平成17年度社会保険労務士労働基準法問題

【問5−C】 誤り

[問題解説の主旨]
計画的付与された年次有給休暇と育児休業期間とが重なっている場合、どちらが優先されるかとの問題ですが、年次有給休暇は労働の義務がある日に行使できるものであることを考える必要があります。

[条文]

第39条
 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第1項から第3項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

[解説]
 年次有給休暇は、労働者が自由に、自分が休みたい日に有給で休務することができるものであるため、労使協定による年次有給休暇の付与は本来の主旨に反することとも考えられますが、わが国の年次有給休暇の取得率が著しく悪いことから、導入された経緯があります。
 年休を確実に消化させることを目的としているため、「計画的付与の場合には、第39条第4項の労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権は共に行使できない。」(昭63.3.14 基発150号)とされています。また、年次有給休暇は労働義務の無い日に対して時季指定また時季変更できるものであるため、労働義務の無い日に対しては時季指定権また時季変更権は行使できません。
 以上のことから、この問題の前段において、「育児休業申出後」すなわち育児休業が確定している日に対して年次有給休暇を付与することはできないのは当然といえます。しかし、後段においては、労使協定によって確定された年次有給休暇の日に対して後から育児休業の申出をした場合はどうでしょうか。計画的に付与された年次有給休暇は労使ともに時季の変更は出来ないため育児休業より優先されることになりますので、この部分が誤りとなります。このことについては、次の通達があります。
 「年次有給休暇は、労働義務のある日についてのみ請求できるものであるから、育児休業申出後には、育児休業期間中の日について年次有給休暇を請求する余地はないこと。また、育児休業申出前に育児休業期間中の日について時季指定や労使協力に基づく計画付与が行われた場合には、当該日には年次有給休暇を取得したものと解され、当該日に係る賃金支払日については、使用者に所要の賃金支払の義務が生じるものであること。」(平3.12.20 基発第712号)
 上記の通達が出た翌年に次のような判例があることにも注意しておいてください。
 「労基法の規定に基づき、労使協定により年休の取得時期が集団的統一的に特定されると、その日数についてここの労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権は当然排除され、その効果は当該協定により適用対象とされた事業場の全労働者に及ぶが、その協定に反対する少数組合がある場合には、少数組合員を協定に拘束することが著しく不合理となるような特別の事情があったり、協定の内容が不公正であったりするときは、その効果は少数組合員に及ばないこともある。」(長崎地平4.3.26)