外国人労働問題用語集


 外国人労働者の労働問題といっても適用される法律は日本人と同じですから、外国人だからといって特別意識する必要はありませんが、外国人や会社などが使用している言葉の意味する内容が私達の通常理解している内容とは異なっていたり、全く別の内容を意味する隠語のようなものであったりします。法律的な言葉の解釈、要するに常識的な考え方をしていたら問題を見過ごしてしまうこともあるし、まったく違った方向に向かって解決を図っていたということが出てきます。外国人の労働問題など普通では関係を持つことも無い世界の話、本の中の世界の話が、目の前に出てくると「面白そう」との興味が先に立って将に人の不幸を楽しんでいるようなところがあります。話しを聞いていると笑い話として笑ってしまうこともあります。笑い話のような観点から外国人の労働問題に出てくる用語をみていきます。ただ、笑い話では済まない世界が広く社会に蔓延し、泣いている人たちが多数いるという現実を見ているとマザーテレサの言葉、「愛の反対は憎しみではない。愛の反対は無関心である。」という言葉が浮かんできます。しばし人の不幸に関心をもち、楽しんでください。
【技能実習生】
 表向きは、発展途上国に先進技術を移転するとの理念のもとに外国から日本に来て技術の習得をしている人たちを指します。しかし、本人達にとってその意識は皆無で、「出稼ぎ」や「お金を稼ぐため」と割り切っています。こうした意識と、受入機関の「安定した人材の確保」のうたい文句によって現代の奴隷制度の中に組み込まれた人たちのことを指す言葉といえます。
 アメリカの黒人奴隷は暴力に苛まれながらも天国への憧れを生きがいとしていました。「聖者の行進」はまさにそうした代表的な歌でした。技能実習生の大半も常に恐怖感を抱いて生活しており、妊娠出産の自由も認められず、母国で保証金を取られていたり、ユニオンへの加盟や未払い賃金の請求などすれば保証金を没収される恐怖に曝されています。労働契約に従って正当な要求などすれば、母国の送り出し機関や家族から電話が直ぐにかかってきます。また、当然のことですが3年間決められた職種でした働くことが出来ず、職業選択の自由は認められていません。
 一方では、コンプライアンスを遵守する会社に籍を置いている技能実習生たちは、年休を使用してクリスマス休暇で帰国したり、ジャンボタクシーを雇ってスキーに行ったりと日本での生活を楽しんでいます。
【日系人】
 かって外国で日本人が現地の人たちに生ませた子孫達で、第2世代から第3世代辺りが中心となって出稼ぎに来ています。在留資格は定住者で労働するための制限はありませんし、移動の自由もあります。日本に来るときは、技能実習生たちと同様のシステムで来日するようですが、こちらは技能実習生たちのように一定の制度の下に保護されてはいないためさらにひどい状況で働かされています。移動が自由であるため派遣会社や個人的なネットワークで職場を移動しています。日本人が働かないような職場や地域が多いようですが、自分の持っているネットワーク次第で仕事も地域も決まってくるようです。
 会社に言わせると、大声で騒いで近隣に迷惑をかける、賃金が高ければ直ぐそっちに移動する、よく帰国する、帰国したときの家賃を値切る、何時の間にか親や子供たちを呼んだり、知らない人がアパートに一緒に住んでいるなどと批判される存在です。しかし日系人達に話を聞いてみると生活習慣の違いからの無理解もあったりしますが、日本で生活する上で守らなければならないこと、健康保険、年金、住民税等全く指導していないことからのトラブルが発生したり、当然、ひどい労働条件であったり、賃金を家賃や什器備品のリース料などとして回収されている状況が浮かび上がってきます。辺鄙な場所で働いているケースが多く技能実習生問題ほど意識されていない現状があります。
【受入機関】
 技能実習生たちを受け入れ、傘下の企業に送り込む機関のことでアメイジング・グレイスの作者と同じで法律によって認められた現代の奴隷商人といえば言いすぎですが、かなりな程度でそう言わざるを得ないところがあります。○○協同組合と名のっているものが多く、一部では同業者組合が受入機関になっている場合もあります。送り込んだ企業から一人当たり月3万円前後を日本にいる間に受け取ります。その一部が、外国の送り出し機関の取り分のようです。技能実習生にとって日本での生活はこの機関の良し悪しで左右されてしまいます。技能実習生たちは日本の法律や契約内容などかなり理解していますが、問題を提起したり、従順さを疑われれば帰国させられるとの恐怖心から「沈黙は金」を実行しています。一部の会社で行われている暴力や暴言は無視したり、残業代は支払わないでよいなどと指導しているところもあります。「問題を起こせば他の技能実習生たちも帰国させられる。教会に行ってはいけない。○○を知っているか。」などが脅し文句で、問題提起させないため努力している機関です。  幾つかの事例で送出機関と受入機関は表裏一体の関係にあることがわかりました。全てがそうなのかは不明です。
