中小企業事業主と傷病手当金のことなど


   この4月から医療費の改定が行われ、「診療点数早見表」が4月の終わり届き、読んでいたら、「法人の代表者等に対する健康保険法の適用」として平成15年の通達が掲載されていましたので眺めてみたいと思います。えくれしあ第33号の労災保険の特別加入の最後でも少し触れています。
 まず、事業主といっても個人経営の事業主もいれば有限会社等の法人の事業主もいます。この資格の違いによって社会保険(健康保険と厚生年金保険)や労働保険(労災保険と雇用保険)の扱いが大きく違っていますので、次の表を参考にしてください。


社会保険
労働保険
労災事故
従業員に対して
個人事業主
加入不可
国民健康保険で治療可
社会保険は5人以上から義務
労働保険は1人から義務
法人の事業主
加入義務有
加入不可
自己負担
1人から義務
※労災保険については、個人・法人ともに特別加入することにより労災事故の保険給付が受けられる。

   この表を見ていただくとお分かりのように、社会保険と労働保険では扱いが違っています。その理由は、有限会社等の法人は、法務局に登記することによって有限会社○○を一人の人間とみなします。したがって事業主はその会社のオ−ナ−であると同時に従業員とみなされるからです。一方、労働保険では考え方が少し違い、従業員と同じような仕事しているかどうかということが問われてきますので、その辺りの判断で適用の可否が決まります。(注1)
 次に、今回のテ−マである労災事故の場合ですが、国民健康保険と健康保険での保険給付の対象が違うことからこの違いがでてきています。国民健康保険法は「国民健康保険は、被保険者の疾病、負傷、出産又は死亡に関して必要な保険給付を行うものとする。」となっているのに対し、健康保険法は「労働者の業務外の事由による疾病、負傷若しくは死亡又は出産」となっています。要するに、個人事業主には原則労災保険の適用が無いので健康保険で面倒を見ましょうということですが、健康保険では、事業主は労働者と同じ仕事をしないのだから労災事故は発生しないとの考え方にたっているといえます。しかし、小規模事業主は労働者と同じ労働に従事している人が沢山いますので、そうした人は特別加入することで救われますが、それもしていないとなれば上記の表のように自己負担ということになります。この点の救済措置が平成15年の通達ということになります。
 しかし、この通達を見ると「(健康保険の)被保険者が5人未満の適用事業所に所属する法人の代表者であって、一般の従業員と著しく異ならないような労務に従事している者については、その者の業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病に関しても、健康保険による給付の対象とする。」となっており、全ての法人事業主が対象になっているのではなく従業員が5人未満の事業主しか対象になっていません。さらに続けて、労災保険に特別加入していれば労災保険への保険請求を指導するとされています。また、傷病手当金についても触れており、「業務遂行上の過程において業務に起因して生じた傷病については、法人の代表者等は、事業経営につき責任を負い、自らの報酬を決定すべき立場にあり、業務上の傷病について報酬の減額等を受けるべき立場にないことから、法第108条第1項の趣旨にかんがみ、傷病手当金を支給しない。」とされています。法第108条第1項は、療養中に報酬を受け取ることができる場合には支給しないとしている条文ですから、事業主であっても報酬が支給されないことが証明されれば傷病手当金を支給すべきではないかとの疑問が残りますが・・。

(注1)
従業員と同じような仕事をしていれば、労災保険には、事業主も役員も特別加入ができますが、雇用保険は事業主には適用されませんが役員については適用されます。役員として採用または登用した場合には該当するか否かの確認書をハロ−ワ−クに提出する必要があります。中小企業で役員を解雇した場合にこの辺りのことでトラブルが発生することがよくあります。