平成17年度社会保険労務士労働基準法問題


【問1−D】誤り

[問題解説の主旨]
通勤手当は、1ヶ月単位で支給するのが一般的ですが、経費削減を目的として6か月定期券相当額を年2回支給する会社もあります。こうした手当の支給方法をめぐって平均賃金を算定する場合にはどのように取扱えばよいのかという設問となっています。また、問題では、6か月定期券相当額ではなく、6か月定期券の現物支給となっていますが、現物で支給される賃金については総て平均賃金に算入できるのかといった問題も考えておく必要があります。

[条文]
第12条 この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。
  @賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60
  A賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額
 前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。
 前2項に規定する期間中に、次の各号の一に該当する期間がある場合においては、その日数及びその期間中の賃金は、前2項の期間及び賃金の総額から控除する。
  @業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
  A産前産後の女性が第65条の規定によつて休業した期間
  B使用者の責めに帰すべき事由によつて休業した期間
  C育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)第2条第1号に規定する育児休業又は同条第2号に規定する介護休業(同法第61条第3項(同条第6項から第8項までにおいて準用する場合を含む。)に規定する介護をするための休業を含む。第39条第7項において同じ。)をした期間
  D試みの使用期間
 第1項の賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない。
 賃金が通貨以外のもので支払われる場合、第1項の賃金の総額に算入すべきものの範囲及び評価に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。【則】第2条
 雇入後3箇月に満たない者については、第1項の期間は、雇入後の期間とする。
 日日雇い入れられる者については、その従事する事業又は職業について、厚生労働大臣の定める金額を平均賃金とする。
 第1項乃至第6項によつて算定し得ない場合の平均賃金は、厚生労働大臣の定めるところによる。

[解説]
 第12条第4項で、「臨時に支払われた賃金」、「3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」そして「通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないもの」は平均賃金計算時には算入しないとの規定を根拠として、設問の6か月定期券の支給は「3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」に該当するので平均賃金計算時には賃金に含めないとされています。こうした問題を考える場合、なぜこのような支払い方をしているのかということも考えて判断する必要があります。通勤手当の考え方は原則実費支給ですが、一定の上限を定めている場合もあります。実費支給を原則とすれば、毎月支給すべきものでしょうが、経費節減のため、また定年までの雇用を原則としている会社においては、途中での退職を考える必要もありませんので、6か月定期券または相当額を支払うとする会社もあります。こうした性格を持った6か月定期券または相当額の支給は費用の前払いという性格を持っていますので、経理上厳格に処理しようとすれば、仮払金として処理し、毎月費用として精算していくべきものと考えられます。従って、「3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」には該当しないと考えざるを得ません。
   この設問の解答として次の通達をあげることができます。
[問] ○○通運の株式会社○○支社では労使間の協定書により通勤費として六ヵ月毎に定期券を購入し、それを支給しているが、このような通勤定期券の支給は法第11条の賃金と解すべきか。
[答] 設問の定期乗車券は法第11条の賃金であり、従って、これを賃金台帳に記入し又は6カ月定期乗車券であっても、これは各月分の賃金の前払いとして認められるから平均賃金算定の基礎に加えなければならない。(昭33.2.13 基発90号)
 
次に現物支給の問題について見ていきます。
通貨以外のもので支払われもので賃金とみなされるためには、法第24条第1項のただし書に定められている「法令若しくは労働協約に別段の定め」があることが絶対的な要件となります。労働協約とは使用者と労働組合が交わした労使協定を指しますので、労働組合が無ければ、また労働組合があっても労働協約を締結していなければ定期券を現物支給したとしても賃金とはみなされないことになってしまいます。ちなみに、法第12条第4項の、「通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない。」と規定されているものは何か見ていくと、これは規則第2条によって、法第24条第1項のただし書に定めるものを指すとされています。

(賃金の支払)
第24条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。