傷病手当金・出産手当金の改正に伴う経過措置

 昨年おこなわれた健康保険法改正の概要について、えくれしあ第44号に掲載しました。そのうち傷病手当金と出産手当金については、4月1日施行となっているため、それらの受給権の発生日が4月1日前か以降かで取り扱いが異なっていますので簡単に説明します。
 平成19年4月からの改正は下表のとおりです。(えくれしあ第44号記事再掲)


(1)傷病手当金・出産手当金の計算方法の変更
 現在、1日あたり標準報酬日額の60%が支給されていますが、この計算方法が、標準報酬日額の3分の2相当額に変更されます。多少給付額が増えることになります。
(2)給付の廃止(任継・喪失後)
@任意継続被保険者に対して
傷病手当金と出産手当金の支給が廃止されます。
A資格喪失後の給付
資格喪失後6ヶ月以内に出産した場合には、出産手当金が支給されていましたが、これが廃止されます。しかし、この場合の出産育児一時金については何も触れられていませんので、出産を機に退職し、夫の扶養に入っていた場合にも退職前の保険者に請求することも出来ます。


 法律の改正が行われ、有無を言わさず施行日から一律に適用してしまえば、それまでに権利を取得していた者はその権利が侵害されることになりますので次のような経過措置がとられています。
(1)任意継続被保険者の傷病手当金の経過措置
厚生労働省が保険者宛に出した法律改正の文書を見ると、「平成19年4月1日の前日において傷病手当金の支給を受けていた者又は受けるべきである任意継続被保険者については、平成19年4月1日以後も傷病手当金を支給することとし、支給事由が生じた後に任意継続被保険者となった者については、その額は、標準報酬日額の3分の2に相当する額とし、支給事由が生じた際に任意継続被保険者であった者については、その額は、標準報酬日額の6割に相当する額とすること。」とされています。

例1 支給事由発生日が強制被保険者中
   支給事由発生日     H19.4.1
      ▼            ▼
   強制被保険者期間  |    任意継続被保険者期間
      |   6割支給    |   3分の2支給

例2 支給事由発生日が任意継続被保険者中
            支給事由発生日     H19.4.1
                 ▼            ▼
 強制被保険者 |  任意継続被保険者期間(この場合4月以降も6割支給となる)

例3 傷病手当金を受給中に資格喪失したとき。(国民健康保険又は家族の被扶養者となったとき)
   支給事由発生日     H19.4.1
      ▼            ▼
   強制被保険者期間  |    資格喪失後国保又は被扶養者となる
         |  全期間6割支給

(2)資格喪失後の出産手当金  前掲の文書では、「資格喪失後6ヶ月以内に出産した者に対する出産手当金の支給を受けている者又は受けるべき者については、平成19年4月1日以後も出産手当金を支給する・・」とされています。前段の支給を受けている者については問題ありませんが、後段の「受けるべき者」とは誰かということになります。この場合も、任意継続被保険者の傷病手当金場合と同じように受給権の発生時点が何時かが問題になります。この場合、3月31日に退職したものは旧法の適用を受けていたのだから、資格喪失後6ヶ月以内に出産すれば資格喪失後の出産手当金がもらえるのではないかと考えてしまいがちですが、出産しない限り受給権が発生しないためこのように考えておられたら少々予定が狂ってしまうことにもなりかねません。

 @3月31日までに出産をしており3月31日までに退職した者の場合(受けている者の場合)
       出産日     退職日       H19.4.1
        ▼       ▼            ▼
   強制被保険者期間  |    資 格 喪 失 後
出産手当金を資格喪失後も受給できる(4月1日以降は2/3支給となる。)


A資格喪失後の出産でも出産手当金が受給できる場合(受けるべき者の場合)
                退職日       H19.4.1   出産日(5月11日又は多胎妊娠は7月6日)
                 ▼            ▼                ▼
   強制被保険者期間  |    資 格 喪 失 後
5月11日(多胎妊娠は7月6日)までの出産であれば受給できる  |  この日以降ではダメ


 3月31日までに出産手当金の受給権が発生する者が「受けるべき者」に該当し、4月1日以降に出産しても出産手当金を受給できることになります。ただし、3月31日までに受給権を発生させるには、遅くとも5月11日(多胎妊娠は7月6日)までに出産しなければいけないことになります。これは出産手当金の支給対象期間が、産前42日産後56日(多胎妊娠は産前98日)でとされているため、5月11日(多胎妊娠は7月6日)に出産すると3月31日が産前42日(多胎妊娠は98日)の初日になるためです。4月1日以降の支給割合は、支給開始日が強制被保険者期間中であれば2/3になり、資格喪失後又は任意継続被保険者期間中であれば6割が継続されます。