残業代未払いの申告と雇用保険の資格確認



 私たちは生きるために何らかの形で生活をまかなう必要があります。働かないで生活できる人も一部にはいるかもしれませんが、私たちには、働いて、賃金を得て家族を養い、子とも達が社会生活を送ることができるように育てていく必要があります。大企業に就職したり公務員になれば定年までまず勤めることができ、その後の生活に必要なものも得ることができるでしょう。しかしそうした人たちの割合は必ずしも多いとは言えないでしょうし、大企業であっても安定しているといえない状況が近年随所に見られます。派遣で働く人たち、契約社員として働く人たちの割合が大きく増加し、ワーキングプアという言葉まで生まれてきているように、自社の社員として抱えるよりはこうした賃金の安い労働力を雇用することによって利益を確保し、世界との競争に負けないために考え出された仕組みの犠牲者がこれらの人たちといえます。こうした仕組みがいいのか悪いのかの議論と並行して、雇用のミスマッチが増加しています。求人は沢山あってもそれに応募しない失業者が多くいるという現象です。私たちの生活環境が豊かになったことに原因があるのかもしれません。その結果、安い労働力が外国から導入されています。ブラジルやフィリピンなどの日系人がそうですし、技能実習生制度で来日する人たちも実質は安い労働力として導入されていることはすべての人が暗黙の裡に認めていることではないでしょうか。
 日本人であっても、外国人であっても労働者である以上日本の労働関係の法律が適用されることになります。労働条件を定めた労働基準法、団結権を認めた労働組合法、業務上や通勤災害のときの労災保険法また失業したときの給付が受けられる雇用保険法などがあります。技能実習生はある意味で一定の制度に基づいて来日するため社会保険労働保険の面ではまず確実に加入して保護を受けているといえます。しかしワーキングプアを始め技能実習生を除いた外国人労働者の場合、社会保険や労働保険の加入については無視されている例が非常に多いといえます。特に、日系外国人が一番ひどい扱いを受けているのではないかと考えています。今回取り上げた残業代未払の申告と雇用保険の資格確認は最近日系フィリピン人労働者で行いました。外国人は当然のこととして、残業代や賃金の未払いまた労働時間や雇用保険加入の問題などについてどうすればよいか悩みながらも法律に疎かったり相談するところがわからないままあきらめられているのが現実ではないでしょうか。労働基準監督署に相談に行っても問題点を自分が理解し一定の証拠を持参しなければ対応はしてもらえずあきらめてしまうケースもあるでしょう。ユニオンなどの存在に気づいても敬遠する人も少なくはないでしょう。ましてや社会保険労務士に相談するという選択肢は全く思い浮かばないのではないでしょうか。簡単にそれぞれの法律がどのようになっているか簡単に紹介します。
【残業代の未払い】

第104条 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、
 労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。

 上記の条文によって労働基準法違反があれば労働者はそうした事実について労働基準監督署に申告して会社に対して法律を守るよう指導してもらうことができると定めています。この法律ではこのことを「申告」という呼び方をしています。当然、労働基準法に違反する問題ですから労働契約や就業規則がどのように定められているか、またそれらにどのように違反しているのか証拠を提示して立証できなければいくら申告しても問題が解決することはないので、残業代の問題であれば少なくとも毎月の賃金支給明細書とタイムカードなり日々の稼働の記録から未払残業代が計算できる資料を整えておくか、できれば実際に計算して未払い額がいくらあるか計算していくのがいいといえます。こうした条件が整えば、「使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。」と定められている第104条の2に従って労働基準監督署は会社に対して指導することになります。今回は、労働基準監督署に4月6日に申告し、翌日には11日に資料を揃えて出頭するよう命令を発しています。出頭すると5月末日までに未払額の計算を命じたようですが2年間遡って十数名の計算をするのに時間が足りないとの会社側の要望を入れて遅くとも6月末までとなりました。この2年間の遡りとは労働基準法が第115条で時効を2年間(退職金は5年間)と定めていることによります。
【雇用保険の資格確認】
 賃金から雇用保険料や社会保険料を引かれているが、確実に加入しているのか疑問に思う人もいるでしょうし、実際加入させていないとの事例もあります。会社の労働者への扱いに問題があれば当然のことでしょう。技能実習生でこのあたりのことが不安になり社会保険事務所とハローワークに一緒に行って確認したこともありました。今回は十数名中の数名の委任状と全員の入社日等をまとめた名簿と委任状を持参した者の当初の賃金支給表を持参しただけで全員への加入指導を行ってもらおうと考えていたら全員の委任状と採用された時からの賃金支給明細書全ての提示を求められ、改めて全員の委任状と賃金支給明細書を集めてもらって資格の確認にいきました。賃金明細書とタイムカードの写しを含めると400枚を超えますが、後日の証拠としてすべてコピーが必要とのことで一式置いて帰りましたが、こちらも対応は早く翌日には会社に出頭命令を発しています。以前グッドウィルの派遣労働者の場合もそうでしたが資料さえ整えておけば迅速な対応をしてもらえます。この資格確認は、雇用保険法の第8条に確認の請求として「被保険者又は被保険者であつた者は、いつでも、次条の規定による確認を請求することができる。」と定められています。時効は労働基準法と同じ2年となっています。
 この手続きの流れは、「雇用保険の被保険者となったこと(なくなったこと)の確認請求(聴取)書」に確認の内容を記載し、本人の住所、氏名、生年月日、電話番号を記載します。この内容に基づいて聴取が行われ、聴取が完了した後、この用紙の下の方に聴取担当官の氏名、その下に「上記の聴取書を読み聞かせられたところ、私の陳述と相違ない。」の欄に署名(代理人として私が署名)して完了となりました。
 残業代の問題にしても雇用保険の資格確認にしても申し出た本人以外のものは対象にならないところに問題があります。確実に会社が適正な処理をしていないことが分かっていても全員に対する指導はなされません。派遣会社の場合、労働局に申し出たら立ち入り検査も可能との話を聞いたので次回からはその方向で対応しようと考えています。