労働基準法−10 (第19〜20条)
外国人技能実習生を中心として

解雇制限・解雇予告



 会社を退職する場合の事由には、自己都合、定年、雇用期間満了、解雇など様々なものがあります。大別すると、会社の都合によるものと労働者の都合によるものとに分けられ、一定のルールがなければお互い迷惑を被ることになります。そうしたことから民法では次のように定めています。

第627条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
 6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、3箇月前にしなければならない。


 これは期間を定めなかった場合の話で、期間を定めている場合には、民法第628条に、やむを得ない事由がある場合には直ちに解除できるが損害賠償の責任を負わなければならないと定められています。これに対して労働基準法は労働者の権利を守り、会社の一方的な解雇を防止するための要件を第19条と第20条に定めています。

(解雇の予告)
第20条
 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
(解雇制限)
第19条
 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

両条文とも【6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金】

 しかしこの条文があるからといって30日前に解雇予告をすれば解雇が合法的に成立する訳ではなく、過去の判例の結果に基づいて労働契約法第16条は

 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして、無効とする。


 と定めていますので、解雇するだけの理由がなければ解雇は成立しないことになります。現実には賃下げに応じないので解雇する等理不尽な解雇が普通でしょう。当然解雇予告手当など支払われずに・・。こうした状況に直面してしまうと復職はまず望めないため、復職でなく一定の補償を要求するのが一般的です。請求できるものとしては解雇予告手当と慰謝料また期間契約であれば残りの期間に対する賃金補償となります。その方法としては労働局や労働委員会に置かれている紛争調整委員会や労働審判があります。また労働問題への支援団体の利用やユニオンでの団体交渉という方法もあります。いずれでも解決できなければ訴訟を起こさざるを得ません。現実には、こうした手段を選ばす泣き寝入りで諦めているのが実態です。

 技能実習生の場合、3年間の研修と当初から定められているためこれらの条文が関係することはありえないはずですがいろいろ問題が発生しているので幾つかの例を紹介します。

 技能実習生の問題に関わりだした数年前に仕事中に目を負傷して帰国させられた例を2件聞きましたし、何か問題が発生すれば帰国させることが普通に行われています。第19条の「療養のために休業する期間及びその後30日間」との規定は無視されているのが現状かもしれません。しかし次のような例もあります。教会での集まりの後、ガラス戸にぶっつかって足を負傷し入院した技能実習生の場合、協同組合の職員が、夜間にもかかわらず、病院に来て、その場から会社に連絡をとり傷病手当金の手続きについて指示を出していました。こうした例が普通だと思いながらも、私たちのところに寄せられる相談は悪い例ばかりであるため、すべての技能実習生が同様の目に遭っていると短絡してしまいます。ただ、少々のことならば労災申請ではなく健康保険での治療で処理されているのが現状かもしれません。その場合、休業補償は当然ないでしょうし、医療費も自己負担と考えられます。ゴルフ場で働いていた3人のフィリピン人の例がまさにこの悪い例でした。一名は来日まもなく、足を傷めて帰国させられたと聞いています。この数ヶ月あと2名が残業代の問題で相談に来た中で、一名か手を負傷して十分に治療をさせてもらっておらず痛みを抱えていると話していました。まだ来日して1年もたっていない時なので残業代もあと1年は問題にしないとのことで、残業時間の記録だけは取ることと、手の痛みについては病院に連れて行ってもらうように会社と話してもらうことで別れました。それから数ヵ月後、手の痛みがひどく、仕事も休ませてもらえないし、ゴルフ場に住み込んでいるため治療も十分に行えないと相談してきたので、休業して、広島で療養できるよう協同組合に強く申し入れさせました。休業・治療と共に、帰国したいとの思いもあり、ユニオンに加入して、未払いの残業代の請求をすることになりました。

