2 入国管理局の指針(平成24年11月改定)から


(1)技能実習計画の策定 (第2-3-(1))
 技能実習生から「私たちは3年の契約で日本に来ています。」と言う言葉をよく耳にします。私たちも、技能実習生の実習期間は3年間であると認識しています。しかし、技能実習生が3年間の実習終了前に、認定職種外の研修を受けていることが発覚したり、会社の倒産であったり、病気や労災事故で療養が必要となったなどの理由で本人の意思に反して帰国させられることがあります。労働基準法上は1か月前に解雇予告をするか解雇予告手当を支払えば特別問題はありません。しかし彼らは3年間の技能実習を目的として来日しているため残りの期間すべてに対して損害賠償の請求ができるはずですが、この問題はなかなかすんなりと収まることがありません。技能実習生の在留資格は1年であるため、毎年更新をする必要があり、それに併せて労働契約書も1年契約となっています。そうすると損害賠償請求できる期間は労働契約書の残りの期間だけか、それとも3年間に対する残りの期間が対象になるのかという問題があります。

 こうした場合どのようにするかは「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」(平成21年12月)(以下指針という)には触れられていません。しかし指針は3年間の実習期間を予定して来日する技能実習生の技能実習計画について次のように定めています。「「技能実習2号イ」又は「技能実習2号ロ」の活動が予定されている場合は,1年目,2年目,3年目の到達目標をきちんと定め,それぞれの期間において計画的・段階的に技能等を修得できる内容にする必要があります。到達目標の目安は,1年目は技能検定の基礎2級,2年目は基礎1級,3年目は3級になりますので,これに十分留意するとともに,到達目標(技能実習の成果を確認する時期及び方法を含む。)を記載した計画を策定してください。(指針、3 適正な入国・在留のための留意点(1)技能実習計画の策定 P5)」技能実習2号とは2年目以降の技能実習生を指しています。また、この技能実習計画の作成については、「技能実習1号ロ」については監理団体に作成義務があり、「技能実習2号ロ」については監理団体または実習実施機関の何れが作成しても良いとされています。

 また技能実習制度推進事業運営基本方針厚生労働大臣公示には「募集時の技能実習条件の明示」事項として、「ロ イの文書には、技能実習2号への移行を予定しない場合にはその旨を、また、技能実習2号への移行を予定する場合には、3の(1)の条件を満たさないときには、技能実習2号への移行が認められず、帰国しなければならない旨を、明記するものとする。」と記されています。技能実習生が、来日前に交わす労働契約書を持参している技能実習生から見せてもらったら契約期間は3年と記載されていました。こうした契約書を技能実習生が持っておらず損害賠償請求等で必要であれば入国管理局に保管されているため個人情報の開示請求をすれば取得できるはずです。

技能実習制度推進事業運営基本方針厚生労働大臣公示 抜粋
平成5 年4月5 日
(2) 募集時の技能実習条件の明示
イ 実習実施機関は、技能実習生の募集に当たっては、自ら又は監理団体若しくは送出し機関等を通して、技能実習生になろ
 うとする者に対し、技能実習制度に係る関係法令について必要な説明を行うとともに、当該技能実習生になろうとする者の母
 国語によって作成した文書をもって、予定されている技能実習の内容、技能実習2号への移行に当たり受験することが必要
 な試験及びこれまでの合格実績並びに技能実習期間中の労働条件を明示するものとする。特に、募集時に示した労働条件
 等と入国後の実態に齟齬が生じるとトラブルの原因になることから、賃金の決定、計算等の方法、食費、寮費等の賃金から
 の一部控除の取扱い、渡航費用の負担の有無等、条件の詳細についてあらかじめ明示することが必要である。
ロ イの文書には、技能実習2号への移行を予定しない場合にはその旨を、また、技能実習2号への移行を予定する場合に
 は、3の(1)の条件を満たさないときには、技能実習2号への移行が認められず、帰国しなければならない旨を、明記するもの
 とする。


(2)監理団体の役割
@ 技能実習制度の趣旨の理解と周知(第2-3-(2)-A)P7
 監理団体は、前項で触れた技能実習計画に基づいて適正な技能実習が実施されているか否かについて,その実施状況を確認し,適正な実施がおこなわれるように3年間企業等を指導するとともに技能実習生の世話をする義務を負っています。そのため、

監理団体は団体要件省令において3月につき少なくとも1回,監理団体の役員で技能実習の運営について責任を有する者が実習実施機関に対し監査を行い,その結果を地方入国管理局に対して報告しなければならないものとされています・・・監査を行うに当たっては・・・賃金台帳その他の文書を実際に確認することにより,技能実習生の労働時間や賃金の支払が労働基準関係法令の規定に適合しているか確認する必要があります。
※技能実習生1号の期間は月に1回以上    (第2-3-(2)-L-B)P15-16,17

