G住環境と家賃


 外国人技能実習生の住環境に関する問題は労働法の問題というよりは、人権問題としてとらえなければいけない問題といえます。アメリカから技能実習生制度は奴隷制度であると非難を受けていますが、住環境に関しても同様な大きな問題が潜んでします。例えば、@住環境そのものが古く劣悪であること、A狭いスペースに大人数が住まわせられていること、B家賃が高額であることなどが挙げられます。
 労働基準法には第10章で寄宿舎について定めています。この寄宿舎に該当する施設は、常態として相当の労働者が共同生活をしており事業経営の必要性から設けられているものとされています。独身寮や建設現場で共同生活をしているところなどはこれに該当しますが、技能実習生の場合これに該当する例は少ないと考えられます。本人たちがアパートを借りることはできないため協同組合が借り上げたり、会社が借り上げたアパートに入居しているのが普通となります。当然、これらに居住するとなれば、居住スペースや家賃をどう決めるかが問題となります。こうしたことに対して、JITCOはガイドライン、労務管理ハンドブックなどで一定の基準を示しています。
 「外国人技能実習制度における講習手当、賃金及び監理費等に関するガイドライン2010年5月改定版」(P3)で次のように定めています。

C 宿舎費については、次の点に留意すること。
 宿舎費の額は、近隣の同等程度のアパート等の相場を超えてはならないこと。
 宿舎費の額、内訳及び計算方法について技能実習生本人に十分説明し理解を得ること。
 一戸の住宅を複数の技能実習生に貸与している場合の一人当たりの宿舎費の額は、所定の賃貸料を人数で除した額を超えてはならないこと。


 また、「外国人技能実習生労務管理ハンドブック 2013年3月版」(P120)では、

 一人当たりの床面積等について、2.5uは労基法上の最低基準であり、厚生労働省労働基準局の「望ましい建設業附属寄宿舎に関するガイドライン」では、1室2人以下、1人当たり床面積4.8u以上(3畳)となっており、JITCO も6畳に2人程度を指導してきている。


 こうしたガイドラインがあるにも関わらず、古いアパートであったり、一部屋に大人数が詰め込まれていたり、また賃金を家賃で回収しているのではないかと言いたいような状況が一部にみられます。宋かと思うと社長夫婦の両親の居住用として建てた新築の住宅に住んでいた技能実習生がいたりと様々です。
 問題のあった例をいくつか挙げてみます。

(1)造船所勤務の例
 この例は、残業代の計算が正確か、先輩たちが帰国時に住民税を10万円取られた、また脱退一時金の手続きを送出し機関がして、多額な手数料取っている、また住んでいるアパートが今にも壊れそうなほど古いなどの相談をしてきました。こちらはアドバイスをするだけで、自分たちで行動し、住民税については市役所まで押しかけましたが、「帰国時には一括支払わなければいけない。」との市役所の態度は変わらなかったそうですが、これについては、会社に電話して、帰国後本人たちが支払う普通徴収の手続きで異動届を出させることになりました。アパートについては、帰国も近いことからそのままでしたが、一部屋4人が住んで、一か月一人2.5万円の水道光熱費を含んだ家賃を徴集されていました。

(2)ゴルフ場の例
 近くのコンビニまで歩いたら4時間近くかかるという山奥のゴルフ場の中にある宿舎で暮らしていました。ゴルフ場の本館から離れた所にある建設現場用の古い仮設建物が宿舎としてあてがわれていましたが、人が住むようなところではなく、風呂屋シャワーもなく、トイレも使用に耐えず、本館まで行っていたそうです。しかも宿舎はイノシシ除けの高圧電流の流れた柵の外にあり、イノシシ、クマやマムシの心配もしなければならないところでした。突発的な事態が発生したらすぐに対応してもらうこともできません。人が住む街中に宿舎は置かれなければならないと思いますが、人権無視も甚だしいと言わざるを得ません。

(3)敷金5000円を毎月徴収していた例
 この事例は、一部屋に5名が住まわせられていた例で、建物は古く、お風呂の床が抜けて怪我をした技能実習生も出たり、温水が出るのはお風呂だけ、また冷暖房設備はないといった状態におかれ、1人9,600円で、5人合わせると48,000となり、実際の家賃がいくらか分かりませんが、所在地と程度からすれば多少割高かと考えられます。この例で問題であったのは家賃に併せて敷金として毎月一人5,000円徴収されていました。この当時は研修生期間が1年間あったため、2年分として5,000円×5人×24か月=600,000円の敷金となります。これについて会社は、以前、部屋を手荒く使用した技能実習生がおり、帰国時の補修費に30万円かかったため、その引き当てとして徴収しており、補修人の差額が生じれば返金すると言っていました。何らかの理由で破損させた場合の補修費はやむを得ないとしても普通に使用した場合であっても補修費名目で多額の支払いがあったとして清算される心配もあります。それ以前の問題として、こうした控除自体、労働基準法第18条で禁止されている強制貯金の形を変えたものといえなくもありません。

(4)退去時の清掃費
 これはレオパレスに入居していた技能実習生からの相談でした。会社が合併したことで勤務場所が変り、転居も必要となり、アパートを退去するとき清掃料として数万円の請求を協同組合から受けているというものでした。会社の都合で転居せざるを得なくなった場合には当然会社なり、協同組合が負担すべきだと思います。レオパレスの場合、建物の程度もよく、家具等が備え付けられており便利かもしれませんが、退去時の清掃料の問題を考えれば普通のアパート等低廉な費用で済む物件を選んでもらいたいものです。
 住居を巡っては先に挙げた敷金として毎月5,000円徴収している場合や家賃の実費を大きく超える額を徴集している場合などを除いてなかなか対応しがたい問題といえます。技能実習生達が自分で住む場所を探すわけにもいかないため、受入機関が自分のこととして低廉かつそこそこの程度の住まいを用意してもらいたいものです。