パ−トへの厚生年金適用をめぐって


   厚生年金 パ−ト週20時間で加入  政府方針 格差是正へ基準改正  政府は13日、厚生年金への加入が義務付けられるパ−ト労働者の範囲を大幅に拡大する方針を固めた。労働時間が「おおむね週30時間以上」の労働者を加入させている基準を、「週20時間以上」に広げる案を軸に検討する。パ−ト労働者の不安定な労働環境を改善するのが狙いだ。「再チャレンジ推進会議」(議長・阿部官房長官)が5月中にまとめる中間報告に盛り込み、2009年をめどに実施を目指す。(読売新聞H18.5.14)


   新聞記事では、これの後に本文が続いており、この背景説明として、「政府は、賃金や年金保険料の負担を避けたい企業が正規社員の雇用を抑制し、パ−トを増やすケ−スがここ数年、目立っていることを問題視している。厚生労働省の調査では現在、正規社員が約3100万人であるのに対し、パ−トは約1000万人に上っている。」ことをあげています。さらに、これと同時に、国民年金の第3号被保険者(社会保険法上の被扶養配偶者)の年間収入要件を130万円から、65万円に引き下げることも検討する方針と報道されています。

 建前論から云えば、厚生年金の適用範囲が広がることはいいことだと云えますが、家計の補助収入を目的としたパ−トタイマ−にとっては迷惑な話でしょう。また経費の削減のため正職員を配置せずパ−トタイマ−に依存している事業所にとっては大きな費用負担が発生することになり、新たに経費のかからない雇用体制を検討せざるを得なくなります。こうした悩みはまじめな事業主さんについてだけといってしまえば怒られるかもしれませんが、現実には、社会保険また労働保険に加入しなければならないにもかかわらず、加入していない事業所が沢山ありますし、諸般の事情により手取り収入を増やしたいという本人からの希望で社会保険・労働保険に加入手続きをとっていないケ−スも少なからずあります。年金保険料収入を増やすのが目的であれば、まずこの問題を解決したうえでないとなかなか理解を得られないのではないでしょうか。

 この制度導入でどの程度の保険料負担が発生するかを、時間単価850円、1日4.5時間、週5日勤務(月22日)で月の収入が84,150円(年収1,009,800円)のパ−トタイマ−の場合で検討してみます。まず、厚生年金保険料が7,001円、そしてこの記事では触れられていませんが、当然、健康保険も同様の扱いになると考えられますので、健康保険料が4,018円(40歳以上の人は介護保険料として602円増)の合計11,019円(11,621円)の負担が増えることになります。ただ、独身者で親の健康保険の被扶養者に該当する人は、1ヶ月の国民年金保険料が13,860円ですから、差引2,841円収入が増えることになるともいえます。さらにいい面をみると健康保険に加入できることで傷病手当金また出産手当金を受給できると云うこともありますので、目先の損得勘定だけで判断するかもう少し広い視野で見ていくか、それとも自分の置かれている状況から判断するかでこの制度導入の良否の判断が分かれるのではないでしょうか。しかし、裏を返せばこれと同額の保険料を事業主さんも負担しなければならないことになります。同じ条件のパ−トタイマ−が10人いれば1ヶ月あたり約11万円の負担増となり、制度改正がなければ約1.5人のパ−トタイマ−を採用することが出来ることにもなります。

 この制度導入には、もう一つ、年金を受給しているパ−トタイマ−にとっても大きな問題があります。60歳で退職し、のんびりパ−ト仕事をしている人にとっては、老齢厚生年金の一部が支給停止になってしまい、労働意欲がそがれるということにもなりかねません。前記の例で、月15万円の老齢厚生年金をもらっている人であれば3万円の年金がカットされることになりますので年金受給者にとっては歓迎されない制度導入といえるのではないでしょうか。