平成17年度社会保険労務士労働基準法問題

【問5−D】 誤り

[問題解説の主旨]
 労働者が年齢を偽ったため、第56条に定める最低年齢に達しない児童と労働契約を締結している場合、この労働契約は無効であるため即刻破棄せざるを得ません。もともと無効な契約であるため、解雇予告手当の規定を適用する必要はないと考えることは妥当といえるでしょうか。

[条文]

(最低年齢)
第56条 使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない。
 前項の規定にかかわらず、別表第1第1号から第5号までに掲げる事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつその労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満13歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満13歳に満たない児童についても、同様とする。
(年少者の証明書)
第57条 使用者は、満18歳に満たない者について、その年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければならない。
 使用者は、前条第2項の規定によつて使用する児童については、修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書及び親権者又は後見人の同意書を事業場に備え付けなければならない。
(未成年者の労働契約)
第58条 親権者又は後見人は、未成年者に代つて労働契約を締結してはならない。
 親権者若しくは後見人又は行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては、将来に向つてこれを解除することができる。
(解雇の予告)
第20条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
 前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
 前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。

[解説]
 第56条によって、原則として義務教育を終了するまでの児童と労働契約を結ぶことはできない、とされていますが、同第2項で例外措置を定めています。また、第57条では、満18歳未満の者を使用する場合には、年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けること、また義務教育終了前の児童を使用する場合には、学校長の証明書と親権者又は後見人の同意書を事業場に備え付ける義務を負わせています。使用者がこれらの義務を確実に行っておれば、第56条の最低年齢に達しない児童を雇用することはないといえます。労働基準法を知らなければこうした違反は不思議でもないでしょうが、基準法を知らない使用者また労働者のほうが多いのが現実でしょうから、問題にあるような事態も現実に発生してきます。
 無効な労働契約であってもその事実が分かるまでは当然有効なものとして取扱う必要があります。そうでなければ契約当初に遡って無効となればタダ働きという結果になってしまいます。 こうしたことから、第56条も労働条件が未成年者に不利な場合には、「親権者若しくは後見人又は行政官庁」は「将来に向って」解除できるとしています。
 有効な労働契約であった以上、労働基準法の規定は当然適用されなければなりませんので、第20条の解雇予告についても適用されることになります。しかし、この場合、最低年齢に達していないのですから、即刻労働契約を破棄せざるを得ないため30日の解雇予告期間を確保することはできないので、30日分以上のの解雇予告手当を支払うと同時に解雇せざるを得ないことになります。
 この件については、下記のような通達(昭23.10.18 基発150号)があります。
 問 : 未就学児童が禁止されている労働に従事しているのを発見した場合、これに配置転換その他の措置を講ずるが、その事業場をやめさせなければならない時は、法第20条第1項本文後段の規定により30日分以上の平均賃金を支払い即時に解雇しなければならないか。
 答 : 見解の通り