技能実習生は暴力の対象?


 9月14日付の中国新聞に、会社役員からの暴力に耐えきれず福山ユニオンたんぽぽに助けを求めてきたベトナム人技能実習生の記事が、足か腕に痣のある写真とともに掲載されていました。技能実習生問題を考えるとき、こうした暴力・パワハラが日常的に行われていることや労災事故も少なくないことを忘れるわけにはいきません。こうした問題をかかえたまま泣きながら帰国する技能実習生達は、相談先が分からない、恐怖感からまた会社等の甘言に騙されて帰国していると考えられます。
 3年ほど前の話になりますが、パワハラや残業代の問題で相談に来た技能実習生が交渉日の前日に協同組合から深夜まで難詰され、交渉当日協同組合に連れてこられて、相談を取り下げたことがありました。この1年後、この技能実習生は、社長から金づちで頭を殴られて負傷し、50万円払うから帰国するように言われて帰国したとの話を聞きました。実際に50万円を貰ったかどうかは不明です。
 1年ほど前には、呉市の造船会社の下請けで働く技能実習生が仕事中、班長に首を絞められ失神させられ警察に届けたこともありました。この班長の下で技能実習生達は今も恐怖感を持ちながら我慢していますが、日本人は次から次にと辞めていくと話をしてくれました。この7月には「背中に携帯電話を投げつけられた技能実習生がいるがどうしたらいいか」との相談が3つのルートから入ってきました。相談を受けると、今回は、この班長の息子が加害者であり、班長自身も相変わらずパワハラが絶えないため、今回は、この事件を切っ掛けとして被害者だけでなくその会社の技能実習生6名全員が相談に来ました。1年ほど前には、この会社の技能実習生1名が残業代の問題で相談に来ています。その時は、班長のパワハラがひどいという話もあり、聞いているうちに先の首を絞めた班長と同一人物だったことが分かりましたが、特別危害を加えられていないため会社に注意を促すだけでした。残業問題については清算され、これ以降是正されました。他の実習生は恐怖感から相談に来ることがなかったため、彼ひとりが帰国まで残業をやらせてもらえないなどの差別を受けることになりました。彼が、残業代問題で相談に来た理由の一つに、これからくる後輩たちに同じ思いをさせたくないという気持ちがあったためでした。全員が来てくれていれば彼ひとり苦しむことは無かったと残念な思いを拭い去ることはできません。しかし今回は、その時、相談に来なかった技能実習生も含めて相談に来たため交渉も進めやすい状況になっています。
 こうした相談に来る外国人労働者を通じて日本を代表する造船所というイメージからは想像できない現場の実態を聞くことが出来ます。例えば、労働者を束ねる口入屋的な人がおり、労働者として採用するのでなく個人請負として扱われています。当然、社会保険も労災保険も無いという状況です。こうした話をしてくれたブラジル人は寝ずに仕事をし、1か月の給料が70万円あったこともあると話してくれました。当然こうした人たちが技能実習生を支配している構図も見え隠れしています。パワハラ班長は技能実習生達を受け入れている会社とは全く別な会社の社長なのですが、技能実習生を受け入れている会社の下請けなのか、それとも数社の労働者を束ねている存在なのかそのあたりがよく分かりません。技能実習生制度として見ると問題のある形態だと思います。この会社で現在交渉中の問題の一つに年次有給休暇の計画的使用と言うものがあります。これは年次有給休暇の5日を越える部分については労使協定で事前に時季を指定することが出来る制度です。造船所のカレンダーでは6日分がこの計画的使用に該当するものとされていますが、技能実習生を受け入れている下請ではその意味を理解していないのか、無視しているのか分かりませんが、無休の休日として処理しています。年次有給休暇として処理されて賃金が支払われている会社もあると技能実習生達は話しています。労働条件通知書には計画的使用との記載はありませんし、別途カレンダーを渡すとの記載もありません。土曜日、日曜日と祝日は休日と明記されているのにカレンダーには土曜日出勤の日があったり、祝日に出勤の日があったりとチグハグです。ただこの問題は、この造船所に送り込んでいる協同組合傘下の事業所にも共通した問題だと考えられるため100名を超える技能実習生が知らずに同じような損害を被っていると推測しています。
 トラブルが起こらなければ問題ないとしても一旦トラブルが発生すれば労働条件通知書に従って考えなければならないはずなのですが、会社にはそのあたりの認識が欠如していえます。この辺りには二つの問題が考えられます。一つは、第一次受入機関の協同組合が造船所の実態を知らないまま画一的な労働条件通知書を作成しているのではないかと考えられることです。造船所にはカレンダーがあり、下請け会社は当然そのカレンダーと会社の就業規則に沿った労働条件通知書を作成しなければいけませんが、会社の話を聞いていると協同組合が勝手に作成しており、カレンダーと労働条件通知書の齟齬には気づいていてもそのまま放置していると思われます。在留資格取得のためだけの存在としてしか受入機関側には理解されていないと思わざるを得ません。ただ、この協同組合はこの造船所構内に事務所をかまえており、造船所と資本的なまた人的な?がりがあるとすれば造船所のカレンダー等に沿った適正な労働条件通知書の作成また指導を行ってもらいたいものです。
 次に言葉の問題があります。技能実習生達はどうにか日常会話はできたとしても少し難しい内容は日本語で説明されても理解できません。分からず何度も質問すると怒られるため、「分かった。」と言ってその場を取り繕います。私たちが日本語の上手なフィリピン人の通訳を通じて時間をかけて話を聞いてやり取りしても肝心なところが通じていないと感じることも少なくありません。会社に通訳はいても必ずしも日本語が上手ではないし、技能実習生が相談しても会社側の肩を持つため不信感を持っている技能実習生が大半といえます。こうした状況を会社が理解していなければ、会社がいくら努力してもお互いの不信感が増すばかりで、トラブルにつながることが少なくないといえます。