平成20年度社会保険労務士労働基準法問題

【問4−A】誤り

[問題解説の主旨]
 「労働時間とは。」と改めて問われると答えに窮してしまうのが現実だろうと思います。問題文にあるとおり「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」なのですが、労働基準法はそのあたりのことを明確にしていませんので、事業場外での仕事、自宅持ち帰りの仕事などどうなるのか、難しい問題があります。労働時間の定義は判例等を調べなければなりません。ここでは、労働契約等がその根拠となるかどうか判例の知識を問われているといえますが、他との比較で考えればこの問題は無視して考えればいいのかもしれません。

[判例]
 「一 労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではない。二 労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間に該当する。」 (最高裁平12.3.9 三菱重工業長崎造船所事件裁判所HP判例要旨)

[解説]
 労働時間については、労働基準法では、第32条で「1週40時間、1日8時間」と定められ、第36条の労使協定を締結することにより、これを超えて労働させることができると定めているように労働時間の長さしか定めていません。同様に、労働契約、就業規則そして労働協約についても使用者と労働者との間での労働時間の長さを決めるものでしかありません。しかし、労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」との了解事項があるといえますが、労働時間に関してのトラブルが発生すると改めて労働時間の定義が問題になってきます。例えば、始業終業前後の更衣時間や清掃時間の扱いなどです。そのため過去の判例から労働時間の考え方を理解しておかなければ正確な判断が下せないことになります。ちなみに、通常の更衣時間は労働時間とはなりませんが、業務上必要な保護具等の着用が義務付けられておれば労働時間と見なされます。また、清掃については、業務命令なのか、自発的な行為なのかによって違ってくることになります。
 では、どのような場合労働時間とみなされるかとなる下記のようになります。
 「労基法の規制する労働は使用者の指揮命令下の従属的労働であり、規制の対象となる労働時間とは使用従属下の労働時間である。このような使用者の指揮監督下に拘束され従属的労働に従事しており、労働時間といえるのは、
  a 一定の場所的な拘束
  b 一定の時間的な拘束
  c 一定の態度ないし行動上の拘束
  d 一定の労務指揮的立場から行われる支配ないし監督的な拘束
  e 一定の業務内容ないし遂行方法上の拘束
 
等のすべての拘束要件をみたす場合である。」(安西愈著「労働時間・休日・休暇の法律実務」P64)