4月から通勤災害の認定範囲が拡大されます。

 

   労災保険については、第32号及び第33号で労災保険未加入の場合のペナルテイ−のこと、そして事業主さん等の特別加入について掲載しました。今回は、4月1日から通勤災害の適用範囲が拡大されましたのでそのあたりのことについて触れてみたいと思います。
 労災保険は、アルバイトを一人でも雇用すれば当然に加入が義務付けられることになります。その人が業務上の災害に遭えば当然事業主がその治療費、休業補償や後遺症が残ればその補償をしなければなりません。そのための保険が労災保険ということになります。労災保険が対象としているのは、業務中の災害だけでなく通勤また退勤時の事故も対象としています。もし、労災保険に加入していなければ当然事業主が負担することになります。健康保険組合の仕事をしているとき、学生アルバイトの労災事故で健康保険で治療している例がありました。保険者では、レセプト(診療報酬明細書)が来ると、怪我のレセプト等第三者傷害に該当するレセプトが無いか一枚一枚点検します。その中で見つかった怪我のレセプトに対してその原因を被保険者に照会したところ、子供さんの夏休中の建設現場でアルバイト中の怪我と判明しました。当然、労災保険の対象となるため、労災保険に切り替えてもらう旨指示したところ、労災保険を使わず事業主が全額負担するので請求してもらいたいという回答が帰ってきたことがありました。こうした隠れた労災事故の中でも、通勤時・退勤時の交通事故は意外と多いのではないでしょうか。交通事故ですから自賠責保険・任意保険での治療と短絡し、労災事故と認識されないことになりかねません。しかし、コンビニや居酒屋などでアルバイトをしている学生が帰りにバイクでスリップして転倒した場合には、相手がいないため当然事業主が負担せざるを得なくなります。健康保険で治療すれば先のように保険者からのチェックが入り、事業主が医療費を負担しないとなれば、保険者は労働基準監督署に申告する旨被保険者に指示することになり、労災保険未加入のペナルティ−と労災隠しのペナルティ−を問われることになってしまいます。
 前置きが長くなりましたが、労災保険で通勤災害は次のように定められています。(4月改正前)


  第7条 この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
 1. 略
 2.労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付
 3. 略
2 前項第2号の通勤とは、労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。
3 労働者が、前項の往復の経路を逸脱し、又は同項の往復を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項の往復は、第1項第2号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。


 ここに見られるように疾病も対象になっています。オオムの地下鉄サリン事件の被害者のうち通勤・退勤中の人は労災保険の対象になりますし、精神的後遺障害があれば当然これも対象になります。
 次に、通勤経路についてですが、この部分については、会社に提出した通勤手当の支給申請書に記載された方法また経路しか対象にならないと誤解されている方が多いように思います。「合理的な経路及び方法」とは、自宅から会社に行くまでには当然いくつかの通勤経路があるといえます。また、車で通勤する場合には家族を送迎するため迂回することも当然ありますので極端な迂回で無い限り合理的な経路と認められますし、その日の気分で、車で通勤したり、交通機関を利用したり、自転車で通勤することもあります。そうすればこれら全ての方法は合理的な方法として判断されます。ただ、泥酔して車で通勤するような行為(ほろ酔いはいいみたいです)また危険な行為は合理的な方法とは認められませんので、宮島の桟橋から宮島口の桟橋まで泳いで通勤する場合、当然、合理的な経路とはなるでしょうが、果たして合理的な方法と判断されるかどうかとなれば・・危険性も高いため認められないのではないでしょうか・・・。
 今回の改正は、第2項の中の、「住居と就業の場所との間」が同項第1号として独立し、第2号に「・・就業の場所から他の就業の場所への移動」、第3号に「第1号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(・・)」が追加されました。要するに、複数の勤務をしている場合、会社から会社へ移動する間の事故と単身赴任の場合、自宅から赴任先の住居までの移動が通勤災害として認められることになりました。
 この改正を先取りした形の判決が名古屋高裁でなされていますので、参考までにその記事を掲載しておきます。通勤災害の認定は第3項の経路の逸脱と中断も含めて簡単に判断できない面がありますので、次回、通達等を紹介したいと思います。



週末帰任は「通勤」 労基署の不支給取り消す
単身赴任で名古屋高裁

 共同通信によると、日曜日に単身赴任先へ移動中の男性=当時(41)=が事故死したのは通勤災害として、岐阜県土岐市の妻(46)が遺族給付などを不支給とした高山労働基準監督署の処分を取り消すよう求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁の青山邦夫裁判長は 15 日、「(単身赴任者の)週末帰宅型の通勤」として、請求を認めた一審判決を支持、労基署側の控訴を棄却した。
 遺族給付を定めた労災補償保険法は4月に改正法が施行され、自宅から単身赴任先に戻る途中の事故も通勤災害と認められる。今回の判決は一審岐阜地裁と同様、法改正を先取りした形で、妻の弁護士は「二審も同様に通勤災害を認めたのは初めて」としている。
 青山裁判長は判決で、通勤とは「住居と就業の場所の間を合理的な経路と方法で往復すること」などと指摘。
 男性が都合の良い列車がないため、自家用車で約3時間半かけて日曜日に移動した点を「健康と安全のためにやむを得ない」とした。
 その上で、社宅は勤務していた生命保険会社の営業所の2階にあり「就業の場所と同一視できる」と位置付け「事故は(自宅と就業場所を往復する)週末帰宅型通勤の途中に発生した」と結論付けた。
 判決によると、男性は日曜日の 1999 年8月1日夕、土岐市の自宅から約3時間半離れた岐阜県高山市の赴任先に車で出発。約4カ月後、途中の同県中津川市の沢に車ごと転落、死亡しているのが見つかった。
 妻は 2001 年3月、遺族給付などを求めたが、同労基署は同8月、不支給処分とした。3 月 15 日
(メ−ルマガジン労働情報第226号)