平成20年度社会保険労務士労働基準法問題


【問1−D】正解

[問題解説の主旨]
 ほぼ条文どおりに出題されています。

[条文] (前借金相殺の禁止)
第十七条 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。
【罰則:6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金】

[解説]
 この条文も法第16条同様に、労働者を不当に会社に拘束することを禁止するという趣旨から置かれたものです。入社する時または入社した後に労働することを条件として会社からお金を借り入れ、後日会社は賃金を支払うときに貸したお金を差し引きした残りの額を支払うことを禁止しています。要するに、労働の対価としての賃金と金銭の貸し借りに基づく債権債務の問題とを分けて処理しなければいけないということです。賃金は賃金として全額支払い、その後、返済金を労働者から返済させるという2段構えの処置を取らなければならないということになります。
 賃金については、法第24条で賃金支払の5原則が定められています。すなわち、@通貨払いの原則、A直接払いの原則、B全額払いの原則、C毎月1回以上払いの原則、D一定期日払いの原則です。法第17条はこのうちの全額払いの原則に違反することになります。
 この規定が適用されない例として次の通達があります。
 「法第17条の規定は、前借金により身分的拘束を伴い労働が強制されるおそれがあること等を防止するため「労働することを条件とする前貸の債権」と賃金を相殺することを禁止するものであるから使用者が労働組合との労働協約の締結あるいは労働者からの申出に基づき、生活必需品の購入等のための生活資金を貸付、その後この貸付金を賃金より分割控除する場合においても、その貸付の原因、期間、金額、金利の有無等を総合的に判断して労働することが条件となっていないことが極めて明白な場合には、本条の規定は適用されない。」(昭63.3.14 基発150号)