労働基準法−4 (第9条・第10条)
外国人技能実習生を中心として

労働者と使用者の定義



(定義)
第9条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。


 私たちの社会は全ての人が労働しなければ生計が立てられないのですべての人が労働者であるといえます。ここで取り立てて「労働者とは」と定義づけているのはあくまでも労働基準法の適用が受けられる人は「どのような労働者であるか」を定めているにすぎません。労働組合法にも同じような定義が置かれています。それは次のように定義されています。

 「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。」(労働組合法第3条)


 同じような条文ですが、労働基準法には「事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者」というも文言があります。労働基準法は現に事業所に勤めて働いている人のみを対象としているのに対して労働組合法は失業者も労働者としての権利を有しているという立場をとっています。また、労働基準法では非現業の公務員や船員また家事使用人要するに昔の言い方で女中さんはこの法律を適用しないとしています。公務員や船員はそれぞれの法律で守られていますが、家事使用人は労働の実態が労働基準法になじまないということで労働基準法さえも守ってくれない立場に置かれているといえます。
 最初から適用が除外されている人たちとは別なグループがあります。請負契約で働く人たちです。形の上では個人事業主に該当するので労働者ではありませんが、実態を見ていくと労働者と何ら変わりがない人たちがたくさんいます。その人たちはどうなのかと考えてしまいます。またテレビの画面に出てくる人たちは全て労働者とみなせるのか。こうした人たちが労働者に該当するか否か判断する手がかりとして労働者性(注1)という概念を用いて労働者に該当するか否か判断することになります。

 では今私たちが検討対象としている技能実習生はどうでしょうか。彼らはあくまでも日本の進んだ技術を学ぶために来日した研修生でありながら研修生=学生としての扱いはされず会社と労働契約を結ぶことから労働者として扱われています。本来は、大手企業の現地法人に技術移転するための制度であったものが、安価な労働力を得る目的に転用されたことから木に竹を接いだような状況が発生しているとしか言いようがありません。一昨年までは最初の1年間は研修生として研修手当を支給されて勉強し、2年目から労働者として残業もできる扱いとされていました。この時代の研修生に残業は認められていなかったことから残業代が支払われなかったり、時給300円とか500円の残業代しか支払われず、また労働者でないため労災保険の適用も受けらませんでした。こうした問題が頻発するため最初から労働者とすれば問題が解決すると考えたのか入管法が改正され平成24年7月から最初から労働者扱いされることになりました。労働基準法のこの条文から考えれば労働契約を交わしているため労働者であることになんら問題はありません。しかし制度の趣旨を考えればどうでしょうか。労働者として扱うこと自体に矛盾があると言わざるを得ないのではないでしょうか。単純労働者の受け入れが禁止されている現状から日本の経済を成り立たせるため、また零細企業を維持していくために安価な労働力を外国から導入せざるを得ない状況から関係者すべてが本音と建て前を使い分けていることに何ら問題を感じないまま一昨年最初から労働者とされてしまったのが現状です。こうした扱いについてやむを得ない措置と私自身考えていますが、やはり研修生であることは大前提であり、法律の適用に例外規定を設ければ簡単な話ではないかと考えています。次のような取り扱いはどうでしょうか。
 (1) 身分は在留資格通り労働者ではなく技能実習生として扱う。
 (2) 研修条件=労働条件は一般労働者に準じて扱う。
    (雇用契約は締結せず3間は日本での研修を保障する。)
 (3) 研修手当は最低賃金を上回る額を(日本にいる間?)月額手当として支給する。
 (4) 残業した場合は研修手当を賃金とみなして計算し、第2研修手当として支給する。
 (5) 家賃、水道光熱費は原則会社負担とするが、負担させる場合、半額以上会社が負担し残りを研修生の人数で除した額を負担させる。
 (6) 労災保険・雇用保険の対象とする。
 (7) 年金は国民年金とし学生免除の適用を受ける。
 (8) 健康保険・国民健康保険の対象とする。
 (9) 協同組合に技能実習生保険への3年間加入を義務付ける。

 これまで遭遇した問題を避けるためにはこうした措置がなされていればとの思いを強く持っています。賃金でなく研修手当とするのは所得税の問題もありますが、それ以上に前年の所得に応じて支払う住民税の問題があります。雇用保険も本来は必要ないでしょうが、解雇・強制帰国となり保護した場合の生活費確保の問題があります。ただ「解雇していない。協同組合が勝手に帰国させた。」など詭弁を弄された時にはどうしようもないので、「研修手当は日本にいる間は支払う義務がある。」とする方が良いかもしれません。
 この条文は技能実習生は労働者なのか、それとも労働者に該当しない技能実習中の研修生なのか、改めて考えさせられる条文です。

  (注1) 労働者性は次の二つの点で判断されることになります。
  @使用従属関係のもと、指揮監督を受けての労働であるかどうか。
  A労働の対価としての賃金の支払いがあるかどうか。
 従って、「一定の就業関係が法律上雇用か請負かは、実体を観察して判断する。当事者の付した契約名にこだわらぬ。」(浦和地54.8.20)とされており、「「従業員たる工場長が取締役に就任した場合、従業員たる地位と取締役の地位は並存する。」(名古屋地55.10.8)とされています。
 また、タレントについては次の通達があります。
「いわゆる芸能タレントの労働者性については、次のいずれにも該当する場合には、本条の労働者ではない。@当人の提供する歌唱、演技等が基本的に他人によって代替できず、芸術性、人気等当人の個性が重要な要素となっていること、A当人に対する報酬は、稼働時間に応じて定められるものではないこと。Bリハ−サル、出演時間等スケジュ−ルの関係から時間が制約されることはあっても、プロダクション等との関係では時間的に拘束されることがないこと。C契約形態が雇用契約ではないこと。」(63.7.30基収355)