【派遣会社】
 前項の受入機関のことをフィリピン人たちは派遣会社と呼んでいます。しかし、フィリピンからくる日系人達はフィリピンの送出し機関を通じて日本の派遣会社から各会社に派遣されて働いています。しかし労働条件が悪いことから、友人等を通して他の派遣会社なり、他の会社に就職することになります。まだ2件しか遭遇したことはありませんが、労働環境は同じとしても、労働条件は技能実習生以下としか言いようがありません。技能実習生のように入国管理局やJITTCOが管理していないことによります。
 何年も派遣で働いているのに、社会保険や雇用保険にも加入させておらず、仕事中の事故は会社負担で治療していますが、大きな事故ならどのようにするのでしょうか。1年ないし3年以上同じ会社で働いておれば直接雇用の問題が出てきますがなかなか難しい問題を持っているのが派遣会社といえます。派遣で働く日系人の問題が出てこないのは辺鄙な場所で働いていることからかもしれません。
【社会保険と労働保険】
 技能実習生では加入についての問題はありませんが、日系人の場合、「これらに加入すると手取りの賃金が数万円少なくなるがどうするか。」と問われれば当然加入しないとなる制度のことを指しています。普段はお医者さんに100%負担で医療費を支払っていますが、大きな傷病が発生し、国民健康保険に加入すると2年間遡って保険料を請求されるという悲劇が発生しています。
 技能実習生たちにとっては全く理不尽な制度といえます。3年間の滞在に限定されているのに何故年金に加入しなければいけないのか。また雇用保険にしても技能の習得のためにきているのなら失業というリスクは無いはずです。どうも理解できない制度ですが、時々、失業手当をもらっている技能実習生がいます。会社が左前になって解雇されたり、不当に帰国させられようとした場合で、ビザで認められた残りの期間日本にいることを希望したり、裁判に入った場合です。倒産するような会社で技能習得が図れるのか疑問ですが、数名の零細企業が人件費減らしのため技能実習生を受け入れている例によく遭遇します。
 また、技能実習生が帰国すれば厚生年金脱退一時金を受け取ることが出来ますが、一部の送出機関では厚生年金脱退一時金の手続きを代行することよって利益を上げる制度でもあります。
【強制帰国】
 入管法違反で帰国させられることを強制送還といい、これとは全く違い受入機関にとって都合が悪くなった場合、火の粉を振り払う目的で本人の意思に反して帰国させることを意味しています。労災じこで負傷した場合、技能実習生の会社が倒産した場合、また何らかのトラブルを惹き起こした場合などがあります。この強制帰国を防ぐため、日本の警察が守ってくれるので派出所に行くか、コンビニからでも警察に連絡を取ってもらう、飛行場の入管ゲートで警察を呼んでもらう、当然私達に電話してくることなどを事前に説明しておく必要があります。
【残業】
 昨年7月から法律改正により研修生期間が短縮され、1ヶ月か2ヶ月で技能実習生となり労働者扱いとなるので研修生と残業の問題はなくなるでしょうが、これ以前からいた人たちにとっては研修生時代の残業代の問題がまだ残っています。研修生に残業をさせることは出来ないにもかかわらず、常に問題として出てくる責任はどこにあるのでしょうか。受け入れ機関に言わせると、「本人達が残業をやらせてくれ」といってくるからといっています。研修生たちに聞くと、「残業をやりますか。」と問われるから、「お願いします。」という流れになります。300円か500円程度で働かされるのはまだいい方で、全く支払われていないこともあります。さらに技能実習生になってからも残業代は一切支払わない。私達のところに相談に来ると取り下げるまで脅しにかかるところさえあります。取り下げさせた結果、多少でも残業代を支払えばいいのですが、支払うことも無く済ませ、数ヵ月後には帰国してしまったケースもありました。
 日本人の場合でも同様ですが、残業や休日出勤についてはタイムカードがあればそれのコピーを手に入れたり、それが出来なければノートに始業時間と終了時間を1分単位で記録して自己防衛する必要があります。
【変形労働時間制】
 この制度本来の目的は、1年間や1ヶ月といった一定の期間の労働時間を平均して1週40時間におさまればよしとするもので、休日を増加させることを目的としています。しかし、この制度を盾に技能実習生たちを日曜日しか休ませず、日々3時間から4時間の残業をさせながら残業代の支払いを軽減させる方便として利用する制度といえます。当然、全く嘘の会社カレンダーと労使協定を労働基準監督署に提出しており、堂々と交渉の場に持ってきた社労士さんもいました。要するに、土曜日の所定労働時間を賃金を支払わず働かせる制度として機能しています。
