平成17年度社会保険労務士労働基準法問題

【問2−B】 誤り

[問題解説の主旨]
 裁量労働制のうち、専門業務型裁量労働制(38条の3)と企画業務型裁量労働制(38条の4)を採用した場合、「労働時間を算定する時には、第4章(労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇)で定める規定に対しては例外規定として適用するが、第6章の2(女性)の規定に対しても同じように例外規定として適用できるのか」、と聴いている問題です。

[条文]年少者と女性に対する適用除外の条文です。
(第6章 年少者)
第60条 第32条の2から第32条の5まで、第36条及び第40条の規定は、満18歳に満たない者については、これを適用しない。
(第6章の2女性)
第66条 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第32条の2第1項、第32条の4第1項及び第32条の5第1項の規定にかかわらず、1週間について第32条第1項の労働時間、1日について同条第2項の労働時間を超えて労働させてはならない。
2 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第33条第1項及び第3項並びに第36条第1項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。

[解説]
 法第32条2項で、1日の労働時間は「休憩時間を除き1日に8時間を超えて、労働させてはならない。」と定められています。また、労働契約時においても、就業規則においても始業時間と就業時間は明示しなければいけない事項となっています。経済環境のグロ−バル化、産業構造の複雑化また科学文明の進歩によって業務内容も専門分化してきており、画一的な労働環境では業務の処理が難しくなってきていることから、労働関係の法律が急速に整備されてきています。その一つがこの裁量労働制といえます。
 裁量労働制は、労働基準法の第4章(労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇)の中で、第4章に規定する各条項に対する例外的取扱規定として設けられています。一方、問題文中にある第6章の2の女性の労働時間に関する規定は、一定の条件下にある女性に対すして、他の章で定められている事項についての就業制限を規定していますので、第4章の労働時間等に関する規定は第6章の2の女性の労働時間には当然に適用されないということになります。そのため、第6章の2条件を満たす女性に対して、裁量労働制を適用しないとの規定は、基準法上も、施行規則上も何らの定めもありません。この当たりを明確にし、誤った解釈がされないように次の通達が出されています。「専門業務型裁量労働制に係る労働時間のみなしに関する規定は、法第四章の労働時間に関する規定の適用に係る労働時間の算定について適用されるものであり、第六章の年少者及び第六章の二の女性の労働時間に関する規定に係る労働時間の算定について適用されないものである。/また、労働時間のみなしに関する規定が適用される場合であっても、休憩、深夜業、休日に関する規定の適用は排除されないものである。」(平成12.1.1基発1)
 この問題は、この通達を知っているかどうかの問題というよりは、法律を読んでいく場合どのような読み方をしていくかといった問題だろうと考えられます。問題がよく分からない場合、問「A」のように「三分の一」という数字の問題は別として、理屈に関する問題は、法律は一般的な常識を条文化したものですから、一歩下がって頭を冷やし、自分の常識ではどうなるかという考え方をしてみる必要もあるといえます。

専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の対比
(全国労働基準関係団体連合会資料から)

専門業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制
対象
業務
 業務の性質上、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務の遂行手段及び時間配分の決定などに関し、具体的な指示をすることが困難な業務 専門的な19業務に限定 事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査、分析の業務であって、業務の性質上、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務の遂行の手段及び時間配分の決定などに関し、具体的な指示をしない業務
対象者
対象業務に従事する労働者 対象業務に従事する労働者であって、対象業務を遂行する知識、経験を有しこの制度によることに同意した者
導入
要件
次の事項を定めた労使協定を締結すること
@制度を適用する業務の範囲
A適用者には、業務遂行の方法、時間配分の決定などに関する具体的な指示をしないこと
B1日当たりのみなし労働時間数
C労使協定の有効期間
D対象労働者に適用する健康・福祉確保措置
E対象労働者からの苦情処理のための措置
FD及びEに関する記録を、有効期間中及びその後3年間保存する。
(導入要件)
委員会の委員の5分の4以上の多数により次の事項について決議し、決議内容を労働基準監督署長に届け出ること
@対象業務の範囲
A対象労働者の具体的な範囲
B1日当たりのみなし労働時間数
C対象労働者に適用する健康・福祉確保措置
D対象労働者からの苦情処理のための措置
E本人の同意の取得、不同意者の不利益取扱の禁止に関する措置
F決議の有効期間の定め
GCDEなどに関する記録を、有効期間中及びその後3年間保存すること
(労使委員会の要件)
@委員の半数が、過半数労働組合(これがない場合は過半数代表者)に人気を定めて指名されていること
A委員会開催の都度、議事録を作成し、3年間保存すること
B議事録を見やすい場所への掲示、備付などによって労働者に周知すめこと
C委員会の招集、定足数など委員会の運営に関する規程が定められていること
E委員会の委員であることなどを理由として不利益な取扱をしないようにすること
届出

報告
労使協定の所轄労働基準監督署長への届出 @委員会の決議の所轄労働基準監督署長への届出
A当分の間、健康・福祉を確保する措置の実施状況などについて決議の日から6か月以内に1回、所轄労働基準監督署長への報告