平成20年度社会保険労務士労働基準法問題


【問2−E】正解

[問題解説の主旨]
 労働者の労働条件を規定するものに労働基準法をはじめとした法令、労働協約、就業規則そして労働契約があります。これら相互間で不一致が見られた場合どちらが優先するかといった問題で、法第92条第2項がそのまま問われています。

[条文]
(法令及び労働協約との関係)
第92条 就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。
A 行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。
変更命令に従わないとき【罰則: 30万円以下の罰金】
(効力)
第93条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において無効となつた部分は、就業規則で定める基準による。
(この法律違反の契約)
第13条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。
【現実に違反している条文で罰される】

[解説]
 労働者の労働条件を定めるものとして、法律、労働協約、就業規則そして労働契約とあります。当然それぞれの間での力関係を整理しておかなければ労働条件の定め方に不一致が生じた場合トラブルが発生することになりますので、上記の3つの条文が定められています。これらの条文は注意して読む必要があります。
 法第92条第1項は次の二つのことを規定しています。
 @

 就業規則は労働基準法も含めた法令の労働条件に違反してはいけない。例えば、時間給が最低賃金法に違反している場合等。

 A

 就業規則は労働協約で定めている労働条件を上回っても、下回ってもいけない。要するにこの関係では同一内容でなければならず、就業規則の労働条件が上回っていれば労働協約の労働条件まで低下させることになります。


 次に法第13条は、労働基準法の定める労働条件に達していない労働契約の内容はその部分のみ無効として、その部分については労働基準法の定めを適用することになります。要するに、1日9時間の労働契約は認められず、1日8時間として取り扱われることになります。この「無効」という法律的用語は契約当初に遡って無効とされますので、無効となった1時間分については25%の割増賃金を付けたもので清算されなければなりません。

 これらの関係を示すと次のようになります。

法令 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約

 労働契約と就業規則の労働条件は同じになるのが原則的ですが、中には、勤務地を限定したり、職種を限定するといった特約を付けた労働契約があります。
 こうした「転勤や配置換え」はそのような制度があれば記載しなければならない労働条件に該当しますので就業規則に定めが無ければ原則「転勤や配置換え」は行えないことになります。しかし、就業規則に「転勤や配置換え」の定めが置かれており、しかも労働契約にはそれを否定する特約条項がある場合には、労働契約の特約が優先されることとなります。
 次に、労働協約についてですがこれは労働組合と会社との間で締結された労働条件ということになりますので、労働組合が無ければ考えることはありませんが、最近一人でも加入できる労働組合が増えてきています。これに加入した労働者がいれば当然その労働者が一人であっても労働協約を締結することはあるといえます。似たような言葉に労使協定というのがあります。この違いは次のとおりです。

労働協約=労働組合法第14条に基づき労働組合と使用者とが労働条件等について定めた書面を指す。
労使協定=労働基準法の条文に基づき労働者の団体と使用者との間で取り決めた書面を指す。