【契約書】
 日本人には、労働条件通知書という名称の方がピンと来ますが、これのみをみれば何の問題もありませんが、現実はこれと全く異なる労働条件で働かせるための二枚舌の幽霊です。以前日系人の場合ですが、来日する前にもらっていた労働条件通知書を示して全く違う条件で働かされているというと、そんなものはみたことがないといわれてしまいました。その会社の社印がはっきり押されているのに・・。
 また、ある会社では技能実習生の契約書には1時間の単価が産業別の最低賃金で記載されているのに、契約書を渡しておらず一般の最低賃金で支払っていたケースもありました。鳥のサギなら真っ白できれいなのですが・・。
【家賃】
 支払った賃金を合法的に回収するための勘定科目です。劣悪な建物でびっくりするような家賃を取られています。10畳ほどの部屋に5人程度入れられ一人2万円の家賃、真冬に黒瀬町で暖房は使わせてもらえず会社から持ち帰ったお湯をペットボトルに入れて湯たんぽにして暖をとったりと動物園の方が待遇がはるかにいい生活環境といえます。日本人が働きに来ないような職場の人材確保であるのならば、住むところぐらい無料で提供してもいいのではないかと思ってしまいます。
 また、敷金名目で毎月5,000円を徴収していたケースもありました。
【教会】
 フィリピン人の大半がカトリックで、プロテスタントも多少いますが、教会に行ってはいけないと受け入れ機関から言われたと聞きます。かって洗礼に向けて勉強していたとき神父さまから教会は悪魔が集まるところといわれました。悪魔は神に対立する存在だから教会に攻撃を仕掛けるためでしょう。確かに悪魔のササヤキを聞いて帰れば職場環境を悪くするのは当然といえますので教会は悪魔の巣窟で問題は無いかもしれません。私はイエスを売ったユダに心を引かれるところもあり、薬も匙加減一つで毒にも薬にもなるので教会とはそのようなところといえます。
 フィリピン人以外は教会のように定期的に集まる場がないため相談するところもないことを考えればフィリピン人は幸せなのかもしれません。ただ、受入機関や会社に対する恐怖心を取り去る機能や問題を救い上げ救済する機能の持ち合わせは無く、「いと小さき者のために・・」とお題目を唱える機関であり、下手に関わりあえば自分の自由を奪われると考える組織かもしれません。
【所得税・扶養控除】
 表立ってトラブルの要因にはならないのは技能実習生たちが全くこの問題を理解していないためですし、悪く言えば日本人には配慮しても外国人に対してどのようにすればいいのか知識が無いためと言えます。しかし技能実習生の立場から見れば、収入に関わる大きな問題です。中国人の場合には租税条約の関係から所得税は課税されないので問題はありませんが、フィリピン人の場合この条約が結ばれていないため日本人同様に課税されます。当然扶養控除申告書を会社に提出すれば扶養人数に応じて所得税が計算されるのに、この手続きが取られているケースはほとんど無いのではないでしょうか。全員がフィリピンに収入の大半を送金して家族を養っているためフィリピンで住んでいる地域のバランガイから扶養証明書を取り寄せ、送金の事実を証明する書類を揃えれば扶養控除を受けることができます。3名以上扶養しておればまず所得税は課税されないはずですし、収入が多くても大きな減税効果が期待できます。
 扶養控除の扱いがなされていなければ、確定申告で清算すればいいでしょうし、帰国するときでも納税代理人(法人でも可)を選定して確定申告すれば所得税が清算されます。
 それ以前に年末調整さえされていないケースも見かけます。
【市民税】
 帰国の時まとめて請求されると何度か聞かされたことがあります。本人達が市役所に抗議に行き、ある市役所では、「支払わないでも良い。」といわれたというし、別な市役所では「絶対に支払ってもらわなければいけない。」の一点張りだったとも聞きます。広島市役所に電話したところ「帰国先まで請求することはないので、支払わないでも良いといわれたのでは」とのことでした。
 この問題が発生するケースには二つあります。一つは、会社が源泉徴収票を市役所に提出するとき、毎月の賃金から会社が徴収して支払う「特別徴収」とすべきところを本人が直接支払う「普通徴収」で報告しているためです。あと一つは、市民税は、前年分の所得に対して6月から翌年の5月までの間で支払うため、帰国時期によって未払額を徴収されるためです。この場合、1月から5月までの退職であれば一括徴収が義務付けられていますが、6月から12月までの間であれば本人が自分で支払う「普通徴収」を選ぶことも出来ますので、この方法で会社が異動報告書を提出すれば後は本人のコンプライアンスの問題となります。ただ、今まで問題となったのは、普通徴収で2年分取られるというものでした。