広島フィリピン人協会から

手指切断の業務上災害の事例から


 7月20日(日)に10時から2時過ぎまで広島フィリピン人協会主催のビンゴ大会が開催され、ほとんどがフィリピン人でしたが、70名ほどの参加がありました。同時に、昼食としてフィリピン料理、フィリピンのお餅やハロハロというカキ氷に砂糖、ココナツミルク、小豆やナタデココなどを混ぜたものなどの販売もあり楽しい半日でした。時間的に中途半端と思われますが、カトリックの信仰が大きなウエートを占めている彼らにとっては2時30分からはミサに参加するため当然の設定といえます。
 この翌週のミサ後にのんびりしていると仕事中の事故で手の指を切断した事故が発生していたという話が出てきました。二つ三つクッションを置いて伝わってきている話なので詳細は不明でしたが、7月始めごろアイスクリームを造っている工場で親指以外の二から三本の指を第一関節辺りから切断したようでした。労災保険の適用は受けているらしい程度のことでしたので、翌日、労働基準監督署に労働者死傷病報告書が提出されていることを確認できたので一安心ということですが、一月近くたってからの情報ですから組織としては問題が無いといわざるを得ないかもしれません。まだ組織されて間が無いことや会の存在を知らない人や知っていても出てこられない人も多いことからこうした人たちの組織化と問題が発生した場合の連絡先の整備などこれからの課題としてあるといえます。
 今回の労災事故を通して、労災保険の制度を簡単に見ていきます。
 労災保険は労働者を使用する会社に加入が義務付けられていますが、加入していない事業所も少なく無いといえます。保険料については、会社が全額を負担しますので、労働者が負担することはありません。また、労災保険に加入していないからといって会社が補償の義務を免れるものではありませんし、労働基準監督署に申告すれば事後的に加入させ、給付を受けることが出来ます。この場合、保険給付費の40%程度がペナルティーとして事業主に課されることになります。
 保険給付では、治療代の全額が療養補償給付として支給され、労働できず賃金がもらえないときには休業した4日目(3日間は会社が休業補償を行う)から賃金の60%程度の休業補償給付と20%程度の休業特別支給金が休業期間中支払われることになります。しかし怪我や病気が1年6ヶ月しても治らず障害等級3級以上に該当していれば傷病補償年金と傷病特別支給金に変更となります。今回の場合、指の切断ですから、傷病補償年金に該当することはありませんが、当然障害が残るので障害補償給付として傷害補償一時金と傷害特別支給金が支給されることになります。怪我の状況が不明ですが、3本の指を第一関節から切断していると仮定すれば障害等級第9級の「母指以外の三の手指の用を廃したもの」に該当すると考えられますので、賃金391日分の60%程度の傷害補償一時金と50万円の障害特別支給金が支給されることになります。
 この方の場合、障害の程度から会社に復帰し、これまでの仕事を続けることが可能かどうかとの問題があります。日本人であれば他の業務への転換も考えられますが、外国人の場合、解雇といった事態も考える必要があります。この場合、労働基準法第19条で業務上負傷して休業している期間とその後30日間は解雇できないとの規定があります。傷口に膜が張った時点が治癒と見なされますので治癒もそんなに遠くないといえます。会社がこの辺りは問題なく処理すると考えられますが、注意しておく必要があります。また、指を切断する可能性のある機械であれば安全上の措置がとられていなければなりませんが、そうした措置がとられていなかったとしたら安全配慮義務違反として損害賠償請求の可能性も当然あると考えられます。
 福山では、私傷病の場合ですが、傷病手当金の手続をとっていない会社もありましたので、こうした事例を通して知識を増し、不利益を蒙らないようにお互いが注意していく必要があるといえます。