平成17年度社会保険労務士労働基準法問題

【問7−B】 正解

[問題解説の主旨]
 割増賃金を計算する際の基礎賃金についての問題です。基礎賃金に含まれないものは、家族手当と通勤手当以外のものは、施行規則に定められていますから、これら以外は全て基礎賃金になります。ここでは年俸制賃金となっていますので、設問にある賞与が「臨時に支払われた賃金」またき「一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」に該当するかどうかを考える必要があります。

[条文]

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第37条
 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
 使用者が、午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後11時から午前6時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
 第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

(施行規則)
第21条
 法第三十七条第四項の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第一項及び第三項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。
 一 別居手当
 二 子女教育手当
 三 住宅手当
 四 臨時に支払われた賃金
 五 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

[解説]
 ここでは、割増賃金の率、割増賃金の対象となる時間区分そして対象となる基礎賃金について見ていきます。
 まず、時間外労働と休日労働の割増賃金率については、法律上は、「2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率」とされており、政令で、時間外労働2割5分以上、休日労働3割5分以上の率とされています。一方、深夜労働の割増率は、法律で2割5分以上と定められているという違いがあります。
 次に、割増賃金の対象となる労働時間はどう考えればいいのかと言う問題があります。法32条で1週間の労働時間は40時間以内、1日の労働時間は、8時間以内と定めていますからこれを超えたら時間外労働として割増賃金を支払えばいいということになります。この場合であれば、就業規則において、「法定労働時間を超えた場合に割増賃金を支給する。」と定めることになります。また、所定労働時間が7時間の場合であっても同様に定めておくこともできますし、「所定労働時間を超えた場合に割増賃金を支給する。」としても問題はありません。労働条件がよくなるわけですから、何ら問題はありませんが、事業主がどこかで知識を仕入れてきて、「法定労働時間を超えた場合」でないとおかしいと言い出した場合、変更が出来るかとの問題もあります。会社が倒産寸前とかの理由があれば可能かもしれませんが、順調に経営がなされていれば、「所定労働時間を超えた場合」が何年にもわたって行われていたら慣習法としてみなされ変更は出来ないと考えられます。
 また、休日労働にしても、労働基準法は1週間に1回の休日を原則としていますから、土日を休みとしている場合、「日曜日に勤務した場合に休日割増賃金を支払う。」とすれば、土曜の出勤は通常の時間外割増賃金の支払でよいことになります。「就業規則で定める休日に出勤した場合・・」と定めれば土曜日の出勤も休日割増賃金を支払わなければならなくなります。
 最後の、割増賃金の基礎となる賃金ですが、賃金とは、法第11条で「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」と定義されていますので、賃金支給表の支給項目全てが賃金といえます。割増賃金の基礎給は、それらのうち施行規則第21条に規定する7項目を除いたものとなります。退職金は、「臨時に支払われた賃金」ですし、賞与は「一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」ですから当然対象となりません。しかし、以上述べてきたのは、月給制で賃金が決まっている人についての話であることに注意しておく必要があります。ここの問題は、年俸制で賃金が決まっている労働者について述べられているので、その観点から考える必要があります。年俸制であれば、年1回の支給で良いのかとの問題もあります。賃金支払の5原則の一つに「毎月払いの原則」があります。これに基づいて、年俸制賃金であっても原則12等分して支払わなければ基準法違反となってしまいます。問題を見ると、年俸の16分の4は賞与として2回に分けて支払うとされるとされていますが、これは月給制賃金の場合の賞与と異なり、事前に確定している賃金をどのような支払い方をするかの問題にしか過ぎないので、「臨時に支払われた賃金」又は「一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」には該当しないといえます。
 この部分についての通達に次のようなものがあります。(平12.3.8 基収78号)
 「割増賃金の基礎となる賃金に算入しない賃金の一つである「賞与」とは支給額が予め確定されていないものをいい、支給額が確定しているものは「賞与」とみなされない(昭22.9.13基発17号)としているので、年俸制で毎月払い部分と賞与部分を合計して予め年俸額が確定している場合の賞与部分は、上記「賞与」に該当しない。したがって、賞与部分を含めて当該確定した年俸額を算定の基礎として割増賃金を支払う必要がある。」