江田島技能実習生による殺傷事件裁判を傍聴して―3


 この記事は、2月23日の裁判閉廷後、中国から来られた陳被告のお母さんとお姉さんと話された岡山県華僑華人総会の劉会長さんや働く者の相談室呉の由木さんを始めとした方々の書かれたものを整理したものです。

 陳さんは遼寧省阜新市(注1)の出身で家の農業を手伝っており、一時期、北京で2カ月、内蒙古で2カ月トラックの運転手の経験があるが農業以外のことは出来ないと言った状態であった。
 大連にある送出し機関に向けて人材あっ旋をしている蘇という女性が技能実習生の募集に応じるよう声をかけてきたので、小学校も中学校も卒業していない事を伝えると、「大丈夫」との誘いにのり手続することになった。費用として、まず6000人民元を支払ったが、更に5000人民元、次に1万元の請求を受けた。この15,000人民元についてはお金が無いため蘇さんから15%/年の利率で借金することになった。しかし日中関係の緊張などもあって中止しようと思ったが、蘇さんから「お金は戻らない。貸したお金は支払ってもらう。」と言われ中止できる状態ではなかったので技能実習生として日本に行かせざるを得なかった。大連にある送出し機関の五環に行くとさらに2万人民元を要求されたため家を担保にして、姉と姉の夫を連帯保証人にとして、さらに借金を重ねることになった。
 技能実習生制度に応募するためには、中学を卒業していることと、2年間カキの仕事をしていることまた戸籍が農民ではないことが必須条件だったが、五環は、中学の卒業証明書を偽造し、戸籍を偽造し、大連の水産会社で2年働いたと言う証明書も偽造して息子を技能実習生として日本に送り出した。さらに日本に行く前の3か月間は大連で日本語学習を行っていたが成績は悪く不合格のレベルだった。全てがウソの証明で固められて日本に行くに当たり、五環から「日本に行ったら2人以上で一緒に働く。3回まで仕事を変わることができる。息子には毎月、五環の人が会いに行く。」と家族に説明がされていたが、これも全部ウソの話であった。
 こうしたウソに塗り固められた状況で技能実習生として日本に行き、どのような精神的な葛藤があったのかは分からないが、技能実習生期間満了までのあと2カ月を待つことができず悲惨な事件を起こすことになった。
 この事件発生後、五環の社長らしき人からお母さんに「マスコミの取材は断るように。出身が農民であることをいわないように、言うと罪が重くなる。」との電話があったとのことです。
 こうしたウソの証明書の工作が出来るのは誰だろうか? その権力者と通じる輩であり、知能の低い人でも誰でもウソの書類が用意できる可能性のある立場の人である。技能実習生がこれまで殺人事件や逃走また様々な犯罪や問題を惹き起してきているが、これは問題を起こした技能実習生一人一人の問題ではなく、陳さんのお母さんが話してくれた多額の借金の問題や送出し機関の様々な虚言によって技能実習生を圧し潰している中国の送出しにかかわる人たちの問題としてとらえなければならない。中国側の責任は重大である。

(注1)内蒙古自治区に接する内陸に在り、元は牧地だったが、炭田が開発される。「煤海」と称される大型露天掘り鉱山。郊外に、金・元代の古城遺跡や清代創建のラマ教寺院の瑞応寺がある