D強制帰国(問題提起、労災事故、倒産・不況、認定職種外活動の発覚、本人の問題)


 この問題は技能実習生に問題がある場合もありますが、受入機関側に問題がある場合が圧倒的に多いといえます。先に挙げたゴルフ場の場合のように協同組合を抜きにして未払残業代を請求されないように強制帰国させるのは例外で、会社の意向を受けて協同組合が帰国させることになります。

A 自ら会社に対して問題提起した例
 自分たちの労働時間、休日や残業代について大きな問題があると会社に訴えた結果強制帰国させられることになったインドネシア人18名(今治市)の例があります。直接会って話す機会は無く、北九州の大学の先生を介してやり取りをしたものでした。彼らは1年を通じて一切休日を与えられておらず、残業代も支払われていませんでした。たまたまお祭りで休みになり外出して、他のインドネシア人の技能実習生と出合って話をしたら、自分たちの置かれている状況のひどさに気づき、残業代を請求したらすぐに強制帰国となったもので、連絡があった日に半数が外国人登録証を市役所に返しに行き、明日残りの者が返却に行くとのことでした。どのような働き方であったのかザット話を聞いた限りで一人当たり70万〜80万円程度、総額で1000万円を超える未払い残業代があると考えられましたが、母国の家族に保護してもらって残業代の支払いを請求をする等のことを話したらしく、送出し機関から保証金は全額返済することと残業代を支払うとの連絡に納得して帰国していきました。これだけの人数を、またインドネシア語の通訳の問題やイスラム教であるため食事の問題もありましたし、カトリック教会で保護することに抵抗がないのかなどいろいろ心配もしましたが、解決したことでホッとしました。しかし1000万円も超える額を会社が支払うはずもなく、わずかなお金で了解したと思います。どの程度の残業代がもらえるか理解しないまま、送出し機関や家族からの圧力やホームシックが強かったのか分かりませんが会って話が出来なかったのは残念なことでした。

B 認定職種外活動の発覚の例
 次の例は3人のフィリピン人男性の研修で認められた職種以外の仕事をしていることがJITCOの立ち入り調査で指摘され、本来の職種に移籍できなければ帰国させられると協同組合から告げられていたものでした。研修職種は水道配管工でありながら、木材を破砕・炭化した物に加工する会社でフォークリフトで運んだり清掃したりする会社で働いており、お弁当屋さんやゴルフ場と同じ協同組合で、この協同組合は研修職種は無視して低賃金労働者の受け入れということで営業していたとしか考えられません。
 ビザが切れる3か月前にこの相談に来ていましたが、遠隔地でまだ仕事をしていたためユニオンに加入して交渉に入ったのは6月上旬で帰国までの時間がない状況でした。1か月後にはビザがきれて帰国せざるを得ない情況ため、わずかな残業代の支払いが得られただけでした。本人たちに問題はなく、協同組合と会社の不法行為によって使い捨ての低賃金労働者として受け入れられ、翻弄された例といえます。またこの制度自体技能実習生は一度しか利用できないということを考えても可哀想な話です。
 こうした事例の場合には、技能実習期間があと1年残っていたため、この残りの期間の補償と協同組合を含めて慰謝料の請求を裁判に訴えるべきではないかと考えています。

C 本人たちにも責任がある例
 この例は寮の規則違反に問われて解雇、強制帰国させられることになった事例です。寮の規則違反で解雇・強制帰国となること自体に問題があるといえます。この会社には、技能実習生以外にも外国人が多数働いており、これまで問題のない、むしろ外国人に対して好意的な会社で、技能実習生達も日本での生活を楽しんでいると聞いていました。技能実習生の場合寮生活をしていることからそれなりに厳しい規則があるのはやむを得ないところですが、この事例は他の技能実習生に規則を守らせることを目的とした見せしめ的なものであったといえます。同様の例が過去にも何度かあったと聞いています。規則違反は規則違反として処罰を受けるのは当然のことといえますが、規則違反の程度と処罰の程度とのバランスが取れたものでなければ不当な処罰として問題とならざるを得ません。
 簡単に経過を追っていきます。土曜日に技能実習生の誕生日のお祝いとして他の地域に住む2名の女性技能実習生が寮に夜連絡もなく来ました。連絡しなかったのは驚かせるためだったそうです。寮の規則に従って、事前に寮に入れる許可を取っていなかったことから、帰らせましたが、あいにく最終列車が出た後で、23時ごろ寮に帰ってきたため止むを得ず寮に入れ、寮生5名と夜中の3時ごろまで誕生会をしたというものです。これが会社に分かり、即刻帰国とされたものでしたが、交渉過程で、会社は「解雇していない。寮からの退去を命じただけ。」とのことでした。
 この例で協同組合は、この事件の数日後に帰国を告げ、ペナルティーとして本人たちの髪が長いと切らせたり、携帯電話を取り上げたりしています。この帰国が決まったのち、協同組合の宿舎を抜け出して保護を求めてきましたが、帰国自体覆ることはありませんでした。

D その他
 強制帰国の例はこれら以外に、企業の倒産や不況から解雇されたり、労災事故により帰国させられたとの話も聞いたことがありますし、妊娠したという例などもあります。また、会社から嫌われたのか1年目の研修のみで、検定試験も合格しながら、2年目を目前に突然帰国を通告された例もあります。この例の場合、後日、同僚たちから話を聞く機会があり、「彼に特別問題はなかったが、やる気とか、注意力では多少劣るところがあった。なぜかわからないが、彼だけ何時も怒られていた。また、彼に問題があるように証言するように社長から言われていた。」と話してくれました。単独で相談に来た時には、例外なく、会社側の回答は仕事ができない、言うことを聞かないなどとの非難ばかりで、勤務している場合にはその人だけ残業やらせないなどの差別的取扱いをしてきます。