@労働条件通知書


 会社が労働者を雇用すると労働基準法第15条に従って労働時間や賃金等の労働条件の内容を記載した文書を労働者に交付する必要があります。これが労働条件通知書と呼ばれるものです。通常は、就業規則に従って内容となりますが、特に労使間で特別な内容を取り決めた場合には、それらが記載されることになります。技能実習生の場合も同じようなことになります。が、外国から日本に上陸して技能実習生制度に従った活動するため入国管理局から日本での活動を認める在留資格「技能実習」の許可を得る必要があります。提出する書類の中に技能実習生制度に基づいた活動を行なうための技能実習計画書と技能実習生のサインと会社の押印のある労働条件通知書の写しの添付が必要となります。労働条件通知書はJITCOの作成した母国語と日本語併記の用紙を使用することになり、当然、本紙は会社と技能実習生本人が所持することになります。労働条件通知書は、技能実習計画に基づいたものでなければ入国管理局は認めることはありません。この労働条件通知書と技能実習計画の関係については次のような話がありました。

 以前、農業で実習する技能実習生に適用除外が適用されるのかと入国管理局に質問したところ、「農業で働く技能実習生は適用除外に該当するが、入国管理局としてはこの問題は技能実習計画に基づいて判断していく」との回答がありました。労働者として労働基準法の適用を受けるため適用除外に該当するのは確かです。しかし技能実習生はあくまでも研修を目的とした実務研修として労働を行っているに過ぎず、無制限に適用除外に該当させてしまうと研修の目的を逸脱してしまう可能性もあることから、特殊な事例、かつおの一本釣りやマグロはえ縄漁等特殊な事例を除いては適用除外として認めないことを意味していると考えられます(適用除外については、「技能実習生と労働基準法第41条の「適用除外」との関係」参照)。法務省のホームページによると技能実習生の在留期間許可更新申請時の添付書類に「7 実習実施機関における労働条件を当該外国人が理解したことを証する文書/・ 労働条件通知書(申請人が理解できる言語で記載され,かつ,申請人の署名があるもの)の写し 1通」の添付が必要となっているため、この労働条件通知書に記載されている内容が技能実習生の労働条件となります。在留許可申請時にこの労働条件通知書に記載される内容が研修実施上不適切なものであれば当然認められることは無い話で、先に挙げた特殊な事例を除いて適用除外は認められていない内容となっているはずです。これまで残業代問題等のトラブルで支援してきた技能実習生の所属する会社では労働条件通知書を渡していない例が多いのが実態でした。当然労働条件通知書に記載された内容を隠すためといえます。カキ養殖場の技能実習生からの連絡で残業代未払等の問題で団体交渉に入ったユニオンから聞いた話ですでは、相手方の弁護士から「労基法上適用除外に該当し残業代は発生しない。」と言われたそうです。後日、労働条件通知書を提出させると適用除外ではなく通常の労働基準法通りの1日8時間労働、1週40時間労働また残業・休日時の割増賃金率も記載されていたとのことでした。これなど先に述べたように入国管理局が適用除外を認めていないことを意味しており、それを隠ぺいする目的で渡していなかったと考えられます。また次のように最低賃金をごまかすという例もありました。

 最低賃金は都道府県別に設定された最低賃金とそれより高く設定されている都道府県別・産業別の最低賃金とがあります。広島県の場合、最低賃金は24年10月1日から719円で、産業別最低賃金の内、自動車・同付属部品製造業は23年12月31日から784円となっています。自動車部品製造業では当然784円が適用になりますので、労働条件通知書には時間単価784円と記載されなければ入国管理局の審査をパスすることは無いはずです。まだ研修生が存在した数年前のことですが、労働条件通知書にサインさせて、本人たちには交付せず、719円の最低賃金で支払っていた会社がありました。私たちは残業代を計算する過程でこのことに気づきましたが、この計算中に、後輩たちが研修生から技能実習生に移行に当たって寮に労働条件通知書をサインするため持って帰ってきたのを見ると時間単価が自分たちより高い金額(自動車部品製造業の単価784円)が記載されているのに気づき不思議に思っていたとのことでした。残業代の問題を提起していなければ、1か月後の賃金計算では自分たちと同じ単価になっているはずなので、会社に確認しても、最低賃金の存在自体知らない技能実習生にとっては、「あれは間違っていた。だから全員同じ賃金を支払っている」とごまかされてしまうはずです。