とされています。  しかし監査以前の問題としてこの制度自体の趣旨が理解されている必要があるため、

 「監理団体は,技能実習制度の趣旨が,「人づくり」という国際協力,国際貢献にあることを理解し,実習実施機関や技能実習生の送出し機関に周知して,技能実習生を安価な労働力と考えている実習実施機関や送出し機関が技能実習制度に参入することを防がなければなりません。そのような実習実施機関や送出し機関がこの制度に参入すると,結果として,真摯に技能実習を受けようとして入国した技能実習生が,低賃金労働に従事させられるような事態を引き起こすこととなります。
 また,監理団体が,技能実習生の受入れは労働力不足の解消につながるなどと広告して,実習実施機関を「募集」することは,本制度の趣旨を理解しないものであり不適正といえます。」

と述べられています。
 しかし現実問題として、実習実施機関の社長が裁判所に提出した陳述書に「●●さんの話は「賃金が安いし、よく働くので、フィリピン人研修生を受け入れてはどうか」と言うことでした」と述べているように一部の監理団体はこうした役割を忘れているのが現実です。こうした文面を読むと、技能実習生の問題は、実習実施機関だけでなく、適正な管理を行っていない監理団体の責任も重いことになり、残業代未払の問題等が発生した場合には、雇い入れ企業に対しては当然未払の残業代をまた監理団体に対しては管理責任を果たしていないことに対して慰謝料請求をしなければ片手落ちと言わざるを得ません。

A 監理団体による講習の期間中の労働について(第2-3-(2)-B)
 入管法改正以前は、「研修生」という労働する資格のない在留資格であり、またこの期間内は8時間を超えた研修が認められていなかったため残業や労災など様々な問題が発生していました。同じような状況が、改正後の技能実習1号の最初の1〜2ヵ月間は生じるため次のように定められています。

「監理団体による講習の期間中,実習実施機関と技能実習生との間に雇用関係は生じておらず,実習実施機関が技能実習生に対して指揮命令を行うことは認められません。したがって,監理団体による講習が行われている期間中は夜間や休日であっても実習実施機関において技能等修得活動を行ってはなりません。」

B 実習実施機関における不法就労の排除(第2-3-(2)-G)
 労働することが出来ない在留資格の者や不法入国者などを労働者として使用することは入管法違反となり、そうした不法就労者を雇用する企業では適正な研修の実施は期待できないし、そうした実態を目の当たりにした技能実習生に悪影響を及ぼすことから、

 技能実習生を受け入れている企業等においては不法就労者を排除することが重要です。不法就労者を雇用している企業等は,出入国管理関係の法令を遵守しないで外国人を労働力として使用するものであることから,本邦で技能等を「修得する」ために来日している技能実習生に対して適正な技能実習を行うことができる機関とは認められません。
 監理団体は,このことを実習実施機関に徹底するとともに,不法就労者を雇用している場合には不法就労助長罪(入管法第73条の2)に当たり処罰されることがあることをよく周知する必要があります。

とされています。
 これに該当する例として平成25年3月14日に江田島市で発生した中国人技能実習生の殺人事件があります。この技能実習生は1年の実習期間で来日していましたが、半年程度経過した時点で、実習中の会社が不法就労者を雇用していたことが発覚して研修の続行が不可能となったため事件を起こした会社に移籍しています。こうした移籍がこの事件に関係したかどうか分かりません。しかし移籍先が見つからなければ帰国させられてしまうという不安感を技能実習生は持たざるを得ません。またもし残業代未払があったとすればそれに対する不満が募り、この事件発生のストレスの一つとなった可能性もあれます。

C 不適切な方法による技能実習生の管理の禁止 P13(第2-3-(2)-H)

 「監理団体が,技能実習生の失踪等問題事例の発生の防止を口実として,技能実習生に対し宿舎からの外出を禁止したり,技能実習生の旅券や在留カードを預かったりしてはいけません。外出を禁止することは人権侵害につながりかねず,また,旅券や在留カードは法令上携帯義務が課せられているので,法令違反に問われることにもなりかねません。実際に法令違反に問われなくとも,後述の旅券・在留カードの取上げに係る不正行為となります。
 旅券や在留カードについては,技能実習生から保管して欲しい旨の要望があったとしても,預かるべきではありません。このほか,技能実習生に対して,携帯電話の所持や来客との面会を禁止すること等により親族や友人等との連絡を困難にさせることも,不適切な方法による管理に当たります。」

