美浜原発蒸気噴出 5遺族 労災申請


美浜原発蒸気噴出 5遺族 労災申請

 11人が死傷した関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)の蒸気噴出事故で死亡した木内計測(本社・大阪市)の社員五人の遺族が、敦賀労働基準監督署に労災認定を申請し、受理されていたことが四日、わかった。同労基署は、遺族補償年金や遺族補償一時金の算定を進めている。
 関係者によると、五人の遺族が先月下旬から今月一日までに、相次いで労災保険の給付を請求。同労基署が遺族から生活状況などの聞き取りをしている。
 また、負傷して入院した社員六人(うち四人退院)も医療給付や休業補償などを求めて労災申請し、すでに給付されているという。 

 (読売新聞 平成16年11月5日)


 労働災害は「絶対に、起こしてはならないし、起きてはならない」ものですが、なかなか防止対策が難しいというのが現状だといえます。単純化してみると、設備や器具等に起因するものと、労働者の不注意によるものに大別できると思います。後者の場合、高所作業で、仕事の邪魔になるとして落下防止措置をとらないような場合は別として、大半が、ちょっとした気の緩みが他の要因とたまたま一致した場合に起きるのではないかと思います。車を運転していて、また、歩行中などにハッとすることがあると思います。たまたま自分も早めに気づいたこともあるし、相手が注意していてくれたことなどから、大事に至っていないのだと思います。そうだからといって事故防止の教育やキャンペ−ンを止めるわけにはいきませんが、最後は、本人がハッとするような気の緩みを起こさないような、これはまず不可能なので、できるだけその回数が少なくなるような工夫またそうした注意を喚起する必要があると思います。つまるところ、睡眠と栄養を十分とり、体調管理に努める以外ないといえます。一方、設備に起因する場合には、結果だけを見れば、防ぎようが無かったとの弁解がよく聞かれますが、はたして、そうでしょうか。それ以前の問題として、この事故のように国のガイドラインを無視し、自分に都合のいいように憶測で安全管理基準をつくっていたのでは、事故が起きて当たり前といえます。

 原因はどうであれ、労働災害が発生すれば会社も困ってしまいますが、一番困るのは、被災した労働者ということになってしまいます。死亡したり、一生寝たきりになったりと障害を一生負っていかなければなりません。家族がいれば、一家そのものが路頭に迷うということにもなりかねませんので、そうしたことのないようにと、国は労災保険法定めて、人を雇用する事業主すべてに加入を義務付けています。

 こうして加入が義務付けられた労災保険給付自体が報道されるということは珍しいことですが、原発での事故であったこと、また、事故原因などからこの事故を風化させないためだろうと思います。第17号に、西社労士さんから、ハインリッヒの法則に関した投稿をいただきました。一件の大事故の背後には、29件の中程度の事故、その先には300件の小さな事故があるというものですが、さらにその向こうには、無数のヒヤリハットの事例があるということになります。事故が起こってしまえば、監督署への対応や原因の究明や再発防止対策と被災者への対応に追われることになります。美浜原発では、操業停止となっていますので、その企業業績への影響は計り知れないものがあります。中小の事業所では労災事故=廃業ということにもなりかねません。当然、先での話しになりますが、責任者の懲罰の問題もでてきます。

 前置きはここまでにして、労災保険の概略を眺めていきます。

 この新聞記事の場合、労災保険の申請(木内計測が加入している労災保険で請求。)は当然のことですが、これとは別に、関西電力の安全管理義務違反に対する損害賠償請求も予測されます。ここでは、労災保険に事業主が加入していたから問題はありませんが、もし加入していなかったとしたら、労災保険法は、労災事故また通勤途上災害に対しての補償責任を事業主に負わせているので全額自腹で補償せざるを得なくなります。たとえ、従業員がいなくても、たまたま雇ったアルバイタ−にこうした事故が発生した場合でも例外ではありません。ちなみに、労災保険料はいくらぐらいかかるのかというと、その事業所が労働者に年間1000万円の賃金を支払った場合、電力供給の事業や小売・事務的な業種の労災保険料率(平成19年度現在)は4.5/1000なので、1000万円×4./1000=45千円(年間)となります。労災事故の多発する業種では労災保険料率は高くなっていきます。最も高い労災保険料率は水力発電施設やずい道等の新設工事の118/1000です。ビルの新築工事では、15/1000、食料品製造業は7.5/1000などとなっています。

 大半の事業所は4.5/1000の労災保険料率に該当するといえますが、小規模な事業所では加入していない例が散見されます。生命保険や損害保険の保険料から見ると微々たる額といえますが、一旦事故が発生すれば、給付される内容はこれらとは比較にならない額が給付されることとなります。給付の内容は、その人の賃金や家族構成等により異なってきますが、目安としてご自分の賃金を参考に以下の計算式に当てはめて考えていただければと思います。

 労災給付の内容の主要なものについてのみ見ていけば、まず、治療費として、療養補償給付が完治するまで全額給付されます。当然、療養のため賃金がもらえないとなれば、休業補償給付特別支給金を合わせて賃金の80%程度が休業4日目(3日分は事業主が負担)から業務に就くことができるようになるまで給付されますし、障害が残れば、障害の程度に応じて障害補償年金障害補償一時金プラス障害等級に応じた障害特別一時金が支給されます。一番重い場合、賃金日額×313日分の年金と342万円の一時金が給付されるということになります。不幸にしてこの事故のように亡くなられた場合には、遺族がいれば遺族補償年金として、遺族の数に応じて、賃金日額×245〜153日の年金と遺族特別支給金として一律に300万円が支給されます。遺族がない場合には、遺族補償一時金として、最高、賃金日額の1000日分と遺族特別支給金として一律に300万円が支給されます。さらに亡くなられれば、葬祭料として最高賃金日額の60日分が支給されますし、ボ−ナスの額に基づいた給付も多少はあります。最後に、障害補償年金の受給者で、重度の障害が残り、介護が必要となれば介護補償給付が一生給付されることになります。

 こうした災害に対する直接的な給付以外にも、障害等級3級以上の受給者または遺族補償年金受給者の子弟が大学以下の学校に通学すれば、労災就学等援護費を請求することもできます。これは前記の労災給付に付属した特別支給金と同じ労働福祉事業の一環として給付されるもので、他には、倒産等により賃金が支払ってもらえない場合などに事業主に代わって国が立て替えて支払ってくれる事業なども行っています。

 こうしたいろいろな事業を行っている労災保険への加入は人を雇用して事業を行うものの義務ではありますが、それ以前の、事業主のマナ−と理解すべきものではないかと思います。