平成20年度社会保険労務士労働基準法問題

【問2−A】誤り

[問題解説の主旨]
 就業規則は法第9章として第89条から93条に定められており、【問2】はこれらを設問ごとに条文の確認してきています。併せて【問2−D】では法第106条の法令等の周知義務が問われています。

[条文]
 (作成及び届出の義務) 第89条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
【記載事項は解説参照】   【罰則: 30万円以下の罰金】

[解説]
 就業規則は条文にあるとおり、常時10人以上使用する使用者が作成する義務を負わされています。ここで言う常時10人とは、アルバイトやパートを含めて10人以上ということになります。職員用とパート用の就業規則それぞれを作成するのが一般的ですが、この場合、「この規則は、第○章で定める手続きにより採用された従業員に適用する。ただし、パートタイム従業員又は臨時従業員の就業に関し必要な事項は別に定めるところによる。」として誰に適用される就業規則であるかを明確にしておく必要があります。また、賃金については、別に賃金規程を定めるのであれば、就業規則の賃金の条文に、「賃金については別に定める。」と委任規定を定めておく必要があります。このようにいくつかの規程を定めた場合、これらを一括したものが就業規則と見なされます。
 こうした就業規則について、10人とは会社全体で考えるのか、それとも事業所単位で考えるのかといった問題や法律と同じような効果を持つのかといった問題そして定める内容は使用者の自由に任されているのかという問題があります。
 まず、事業所の問題ですが、労働基準法の規定が適用されるのは会社全体を対象として適用されるのではなく、事業所単位に適用されます。支店や営業所がある事業所では36協定は事業所単位に締結し、所轄の労働基準監督署に提出することになります。就業規則についても同様で、本社が5人、支店が12人ということになれば本社は作成の義務は無いが、支店は作成の義務があることになります。
 次に、就業規則は法律と同様の効力があるのかという問題です。就業規則を定める目的は統一的な労働条件を全ての労働者に適用していこうとするものですが、中には、認めていないとか、知らなかったといって問題を起こす労働者もいます。この辺りのことは、秋北バスの判例が明確にしています。

秋北バス事件(1968年12月25日最高裁)
(1) 「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」(労働基準法二条一項)が、
(2)

多数の労働者を使用する近代企業においては、労働条件は、経営上の要請に基づき、統一的かつ画一的に決定され、労働者は、経営主体が定める契約内容の定型に従って、附従的に契約を締結せざるを得ない立場に立たされるのが実情であり、

(3)

この労働条件を定型的に定めた就業規則は、一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、

(4)

それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるに至っている(民法九二条参照)ものということができる。
 (中 略)

(5)

 右に説示したように、就業規則は、当該事業場内での社会的規範たるにとどまらず、法的規範としての性質を認められるに至っているものと解すべきであるから、

(6)

当該事業場の労働者は、就業規則の存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然に、その適用を受けるものというべきである。
 (中 略)

(7)

 おもうに、新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないと解すべきであり、

(8)

これに対する不服は、団体交渉等の正当な手続による改善にまつほかはない。そして、新たな停年制の採用のごときについても、それが労働者にとって不利益な変更といえるかどうかは暫くおき、その理を異にするものではない。」


 最後に、就業規則になにを記載するかについては使用者の自由に任されているのではなく、必ず記載しなければいけない事項と定めがあれば記載が必要な事項が労働基準法に定められています。また、労働条件と関係のない経営方針などを記載しても構いません。

A 絶対的必要記載事項
B 相対的必要記載事項

(1) 労働時間・休日・休暇・交代制に関する事項
 @ 始業および終業の時刻
 A 休憩時間
 B 休日
 C 休暇
 D 就業時転換
(2) 賃金並びに昇給に関する事項
 @ 賃金の決定
 A 計算方法
 B 支払いの方法
 C 賃金の締切
 D 賃金の支払日
 E 昇給に関する事項
(3) 退職に関する事項(解雇を含む)

(1) 退職手当に関する事項
    @ 適用される労働者の範囲
    A 退職手当の決定
    B 計算方法
    C 支払方法
    D 支払いの時期
 (2) 臨時の賃金等に関する事項
 (3) 食費等その他負担に関する事項
 (4) 安全衛生に関する事項
 (5) 職業訓練に関する事項
 (6) 災害補償・業務外傷病扶助に関する事項
 (7) 表彰および制裁に関する事項
 (8) 労働者の全てに適用される事項
   ※出向・休職・福利厚生・旅費規定等

C 任意的記載事項   公序良俗に反しない限り記載自由。(目的・精神・適用範囲その他)