江田島市技能実習生殺傷事件から1年


 江田島市で技能実習生殺傷事件(2名殺人7名傷害)からこの3月14日で1年が経過しました。この間、新聞で報道されたものそうでないものを含めさまざまな取り組みがなされてきたと思います。広島県水産課はカキ養殖業者への調査をおこない「実習生が劣悪な環境で働いているような事実は見えない。」と結論付ました。また江田島市の各町はイベントに技能実習生を招いて交流をしたとの新聞記事もありましたし、公民館等で日本語教室を始めたとの話も聞いています。外国人技能実習生を支援する会も中国人技能実習生と餃子を造って交流する会を開催しています。フィリピン人の関係では江田島市の2か所で月1回のミサを始めました。また岡山県華僑華人総会は昨年12月に「二度と江田島事件を起こさない為に〜外国人研修・技能実習生の実態について」という講演会を開催しています。
 この一周年に当たる3月14日の中国新聞に「実習生との共生を探る」との記事が掲載され、技能実習生がいなければ地域経済が成り立たないことまた技能実習生を孤立させないための交流会開催などが報告されています。また「外国人向けサロンや相談窓口の設置も考えたが、運営費や相談に応じることができる人材をどう確保するかといった問題に直面している」、「実習生のニーズがどこにあるのか把握、できることから取り組む。」との江田島市のコメントもありました。こうした取り組みは国際交流・外国人との共生といった面からは良いことには違いありません。しかし技能実習生については疑問符をつけて考えたくなってしまいます。都市部と違い地域の産業と生活環境が混然一体化している地域社会において技能実習生問題に取り組むとき次の二つの面からの取組が必要と考えます。一つは国際交流・共生といった面、あと一つは使用者と労働者といった側面です。技能実習生問題の交渉の中でよく聞く言葉に「食事に連れて行ってやった」、「ものをいろいろ与えた」のに「何故残業代のことを言うのか」との言葉があります。外国人に対して良くすることは国際交流や共生といった面からは当たり前のことではないでしょうか。しかし残業代や労働条件等の問題は全く次元が異なる労働契約の問題です。この辺りのことを踏まえたうえで取り組む必要があります。事件を防止する目的であれば労働契約を雇用主にしっかり守らせることが先ではないでしょうか。技能実習生達は技術を習得する目的で江田島市に来ている訳ではありません。留学生の様に勉強に来ているのでもなければ日本での生活を楽しむことなど考えて来ているのではありません。可能であれば「残業は毎日したい」、「日曜日も仕事をしたい」というのが本音ではないでしょうか。技能実習生達は母国に残した家族の生活を支えるための出稼ぎ労働者です。中には母国で事業を起こすための資金稼ぎという人もいます。そうした技能実習生問題を理解するキーワードは次の三つです。

  @建前と本音の世界であることを全関係者が認めていること
  A受入機関のコンプライアンスが欠如していることで問題が発生していること
  B技能実習生は恐怖感の塊であること

 恐怖感の塊とは母国は日本の様に安全な国ではないことと、一部の国では保証金を預けてきており、問題を起こせば保証金が没収されること、また協同組合から携帯の所持禁止や教会に行ってはいけない等の脅しを受けています。この恐怖感を取り去ることが出来なければ彼らが抱えている問題を日本人に対して口にすることは絶対に無いといえます。
 最後にこの記事は、江田島市にいる外国人の人数は580人でほぼ半数が技能実習(ほとんどが中国人です)とのことです。では残りの290人の外国人については問題が無いので取り組む必要が無いのでしょうか。これらの人は定住する人たちが中心です。日本人と結婚したフィリピン人も少なくはありませんが大半は出稼ぎの日系フィリピン人です。しかも技能実習生同様カキ養殖業で働いています。技能実習生は奴隷制度と言われながらも制度に守られていますが、それ以外の外国人は守ってくれるものが無いという現実があります。今後カキ養殖業が生き残る道は日系フィリピン人を中核とした組織づくりではないかと考えています。外国人労働者を一過性の労働力と見るのではなく、地域の構成員として外国人相互間で交流できる組織づくりと今取り組んでいる国際交流・共生への取組、その前提として労働環境の整備をしていただきたいものです。