平成17年度社会保険労務士労働基準法問題


【問1−C】正解

[問題解説の主旨]
 ここでは、賃金の全額払いの原則と賃金から組合費の控除の問題が問われています。第120条の罰則の問題は、当然、第27条に基づき労使協定が締結されていれば免責されることになります。しかし、労使協定さえ締結すればあらゆるものが控除できるのかといった問題も考える必要があるといえます。また、会社に損害を与えた場合の賠償金の返済と相殺の問題について見ていきます。

[解説]
 なぜ全額払の原則が設けられている理由について、「賃金の一部を支払い留保することによる労働者の足止めを封ずるとともに、直接払いの原則と相まって、労働の対価を残りなく労働者に帰属させるため、控除を禁止したのである。」と労働基準局は説明しています。実務上、これでは所得税徴収の面などで問題があるため、例外措置として、法令に別段の定めがある場合と労使協定がある場合には賃金から控除しても全額払の原則に違反しないと定めています。しかし、労使協定があれば自由に控除できるのではなく、「購買代金、社宅、寮その他の福利、厚生施設の費用、社内預金、組合費等、事理明白なものについてのみ」労使協定により控除できるとの通達を出しています。会社の貸付金などは福利厚生の一環ですから労使協定があれば控除も可能となりますが、サラ金への返済金を控除して支払ってもらうことなどはこの通達には合致しないものとなるでしょう。
 では、会社の備品等を壊したり業務中に交通事故を発生させ、その損害金を支払う場合、その損害金を賃金と相殺して毎月精算いく場合はどうでしょうか。全額払の原則はこうした相殺の禁止も含むと最高裁は判断を下していますので、使用者からの一方的な相殺行為はできないことになります。しかし、別な判例によれば、労働者の自由意志に基づく申出であれば相殺も可能とされています。
 次に、賃金計算また支給上の事務手続きの簡素化の方法として次のような場合は全額払の原則に違反しないとされています。
  (1) 割増賃金の対象になる時間数の計算において賃金計算期間を合計して、30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げる場合。
  (2) 1時間当たりの割増賃金単価に円未満の端数が生じた場合の、50銭未満切捨て、50銭以上切り上げること。
  (3) 1ヶ月の賃金支払額に100円未満の端数が生じた場合、50円未満を切り捨て、50円以上を切り上げること。
  (4) 1ヶ月の賃金支払額に生じた1000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと。
 控除できる金額については、労働基準法上制限はありませんが、前問でも触れたように民事執行法に基づく場合には賃金の額の四分の三を超えて(上限33万円)控除することはできません。
 最後にチェック・オフの問題ですが、これは次の二つのは判例を挙げておきます。
  (1) チェック・オフは労働組合の団結を維持、強化するものであるが、その組合員自体は賃金の一部を控除されて支払を受けるのであるから、チェック・オフをする場合には労基法第24条1項但書の要件を具備していなければならない。(最高裁平元12.11)
  (2) 使用者が有効なチェック・オフを行うためには、右協定(労働協約)の他に、使用者が個々の組合員から、賃金から控除した組合費相当分を労働組合に支払うことにつき委任を受けることが必要であって、右委任が存在しないときには、使用者は当該組合員の賃金からチェック・オフをすることができない。(最高裁平元7.2.23)