技能実習生の賃金を巡っての問題から


 毎年最低賃金が改定されていますが、これが変わったからと言って賃金が変更になる人は少ないのではないでしょうか。また最低賃金がどういったものか知らない人も少なくはないと思います。県ごとに一般の最低賃金と産業別の最低賃金が定められています。日本人で最低賃金が関係するとすればパートやアルバイトの一部の人たちだけではないかと思いますが、外国人技能実習生の賃金は最低賃金が採用されているのが普通です。入国管理局の指針には日本人並みの賃金を出すように記載されていながら最低賃金となる理由は、協同組合(第1次受入機関)が存在しているためといえます。会社(第2次受入機関)は協同組合に加盟料や会費を支払い、さらに技能実習生たちの往復の旅費と協同組合に対して毎月3万円前後の管理費を支払っています。広島県の一般最低賃金で一か月の賃金を計算してみると
   750円×8時間×22日=132,000円
程度となります。これに会社が協同組合に支払う3万円を加えれば16万2千円となり、さらに先に述べた経費を加えると日本人並みの賃金になります。しかしそれらは会社が技能実習生を受け入れるための必要経費であり、当然負担すべきものなのに技能実習生に負担させる筋合いのものではないはずです。この負担に耐えて、研修生として受け入れることができる会社が前提として設計された制度のはずですが、中間搾取で利益を分かち合うのがこの制度の実態といえます。
 最低賃金を巡る問題としては、毎年改定されているにもかかわらず改定されていない例があります。ある鉄工所では、来日前の契約書に記載されている過去の最低賃金で支払われていました。在留資格更新時の労働契約書には正しい最低賃金が記載されていますがサインさせて本人には渡さないことでごまかしています。相談に来ているとき、後輩の技能実習生達がサインするように言われた労働契約書に記載されている最低賃金を見て不信感を持って質問してきたことがありました。また別な会社では、1年間新しい技能実習生が来なかったため最低賃金改定が無視されていました。1年置いて新人が来ることになったため昨年10月から賃金が改定されました。しかしこの変更された最低賃金は一昨年のものへの変更でした。この理由は、新しく来る技能実習生達がサインした労働契約書は入国手続の時期が昨年10月より以前であったためです。まさに賃金搾取による人件費削減の詐欺行為としか言えません。タイムラグを利用したあくどい例といえます。協同組合が賃金をチェックしていれば簡単に防げる問題ですが指針に従ってチェックしていないためか、分かっていても放置しているためなのかよくわかりません。会社に賃金清算を求めるとともに協同組合に対しても監督義務違反として慰謝料請求して責任追及する必要があるといえます。
 最低賃金の問題は別として、技能実習生にとって切実なのは賃金が月給なのか日給または時間給なのかといった問題です。いずれの場合でも年間賃金は同額となります。ある造船所の労働契約書に記載された労働日数で計算すると次のようになります。
  【年間労働時間】8時間×240日=1,920時間 (休日125日)
  【年間賃金】  1,920時間×858円=1,647,360円(最低賃金は造船)
  【月給の場合】 1,647,360÷12月)=137,280円
  【日給・時間給の場合】 月々の所定労働日数または時間×858円=毎月違う
となります。年間賃金は同じでも、年末年始、ゴールデンウィークそしてお盆の月の所定労働日数・時間は大幅に減少します。会社カレンダーを見ると1月は16日稼働、8月は14日の稼働となっています。そうすると、日給・時間給の場合の8月の賃金は
   8時間×858円×14日=96,096円
となります。これから住居費や社会保険料等が5万円程度引かれて手取りは46千円となります。これから仕送りをすると生活できないため高利貸しから借金をしている現実があります。月給とされていれば月々の稼働日数・時間に関係なく137,280円が支給され問題は発生しません。一寸した配慮があれば解消される問題ですし、何らの不都合もないはずです
 技能実習生の賃金を巡っては以上の例の他にも様々なごまかし方があるはずですので事例集を作れば面白いのではないかと思います。