人たちに一定の補償をする義務を負わせる必要があると考えますし、再度この制度で来日することを認める必要があるといえます。