平成17年度社会保険労務士労働基準法問題

【問3−A】 誤り

[問題解説の主旨]
 派遣労働者の時間外労働に対する36協定の提出義務はどこにあるかという問題です。派遣労働者をめぐる問題はなかなか難しいものがあり、特に、請負事業との違いをしっかり理解しておく必要もあるといえます。

[条文]

 第9条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
 第36条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならない。
 (労働者派遣法)
 第44条2 派遣中の労働者の派遣就業に関しては、派遣先の事業のみを、派遣中の労働者を使用する事業とみなして、労働基準法第7条、第32条、第32条の2第1項、第32条の3、第32条の4第1項から第3項まで、第33条から第35条まで、第36条第1項、第40条、第41条、第60条から第63条まで、第64条の2、第64条の3及び第66条から第68条までの規定並びに当該規定に基づいて発する命令の規定(これらの規定に係る罰則の規定を含む。)を適用する。(略)


[解説]
 法第36条で、使用者は、当該事業場で使用される労働者の過半数代表者(労働組合を含む)と書面協定をして、行政官庁に届け出た場合に時間外労働及び休日労働をさせることができると規定されています。派遣労働者も当該職場で働いていれば、ここでいう労働者に該当するのかどうかが問題となります。労働基準法が意味している労働者の定義は、法第9条にありますので、この定義に反するものは、当該事業場に使用される労働者とはみなされないことになります。労働基準法でいうところの労働者とは、「@職業を問わない、A事業に使用されていること、B賃金を支払われていること」の三つの条件を満たしている必要があります。しかし、法人に雇われている役員もこの条件を満たしているので、労働基準法上の労働者とは労働者性を有しているかどうかで判断することになります。これは次の二つの条件を満たす必要があります。
 (1)「労務提供の形態が指揮監督下の労働であること」
 (2)「報酬が労務の対象として支払われていること」
 派遣労働者を見ると、(1)は満たしていますが、(2)の報酬については、派遣先から支払われているのではなく、自分が労働契約をしている派遣元から支払われているため(2)の要件は満たしていないことになり、派遣先の使用者との関係では労働者性が認められないため労働基準法上は派遣先の労働者ではないことになり、派遣先との関係では労働基準法上の保護は受けられないことになります。しかし、派遣元との関係では労働者性があるため派遣先での労働については派遣元が労働基準法上の保護をしていくということになり、36協定については派遣元が提出義務者ということになります。以上を踏まえて、労働者派遣法第44条第2項は上記のように明文化しています。
 また、「派遣元の使用者は、当該派遣元の事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合と協定し、過半数で組織する労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者と協定をすることになる。この場合の労働者とは、当該派遣元の事業場のすべての労働者であり、派遣中の労働者とそれ以外の労働者の両者をふくむものであること。」(昭61.6.6基発333号)との通達もあります。
 最後に、派遣と請負の違いですが、自分の雇用する労働者を相手先の職場で仕事をさせることは同じであっても、相手先の指揮命令を受けて仕事をする場合が派遣であり、相手先の指揮命令を受けず、請負もとの指揮命令の下で労働をすることをいいます。契約書自体、派遣契約また請負契約と名称が分かれますが、名称は請負契約であっても先方の指揮命令を受けておれば、契約名称の如何にかかわらず派遣契約とみなされることになります。