 わざわざこのようなことを記載する理由は過去にこうした問題が常態化していたためでしょうか。当然私たちと同じように、技能実習生の人としての権利は尊重されなければいけません。東南アジアの人たちに対する無意識の蔑視が私自身を含めて日本人の心の奥底にあり、同時に低賃金労働者の導入を目的とした制度であるためことさら記載する必要があるといえます。手を変え品を変えたこうした人権侵害は続いています。フィリピン人の80数パーセントがカトリックの信者であることから教会に行って知恵を授けられて問題を起こすとの理由で「教会に行ってはいけない」と指導したり、ベトナム人等にシフトしていく傾向もみられます。こうした行為は技能実習生の人権を無視した外部との接触を遮断する目的であり技能実習生制度の趣旨を無視したものとしか言えません。

D 帰国担保措置 (第2-3-(2)-K) p14-15

 監理団体は,技能実習生の帰国旅費の確保その他の帰国担保措置を講じていなければなりません(上陸基準省令「技能実習1号ロ」第13号,変更基準省令第2条第12号)。
 帰国担保措置の中心となる帰国旅費の確保については,実習実施機関の倒産などにより技能実習の継続が困難となった技能実習生の帰国旅費の確保に難渋するなどの例が見受けられました。帰国旅費については,技能等を海外へ移転するという技能実習制度の趣旨にかんがみ,技能実習生の帰国に支障を来さないようにするため,監理団体又は実習実施機関において,その全額を負担しなければなりません。

 監理団体は技能実習生の来日から離日までの期間に対して管理義務を負うとともに帰国の費用も負担しなければならないと明確に定めています。日本の進んだ技術を発展途上国に移転する目的で日本側の負担で招いているという技能実習生制度の趣旨からして当然のことといえます。何らかの理由で突然強制帰国させられることになり、保護を求めてきた場合など、帰国のチケットは購入されていることが少なくありません。無駄になった場合であっても帰国時には監理団体が負担するものといえます。強制帰国させること自体人権問題であり、その前段としての不当解雇の問題もあります。
 帰国旅費の問題では、監理団体が負担することで話がついていながら、ホテルから飛行場まで付き添って行った送出し機関の通訳が技能実習生に搭乗手続き直前にチケット代を請求したという経験をしたことがありました。幸いなことに前日買った携帯電話のプリペイドカードが残っていたため私たちに電話が出来て事なきを得たということがありました。

(3)実習実施機関の役割 (第2-3-(3))P20
@ 技能実習計画に従った技能実習の実施(第2-3-(3)-@)P20

 実習実施機関は,技能実習計画に従って技能実習を実施する必要があります。技能実習計画に従って技能実習を実施すること

 技能実習生はどのような職種で研修を行うかは来日前に決定されています。当然決定された職種にもとづいた技能実習計画が組まれているため、それを外れた実習は認められていませんが、現実にはこれに違反した事例は少なくありません。この違反が発覚した場合(倒産の場合も同じ)、本来の研修職種での移籍先が見つからなければ帰国させられることになります。これは入管法上在留資格に基づく活動を行なえなければ当然のことかもしれません。しかし一方では労働者として雇用保険の被保険者でもあります。当然この場合会社都合の解雇となるため待機期間なしに90日間は失業給付を受けながら職探しが出来るはずですが、そうした労働者としての権利は無視されてしまいます。終業後や休日にどこかの会社でアルバイトをしたのが発覚して帰国させられる場合は当然のことかもしれませんが・・・。
 ちなみに技能実習生の実習対象職種は、2013.4.18現在、68職種127作業です。

A労働関係法令の遵守(第2-3-(3)-G)P23

 実習実施機関が責任を持って適正な技能実習を雇用契約に基づいて実施するに当たっては,労働関係法令を遵守することが特に必要です。

 極当たり前の話で特別問題になるはずはないのですが、「雇用契約」と実態が大きく相違する例がよくみられます。雇用契約に変形労働時間制が採用され、労働基準監督署にも書類は提出されてはいても労働の実態はそれが守られていなかったり、年次有給休暇の計画的使用がカレンダーに銘記されながら、無給の休暇として処理されていたり実態とそぐわない雇用契約書が少なくありません。労働基準法第41条で農業や漁業に従事する労働者に対して労働時間や休日の規定が適用除外されていることに関しては注意する必要があります。詳しくは「5 適用除外の問題」の項を参照ください。

B賃金の支払(第2-3-(3)-H)P23-24

 技能実習生に対しては最低賃金法をはじめ労働関係法令を遵守した賃金の支払を行う必要があることは当然ですが,上陸基準省令(「技能実習1号ロ」第21号ほか)及び変更基準省令(第2条第5号ほか)では,「報酬が日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であること」と定めています。
・・・
 食費や寮費等を賃金から控除する場合には,労働基準法にのっとった労使協定の締結が必要であり,控除する額は実費を超えてはなりません。
・・・
 内職は技能実習生の行う活動には該当しないことから,これを技能実習生に行わせることは認められません。所定労働時間外に技能実習生が通常従事している作業と関連のある作業を行わせることは認められますが,これについては時間外・休日労働として所定の割増賃金の支払等が必要です。

