B解雇・強制帰国


 解雇という問題には、普通、労働者側に原因のある懲戒解雇と会社側の経営上の問題に基づく整理解雇等の二つに大きく分けることが出来ます。いずれの場合も一方的に会社が解雇を決定するため、労働者を保護する趣旨で労働基準法第20条は少なくとも30日前に解雇予告をするか、30日分の平均賃金を支払う必要がある、と定めて一定の歯止めをかけています。日本人であればまだそれてもいいのかもしれませんが、技能実習生にとってはどのような理由であろうと解雇と帰国はワンセットとして考えざるを得ない面があります。それは、技能実習生には研修する職種が決まっており、どのような理由であろうとその職種以外の職種での研修が認められていないためです。解雇され、同じ職種で受け入れてくれる会社がなければ帰国せざるを得なくなります、技能実習生の解雇の場合、時間的余裕もなく、数日中に帰国させらるという例が少なくなく、当然、解雇予告手当など支払われることもありません。こうした状況が、技能実習生達の大きな精神的圧迫要因としてあり、仕事上で怪我をした場合であっても隠してしまうこともよくみられる現象ですし、会社に問題があっても提起できないという状況を生じさせているといえます。 技能実習生は3年間の研修を条件として来日していますので、技能実習生側に問題のない場合には3年が満了するまでの賃金に対する損害賠償も当然可能ではないかと思いますが、問題として労働契約期間は1年更新が一般的であるためそれを超えて損害賠償請求が可能なのかといった問題があります。しかし最近、ユニオンが入国管理局に技能実習生の書類一式の開示請求をして手に入れていますし、以前入管に在留資格更新をした時の資料の開示請求をした外国人もいます。技能実習生達に聞くと来日前に3年契約の契約書にサインをしているといっていますのでこうした資料が入手できれば、来日時に入国管理局に提出した労働契約書の期間が分かり、それが3年間の労働契約は間であれば3年に達するまでの損害賠償請求も可能となるのではないでしょうか。ただそれ以前に技能実習制度は1年経過した時点での技能資格検定に合格することを条件にあと2年の研修を受けるという制度となっていますので3年間研修保証期間付の制度によって来日しているといえます。

【仕事中脊椎を負傷した事例】
 この事例はまだ研修生期間が1年あった時の研修生中の業務上の負傷でした。18時30分ごろ重量物を扱う仕事から背部痛め、病院に担ぎ込まれたが、レントゲンを撮っても特段異常はなかったが、痛みは治まらず、帰国させられるひとを恐れて軽易な仕事への転換も申し入れることが出来ず仕事を継続しており、6か月経過後、痛みがひどくなり病院でレントゲンを撮ると以上が見つかり、仕事も休むようにと指示され田とのことでした。こうした状況から「仕事もできないので帰国することも考えている。」相談したら、1週間後に帰国させると通告されたとのことでした。交渉に入ったのはこの通告のあった翌日でしたが、話し合いも拒否される状況の中、電話した翌日には、明日帰国させるので福岡空港まで行くようにとの指示があったとのことでした。福岡までは自分一人で行くので、広島駅で合流して保護することになりました。問題点としては、@業務上痛めた傷病の問題、A研修生時代の残業代の未払、B研修職種は溶接であったが、金属のプレス作業をやらされていたことでした。この例では解決後の後日譚がありました。それは帰国旅費は協同組合負担としたにもかかわらず、飛行場で搭乗手続担当の中国人通訳から飛行機代を請求されたと電話がかかってきました。協同組合に電話すると、「協同組合がチケットを購入した時には負担するということで、今回は送出し機関の通訳が購入しているので負担できない。」との回答でした。飛行場にいる通訳に電話して、「チケット代はこちらで支払うので、本人からとらないことと振込先を連絡するように」と告げました。飛行機が出た後、「こちらの連絡が不十分でした。チケット代はこちらで支払います。」と電話がかかってきました。よく聞く話に、最後の給料やこれまでの残業代は飛行場で支払うと言われながらも、いろいろなものが引かれて手取りが無くなってしまうとの話をよく聞いていたことと併せて考えると飛行場で泣いている技能実習生も少なくなすのかもしれません。

【会社が強制帰国させようとした例】
 技能実習生の受け入れ方法には海外にある関連会社から技能実習生を受け入れる企業単独型と協同組合等が受け入れて傘下の組合員である会社での研修を管理する団体管理型の二つがあります。後者の例が大半を占めており、何らかの問題があって帰国させる場合には、当然帰国させるかどうか判断する主体は管理団体である協同組合となります。会社は解雇するだけで後は管理組合の責任において移籍させるなり、帰国させるなり生殺与奪の権は協同組合にあります。
 ここに挙げた例は、会社が協同組合を無視して、技能実習生を解雇して、帰国させようとしたもので非常に珍しい例といえます。この例も、研修職種とは全く関係のない職種で働かされていおり、冬場の3か月間はゴルフ場が休業状態となることから冬場の3カ月を休日とした1年単位の変形労働時間制を採用して残業代を支払っていませんでした。ことの発端は、3名技能実習生を受入、1名は半年ほどで作業中に足を痛めて帰国し、あと1名は作業で手を負傷し、休業せざるを得なくなったため、残業代と傷病手当金の請求をしたことから解雇されました。労働審判に進み、残業代の支払いで和解が成立したことから、残りの1名も冬場の休業で広島に帰ると残業代の問題を持ち出してくると警戒して、山奥のゴルフ場から直接帰国させようと解雇を迫ったものでした。労働審判に進む前の段階で、協同組合と連絡を絶っており、管理組合は管理を放棄していたとの情況があったためといえます。解雇・帰国にむけていろいろ説得している様子を録音データで聞くと、自己都合で辞めるのなら解雇予告手当野3カ月分が支払われ、会社が解雇すればこれが支払われないのが日本の法律だと説明しています。この事件が発生する1年ほど前から二人は相談に来ており、常時連絡を取り合い、タイムカードも毎月送ってもらっていたため、保護して、地位保全の裁判そして残業代の裁判とスムーズに進みました。
 会社と協同組合が仲たがいした原因は、会社側の陳述書によると、協同組合が、安い賃金で雇用できるし研修職種と違った業務でも問題ない指導したためと一方的に協同組合を悪者にしていました、

