はじめに

 フィリピン人労働者の問題に関わりだして労働問題に関わらず様々な問題が寄せられてきますし、日常的に接している中で国民性の違い等いろいろ気づかせられることが常にあります。ただどのような問題であれ、法律的には特別日本人との違いはないとしても外国人であるため在留資格の問題が常に付きまとってきます。この辺りのことは門外漢であり、その都度、勉強させられています。特に、技能実習生問題については。これまでは本の中での問題であったのが自分がその中に巻き込まれてしまうと、どのような問題があるのか野次馬根性丸出しで「人の不幸を楽しんでいる」といった面が無きにしも非ずというのが偽らざる気持ちといえます。

 そうした中で、残業代未払、労災、解雇や強制帰国などの問題の陰に隠れて、あまり関心を持たれていない所に大きな問題があることに気づきました。同時にこれまでの会社サイドに立った見方から反対サイドに立つことによって見えていなかったもの、注意していなかったものが見えてきました。社会保険労務士という実務家としての立場からみるとこれまで公刊されている書籍を見ると実務家としての関心のあり方と違う視点から記載されており隔靴掻痒の感がありました。そうした事項についてこれまで関係したフィリピン人技能実習生の問題を中心にして外国人労働者を巡る問題についてまとめてみました。

 フィリピン人労働者の問題を考えるとき、次の三つのグループに分けて考えると問題を把握しやすいと感じています。

 当然第一グループは技能実習生です。これまでも外国から現代の奴隷制と非難されている制度に基づいて来日している人たちです。確かに制度の面からまた労働の現場での問題からそうした面があるのも事実です。しかし日常的に残業代未払や解雇等の大きな不利益を蒙っている人達が全技能実習生に対してどの程度の割合を占めるのか統計データも無く不明ですが、大半の人たちは日本人と同程度の扱いを受けているのではないかと思います。ただ一部の会社や協同組合に問題が集中しているような感じも持っています。相談が少ないからといって問題がないわけではなく、支援団体の存在を知らないことまた恐怖感から問題提起できない現実もあります。一番の問題は、すべての技能実習生が制度上の問題から強制帰国等の不利益を蒙る可能性があることであり、また労働者として扱われることからくる不利益であると考えることもできます。

 第二グループが一部の日系人グループです。当然、日系人というグループで括るとそれなりに安定した生活を送っていると反論されると思います。確かに第三グループに属する人たちが大半を占めてはいても大きな問題を抱えているグループとして一部の日系人を一つのグループとして括らざるを得ない現実があります。実態から見ると、それなりに高所得を得ている人たちもいますが、所得云々以前に技能実習生達以上に奴隷的状況に置かれていると言わざるをえないグループです。形としてはフィリピンに送出し機関があり、日本には受入機関としての派遣会社があります。この派遣会社からいろいろな会社に派遣されています。来日前にもらった労働契約書の内容と日本に来てもらった労働契約書の内容が違っているということもありますし、来日費用を借金して来ていることから日系人でありながら転職もできず職場に縛り付けられている現実があります。「1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金」と労働基準法上最も重い罰則規定を定める第5条の強制労働の禁止に該当する状況に置かれています。技能実習生は制度に守られて社会保険や労働保険の対象となっていますが、彼らはこの埒外に置かれており、こちらの方こそ奴隷状態の度合いはひどいと考えています。

 この二つ以外の人たちが第三グループとなります。当然前記の状況と関係ない日系人を含んでいます。その他日本人と結婚・離婚した人たちや労働できる在留資格を持っている人達です。日本人と同じに考えていいグループになります。このグループは労働問題以外のDV、離婚また在留資格等の悩みを抱えている人たちが多いグループといえます。

 ここでは技能実習生を中心にしてこうしたグループの中に見られる問題を見ていきます。