 団体交渉に入っても会社に誠意がなく、交渉の進展もみられないため、生活費の問題から健康保険に傷病手当金の手続きのため会社に休業と賃金の証明を求めると解雇してきました。労災であれば当然この条文で解雇無効となり、休業補償も受けられたと言えます。仕事上での骨折等であれば問題はないでしょうが、手根管症候群という病名ではフィリピンで既にこの症状があったかどうかも問題になり、また仕事との因果関係の立証も微妙な状況と言えます。労災認定の問題で労働基準監督署と争っても長期化するばかりで、本人の帰国願望が叶えられないことになります。結果的に解雇となったので失業保険の受給につなげ、労働審判で決着をつけました。
 この条文(業務上の傷病中の解雇)で注意しなければいけない問題が2点あります。一つは、通勤災害のことがあります。労災保険法は労働災害と通勤災害を対象にして給付を行っていますが、労働基準法は通勤災害を対象にしていないため、この条文は、通勤災害には適用されないことです。要するに、通勤災害で治療中であっても30日前に解雇予告をすれば解雇可能となります。次に、労災事故で治療中に雇用期間が満了したり、定年に達した場合にはこの条文は全く適用されることがないことです。自動的に雇用契約が終了してしまうため解雇ではないことによります。しかし労災給付が停止されるわけではありません。技能実習生は1年契約で働いていることから治療中であれば次の契約はありえないと言えます。雇用契約が結ばれなければ技能実習生の在留資格の更新はありえませんので、入院中であっても帰国せざるを得ないのが現実です。3年間の研修が条件で来日しながら、雇用契約は3年を義務付けず、1年更新としているのはこうした事態が発生したとき厄介払いをするための逃げ道としか考えられません。会社が倒産した場合も同様で、研修職種の変更は認められないため、同じ職種の会社が見つからねば帰国せざるを得なくなります。受入機関の多くが零細企業であるため、こうした事態はよく発生していますし、認められた研修職種以外の職種で研修するのが当たり前かと思うぐらいこの不正があります。この不正が発覚した場合も同様です。来日早々こうした事態に直面し、帰国させられれば再度この制度では来日できないため彼らにとっては大きな問題となります。労働基準法第14条で契約期間は3年まで可能とされているのですから、例外なく3年契約とすれば途中解雇であっても3年の研修期間の残りの期間全てに対しての損害賠償請求が可能となるはずなのです。ただ裁判に持ち込まなければどうしようもありませんが・・・。

 雇用期間途中で1年を残して解雇された例もありました。技能実習生ではなく技術者の資格のフィリピン人で、日本の財閥系の子会社と契約し、海外で仕事をしていましたが、そこでの仕事がなくなったことを理由に日本に呼び戻されて解雇されたものでした。この例の場合、弁護士さんに内容証明郵便で残りの期間の賃金支払を請求してもらいました。さすが財閥系の会社ですぐに支払う旨の回答がありました。弁護士さんを窓口としても先のゴルフ場の例のように、団体交渉から、弁護士さんの内容証明、労働審判での和解を経なければならないものもあります。相手の会社のレベルというか質というかコンプライアンスの自覚があるか否かの違いでしょうが、技能実習生を使用している中小零細企業ではこうした自覚は期待できそうもありませんので、第三者的な指導機関を設けて厳格に取り締まってもらいたいものです。

 第20条の解雇予告手当の例外が第21条に定められています。

第21条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第1号に該当する者が1箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第2号若しくは第3号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第4号に該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
1.日日雇い入れられる者
2.2箇月以内の期間を定めて使用される者
3.季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者
4.試の使用期間中の者


 この第4号の「試の使用期間中の者」とは、雇用契約をするとき、最初の1ヶ月ないし、長いものでは6ヶ月間を試用期間とされている例があります。こうした会社が決めた試用期間中であっても自由に解雇はできず、30日前に解雇予告する必要がありますが、この条文によって、採用日から14日以内であれば即日解雇も可能ということになります。