【認定外職種が発覚したための帰国】
 この件は、仕事中に日本人の同僚から暴行を受けて鎖骨骨折をして裁判中の技能実習生がつれてきたもので、認定外の職種で研修しているのが発覚して帰国させられる例としては今までこれ1件しか経験がありません。認定外の研修中の技能実習生はたくさん知っており、お弁当屋さんで研修中の女性たちは、JITCOの調査があれば、「イカの塩辛を造っていると答えるように指示されていた。」と笑って話していました。調査が実際に会ったのかどうか分かりませんが3年間無事に過ごして帰国したので、こんな話でごまかされる様な調査しかしないのかと思ってしまいますが、3名の技能実習生は認定外職種での活動として帰国させられてしまいました。
 水道の配管工が本来の職種でしたが、実際は、工場の清掃と製品を運搬するフォークリフトの運転に従事していたところJITCOの調査で判明して帰国となりました。ゴルフ場もイカの塩辛もこの例も同じ協同組合が第一次受入機関となっていました。

【寮の規則違反による帰国】
 夜の8時ごろ知り合いの技能実習生の女性が涙声で電話をしてきて、自分とあと一名の技能実習生の女性と男性の技能実習生の寮に遊びに行ったことが原因で男性2名が帰国させられることになったとの内容で、詳しいことがよく分からず通訳してくれているフィリピン人に連絡して状況を確認してもらうと、誕生日のお祝いで、びっくりさせるため連絡もせずに遊びに行ったら、寮に女性を許可なく入れることが禁止されていると言われて、一旦は帰ったが、JRの最終便が出ており、再度寮に行き、入れてもらい、始発が動くまで、7名で誕生パーティーをしたとのことでした。土曜日で、他の人たちも起きており、迷惑がかかる状況ではなかったとのことですが、誰かが会社に報告したため、2日後に帰国との命令が出たようでした。しかし男性5名の内2名だけが帰国となったのかよく分かりません。電話を受けた時点で、既に他の場所に移動させられていましたが、寮では協同組合の担当者が全員を集めてミィーティングの最中とのことでその係員に電話をすると「女性をアパートに許可無く入れることは禁止されており、就業規則にも違反し解雇となった。組合としては会社に解雇しないようお願いしたが認められず、帰国させることになった。本人達も了解し、書類にサインもしており、入管の許可も得ているし、彼らは栄和電気で働くことを条件で来日しており、解雇されれば転籍もできないので帰国させる。」との説明があり、集まっている技能実習生達に誰が電話番号を教えたかと尋ねている声も聞こえ、一方的に切られてしまいました。本人たちは、パスポートや携帯を没収され、髪の毛を切られる罰を受けているとのこと。連絡はフェイブックで行っており、本人たちは保護してもらいたいとの希望があり、自ら宿舎を抜け出してきたのでそのまま保護することになり、ユニオンに加入させて交渉となりました。交渉の席上、会社の言い分は、「解雇はした事実はなく、寮規則違反でからの退去を求めただけであり、現在欠勤している」とのことで、同席していた協同組合は「寮の退去は当然退職をと受け止めた」と話したとのことでした。そうであれば住むところが確保できれば勤務の継続が可能なはずですが、当然いろいろな理屈をつけて拒否してきました。この会社は、「外国人に浴している」と聞いていた会社ですが、些細な規則違反を盾にとって技能実習生に恐怖感を与えて押さえつける「アメとムチ」を使い分けているとしか言えません。同じ例が以前にもあったとのことですがペナルティーを設けるにしても度が過ぎれば問題と言わざるを得ません。復職することはかなわず金銭解決で帰国となりました。

【インドネシア人18名の例】
 これほどひどい例は聞いたことがない程ひどいものでした。日曜の休みも与えられず、残業代も一切支払われていないというもので、たまたま御祭りの日に休みとなり、町に遊びに出て他の会社のインドネシア人技能実習生と知り合い、自分たちの状況がひどいことを知り、社長に話したら帰国させられることになり、半数が今日パスポートを市役所に返却に行き、残りは明日行くとのことから助けを求めてきたものでした。すぐに保護する段取りをとりましたが、母国の家族にこのことを話したら送出し機関から電話があり、残業代は払うとのことで、納得して帰国することに決めてしまったので何もすることはありませんでした。ざっと計算して一人70万円程度、18名で1200万円はあると考えていましたが、この額の半分も支払われるとは考えられないため、わずかな額で納得したと思われます。それでも帰国を選んだ背景にはどのような事情があったのでしょうか。この辺りのことを詳しく聞きたい思いがあります。
 この例は、本人たちは四国の今治の造船所で働いており、相談を受けたのは北九州の大学の先生で、まわりまわって私の所に連絡があったものでした。たちまちは教会で保護し、その後は、教会関係の空いた施設に移すことで段取りは付きましたが、言葉の問題またイスラム教徒であり、食事にも難しい問題がありそうでしたが、そうした問題に関わりなく、受け入れ態勢を整えていただいた教会の神父様の動きがなければ対応できなかったといえます。カトリック教会が信者であるフィリピン人技能実習生の問題に同様な配慮があればたくさんの人達が救われると思いますが、こうしたことへの関心がないのが現実です。