H帰国時の問題


 各項目で触れてきているためここでは帰国時に問題として考えなければならない事項を再度触れておきます。

【脱退一時金】
 日本に滞在している外国人も日本人と同様に健康保険と年金に加入する義務があります。当然留学生についても例外ではありません。ただ国民健康保険への加入については学校から指導があり加入していますが、これまで知り合いとなった留学生に聞いてみると国民年金に加入するようにとの指導がなされていないようです。学生であれば加入しても保険料の支払免除の手続きをしておけば保険料の支払い自体必要なく、万一重大な障害を負った場合にはその恩恵を受けることが出来るため加入し、免除申請をしておく必要があるといえます。
 技能実習生の場合には最初の1〜2か月の座学の期間は、労働者でないため同様の措置を取り、労働契約を結んだ後は会社が厚生年金に加入させることになります。帰国してから、脱退一時金がもらえることは全員が知っており、自分で手続を行いますが、中には、送出機関が手続を代行し、高額な手数料を徴収している例もあるようです。ただ手続き自体は簡単なものです。
 @ 申請書に氏名、住所や基礎年金番号を記載する。
 A 申請書に母国で受け取る際の銀行口座を記載して銀行が確認した印を押してもらう。
 B 申請書に年金手帳とパスポートの本人確認ができるページと出国時に入局国管理局が出国の印を押したページのコピーを添付する。
 C 日本年金機構の事務センターに送る。

 以上のようなものですが、書類の不備等で問い合わせが送られている例が少なくないようなので、送付した書類一式のコピーを取らせておく必要があります。市役所で損沿いが確認されないということもありましたので、在留カードのコピー(表と裏)もとっておいた方がいいといえます。
 技能実習生以外の外国人は手取収入への関心が強く、そこに付け込んだ一部の会社では社会保険に加入すれば時間単価を下げると説明しています。併せて国民健康保険への加入を指導していればいいのですが、そういうことは一切していないため、単身者や大人だけの世帯では未加入が目立ちます。こうした人たちの問題として、怪我や大きな病気をした場合に初めて国民健康保険に加入すると過去2年に遡って保険料の請求がなされます。住民税も未払となっているのが普通なので併せて支払督促されるととても支払える額ではありません。差し押さえ通知書が送付されてきている例もありましたが、母国語での説明書が添付されいないため内容も分からず放置されていました。いずれは、こうした滞納が在留資格の更新に悪影響を及ぼすことが考えられます。こうした例は、母国と日本の派遣会社が連携を取って送り込まれてくる日系人に多くみられます。
 また長期間滞在して、生活基盤が出来ている人たちであってもいずれは母国に帰るのが前提となっているため脱退一時金のことも含めて社会保険や税金についての啓発が必要といえます。

【脱退一時金に対する源泉所得税の還付】
 脱退一時金が支給される際には非居住者として一律20%の税金が控除されますが、日本の国内に納税管理人をたててその人に確定申告してもらうと全額還付されることになります。納税管理人には誰でもなることが出来ますが、手数料がとって行うことは税理士に限定されています。日本国内で受け取り、送金する必要があるため、信用のおける人また税理士に委託しなければトラブルが発生しかねないといえます。協同組合によっては30%の手数料で行ってくれる人を紹介しているようですが、正規な金融機関から送金されれば問題はないかもしれませんが、そうでなければ確実に手元に届く補償は無いといえます。
 ただ、この脱退一時金の所得税の還付については知らない技能実習生が大半と考えられるため、支援団体等が納税管理人になって手続をすることで技能実習生との関係づくりに大いに役立つと考えられます。
 手続としては次の様に行います。
  @「所得税・消費税の納税管理人の届出書」(税務署所定用紙)
  A「国民年金・厚生年金保険 脱退一時金支給決定通知書」(日本年金機構から送付)
  B平成  年分の所得税の 申告書B(税務署所定用紙)

 @とAを本人から送らせる必要があります。脱退一時金が支払われる時期は請求して3〜4か月後となるため、@については帰国時に本人が記載する事項に記載させて持って帰らせ、Aが送付されてきた時点で両者を送付してもらいます。併せて送金先の口座の連絡が必要になります。

【年末調整】
 通常12月の賃金で年末調整がされるのは日本人と同じですが、1年の途中で帰国することになるため年末調整がされていないのが普通ではないでしょうか。所得税の計算に当たっては、非居住者となる場合には最後の給料で年末調整をすると定められています。本人たちのことを考えれば会社に年末調整をしてもらうのがいいのですが、してもらえなければ源泉徴収票の交付を受けて納税管理人に手続を依頼する以外方法が無いといえます。

【年次有給休暇の行使】
 年次有給休暇を全く行使していなければ帰国時に23日の年次有給休暇があります。仕事をしていれば使用することも難しいためかなりな日数が残っているのが普通といえます。労働者に与えられた当然の権利とはいえ会社にとってはあまり与えたくない権利であるため、行使させない例が多々見られます。全て行使するか、余った年次有給休暇については買い上げてもらうかするのが一番いいといえます。

【住民税】
 住民税は前年度の所得に対して、6月から翌年の5月の間に毎月支払うことになります。帰国時には、当然のこと未払額があるため、会社は残高の徴収を行ってきます。6月帰国する人はまるまる1年分の住民税の支払を求められるため最後の賃金は手元に残らないのが現実ではないでしょうか。こうしたことから市役所に交渉に行った技能実習生が市役所の職員から「支払う必要はない。」と言われたと聞いたことがあります。また別な市役所では、「絶対に支払ってもらわなければならない。」と言われています。どちらが正解か分かりませんが、住民税の支払いについては次のように定められています。
  @ 退職日が6月から12月の間の場合には、一括徴収の申し出が無ければ、普通徴収(個人払)とする。
  A 上記以外の場合には、原則一括徴収であるが、最後の給与で未徴収額を控除できない場合は普通徴収(個人払)とする。

【帰国時に清算されるお金】
 最後の賃金や住民税またそれ以外の会社が預ったお金等の清算は飛行場で行うという話を聞きます。飛行場で、精算額に問題があっても従わざるを得ないのが現実です。
 また、お金の清算の話ではありませんが、強制帰国させられかけた技能実習生の問題で協同組合と交渉の結果、解決し、当然帰国の航空運賃は協同組合で負担するという話となりましたが、飛行場で、送出し機関の通訳から航空運賃を支払うように請求されたと電話がかかってきたことがありました。
 技能実習生の問題は出国まで気が抜けないのかもしれません。清算すべきものは事前に清算させておく必要があります。