3.支援体制の構築に向けて



 技能実習生にかかわらず、問題を抱えた日本人も含めて継続的な支援を行っていこうとすれば、それなりの支援体制を組織する必要があります。より有効な支援を行おうとすれば支援する側と支援される側との関係をどのように構築していくかといった問題と支援依頼に対して迅速かつ的確に対応できる体制をつくる必要があります。

 広島市と呉市のカトリック教会を中心に活動している私の場合、問題が寄せられる範囲は三原以西から広島市までの間に在住するフィリピン人技能実習生が中心で、福山市や内陸部からの相談はありません。相談者が呉教会に近ければそちらに出かけて相談を聞きますし、それ以外の地域については幟町教会に来てもらっています。三原辺りから5人前後の人が広島に来るよりも、こちらが出かけた方がいいのですが、現地で通訳をしてくれる人がいないためそれが出来ません。私とそれぞれの地域のキーとなるフィリピン人との人間関係が出来ない限り限られた地域の支援で終わらざるを得ません。また、これまでの活動の中で、協同組合や会社側の通訳をしている人たちの一部が私たちの活動、ミサの開催も含めて妨害してくるといった問題もあります。

 教会を中心として支援体制を造ろうとした場合、東京大司教区のカトリック東京国際センター(CTIC)のような組織が望ましいのでしょうが、組織を維持する施設またスタッフの確保、それ以前に財政的、人材的な問題があります。長期的に維持運営するためには、極力財政的、施設的また人的負担を減らす形での体制づくりが必要となります。特に、外国人への支援に当たっては、労働問題や社会問題また教会としての司牧的活動も含めたものとしなければ有効な活動ができないと考えられます。カトリック教会には、日本カトリック難民移住移動車委員会(J-CaRM)が日本司教協議会の中に置かれ、各司教区さらに各小教区に委員会が設置されています。これを中心とした各教区の外国人および日本人そして外部の支援団体を含めた形の連携体制づくりを進めていくのが一番良い方法ではないかと考えます。

 一つの例として、次のような組織づくりが考えられます。

 幟町教会には様々な国の人たちが集まっており、フィリピン人を中心とした英語ミサを始めブラジル人やベトナム人達のミサも行われています。しかし外国人間の連絡協議会的なものは設けられてないようですし、J-CaRMの委員会は組織上存在していても十分に機能していないのが現実です。問題をかかえている人が教会を頼ってきても門前払いで終わってしまうのではないかと危惧しています。

 まず体制づくりの第1歩として、毎週行われる英語ミサの前後に相談窓口を設置することから始めるのが良いといえます。相談内容に応じて支援してくれる団体に引き継ぐことだけを目的とする専門的な知識や経験を必要としないものでフィリピン人グループのメンバーが交代で相談窓口に座っていれば十分です。これに日本人のボランティアも加わってくれれば言うことはありません。事前の準備として相談内容に応じての紹介先と付き添っていくことが可能な通訳のリストアップが必要となります。将来的には支援団体として活動できるレベルに進むことが出来ればなにもいうことはありません。

 次に、島嶼部等遠隔地で教会に来ることが出来ない人達に対して現地でのミサの開催を通じてフィリピン人共同体の結成の促進が望まれます。江田島市、呉市の音戸町や倉橋町の主要な集落には30名前後のフィリピン人が住んでいても一つの共同体としてのまとまりはありませんし、それ以前にお互いの存在を知らないケースも少なくありません。各地でミサの開催を通じて共同体が出来れば各共同体間の連携が図れ、合同で行事を開催することも可能となります。呉市のフィリピン人から、先の地域の人達を貸し切りバスで呉市に集めてクリスマスパーティーを開催したいとの話も出ています。こうした考えが出てきたのも、江田島市の三高地区と高田地区で月一回のミサが始まり、連携がとれるようになったことがきっかけとなっています。ただ、こうしたミサを進めていくためには広島教区としての取組がなければ拡大していくことは難しいといえます。

 幟町教会を例にとって考えると別表のような形のものが考えられます

【別表】

幟町教会の現状
幟町教会で確立する事項
教会外の支援団体

(1)ミサの開催状況
 @英語ミサ(フィリピン人が中心)
 Aブラジル人ミサ
 Bベトナム人ミサ
(2) 参加人数から見ると、英語ミサのフィリ
  ピン人が圧倒的多数を占めている。また、
  県内の教会でも外国人はフィリピン人が
  中心となっている。
(3) 幟町教会内で外国人の相互交流は無く、
  県内のフィリピン人間の協議会もない。
(4) フィリピン人向けの日本語教室とフィリピ
  ン人による英語教室ができている。

@相談窓口の設置
Aセミナー等広報活動の企画
B支援団体との連携
C支援団体の活動支援
 a 通訳の確保
 b 保護中の人への財政的支援
 c シェルターの確保(必要時)
 d 移動等の付添等の支援
D基金の設立
【当面の課題】
@各国外国人間の連携
A労働・DV等支援団体等の把握
B外国人グループリーダーの把握
C僻地の日系人に対する司牧体制
D技能実習生等との関係づくり

@スクラムユニオンひろしま
A福山ユニオンたんぽぽ
B働く者の相談室呉
C働く者の相談室県北
DNPO 反貧困ネットワーク広島
E生活と健康を守る会
F外国人技能実習生を支援する会
Gフィリピン人労働者を支援する会
【公的機関】
@法テラス
Aよりそいホットライン


【参考】
 インターネットで検索していたら福岡教区が外国人支援組織として美野島司牧センターを立ち上げています。このセンターには主にペルー人が来ていると書かれており、2007年11月から2008年11月までの間の相談内容と件数の集計表が掲載されています。これを見ると197件の相談があり、その内容も多岐にわたっているのが分かります。この集計表の概略は次の通りです。相談センターができればかなりな程度の相談があることを示しているのではないかと考えられます。

相談の種類
内  容
件数
司牧関係 初聖体、洗礼、祝福・祝別、葬儀・埋葬等 80
仕事関係 勤労者のアドバイス、仕事探し、その他
住居関係
医療関係 医師・病院との話合、医療費、健康保険
入国管理局関係 ビザ手続き等
領事館・外務省関係 諸手続き、通訳・翻訳
市(区)役所、役場、税務署 戸籍関係、国民健康保険、高額療養費、税金、各種届 20
学校、保育園関係 手続、通訳
収容施設(警察、拘置所、入管)、裁判所関係 面会、差入れ、裁判支援 20
その他 銀行・郵便局手続、通訳・翻訳、経済支援、離婚問題、悩み事相談、諸資格、その他 50
(相談者は主として外国籍の方々です。)
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