 技能実習生の賃金は「日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であること」とされていますが例外なく最低賃金で決定されています。しかも、時間給か日給という決め方であるため、休日が多い月であれば仕送りすれば自分の生活が成り立たたないため借金をしている技能実習生も少なからずいます。また家賃に関しては、支払った賃金を回収する装置としてしか考えられない例もよく目にします、レオパレスの様な家具付きのアパートの場合、何らかの理由で移動させられれば退去時の鍵交換や補修費が徴収されるため不満を訴えてくる例もありました。
 ここにある「内職」については、縫製業では、帰宅後、ボタン付けやファスナー付などを強制され、残業ではなく、「一個○○円」といった内職扱いとされていますし、自動車解体関係の会社では、定時終業してからは1個50円でタイヤ洗いのアルバイト、休日についても同様にアルバイトとして扱われている例がありました。

(4)実習実施機関の役割 (第2-3-(4))P27
@ 保証金の徴収の禁止等(第2-3-(4)-C)P28

 失踪防止等を名目として,技能実習生本人から保証金等を徴収している送出し機関があります。中には高額な保証金を徴収しているケースがあり,これが技能実習生の経済的負担となって,時間外労働や不法就労を助長しているとの指摘もあります。このため,送出し機関が技能実習生本人やその家族等から保証金を徴収するなどして金銭その他の財産を管理している場合には,その送出し機関からの技能実習生の受入れは認められません(上陸基準省令「技能実習1号ロ」第6号ほか)。
 また,送出し機関が技能実習生の労働契約の不履行に係る違約金を定めるなど不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結していた場合についても同様です。
 なお,上記の管理,契約に係る具体例は,第4の2(6)のとおりです。

 ここにある保証金の問題は、技能実習生が何らかの理由で途中帰国となれば没収されたり、残業代等の未払を問題にしたり、ユニオンに加入したりすれば当然没収ということに繋がってきます。技能実習生は常に保証金の問題を考えており、監理団体や実習受入機関のご機嫌を損なわないように注意しているといえます。従がって支援団体に近づいてくるのはよほどの大きな問題がある場合に限られますし、それも帰国が近くなってからということになります。
 フィリピン人技能実習生については保証金を預けていると聞いたことがありませんが、それ以外の国から来ている技能実習生は例外なく預けてきているようです。当然送出し機関ではなく、どこか別のところのようです。
 フィリピン人はこうした保証金の問題がないにもかかわらず問題を抱えていても相談に来ない背景には、協同組合や会社から帰国させられるという恐怖感があります。フィリピン人に限らず警察も弁護士も信用できない国から来ているため、相談に来た場合には恐怖感を取り除くことから始める必要があります。

(5) 不正行為(第4) p32

 不正行為を行った場合は「技能実習の適正な実施を妨げるもの」であるか否かを問わず,地方入国管理局への報告の対象となります。また,地方入国管理局では,監理団体又は実習実施機関からの報告の有無にかかわらず,第3で示したように実態調査を実施するなどし,「不正行為」に対して厳正かつ的確に対応することとしています。
 こうして地方入国管理局が確認した「不正行為」が,技能実習の適正な実施を妨げるものであった場合は,当該機関における研修生や技能実習生の受入れは,不正行為が終了した日後一定期間(行為の重大性に応じて5年,3年又は1年の期間)認められません。

 監理団体また実習受け入れ機関がおこなった不正行為の内容に応じて罰則が定められており、特に重大と認められるものについては、1年、3年そして5年の期間受け入れ停止の罰則を定めています。

5 年 の 罰 則

3 年 の 罰 則

1 年 の 罰 則

(1) 暴行・脅迫・監禁
(2) 旅券・在留カードの取上げ
(3) 賃金等の不払
(4) 人権を著しく侵害する行為
(5) 偽変造文書等の行使・提供

(6) 保証金の徴収等
(7) 雇用契約に基づかない講習の期間中の業務
  への従事

(8) 二重契約
(9) 技能実習計画との齟齬
(10) 名義貸し
(11) 実習実施機関における「不正行為の報告不
  履行」・「実習継続不可能時の報告不履行」
(12) 監理団体における「不正行為の報告不履行」・
  「監査,相談体制構築等の不履行」
(13) 行方不明者の多発
(14) 不法就労者の雇用等
(15) 労働関係法令違反
(16) 営利目的のあっせん行為
(17) 再度の不正行為

(18) 日誌等の作成等不履行
(19) 帰国時の報告不履行