外国人技能実習適正化法 平成29年4月1日施行


 技能実習生は様々な問題を抱えています。表に出てくるのは賃金未払や解雇などの労働問題ばかりです。労働者として扱われているため当然のことかもしれませんが、技能実習生以外の労働可能な在留資格を持っている外国人や日本人とは違った側面があります。日本で労働できる期間が限られており、職種が限定され、会社を変わる権利が無いことなどは技能習得を目的として来日している研修生としての位置づけの為やむを得ないのかもしれません。しかしこうした鵺的な存在とすることで技能実習生が抱える問題を隠ぺいしているといえます。技能実習生を守るものとして入管が作成した「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」が法律に代るものとして有りましたが、この4月から、正式な法律として「外国人技能実習適正化法」(法務省と厚生労働省主管)が施行されることになりました。受入機関にとっては許認可問題や労基法同様罰則規定が定められておりかなり厳しい内容といえます。取締り担当職員については、労働新聞12月5日号によると「同法に基づく外国人技能実習機構(交付日に施行)に対しては、厚労省の労働基準関連部署などから相当規模(人数は未定)の現役出向を予定している。労働関係法規に関する知識・知見を有し、しかも事業場へ立入検査をした経験のある職員を配属する方針である。/とくに、実際の検査業務を行う地方事務所へは、都道府県労働局から労働基準関係と職業安定関係部署の職員を出向させる予定。検査業務の実施に当たっては、必要に応じて通訳も同行させ、技能実習生のヒアリングにあたる。/地方事務所の人員数としては、全国で約150人となる見通し。約1900の監理団体全数に年1回、約3万5000の実習実施機関全数(実習生約19万人)に3年に1回の頻度でそれぞれ実地検査に入る見込みとしている。」当然のことながら労基法による取り締まりが中心です。しかし4DKの家に18人を押し込め一人当たり2万5千円の家賃(水光熱費含)を取っている場合の清算、また3年の期間満了前に解雇された場合や労災事故とされていなかったり後遺障害申請が無視されている場合等の清算や慰謝料の求償への対応は可能なのでしょうか。そうした労働法を離れた人権の観点から監督対応できる人材の配置も必要ではないでしょうか。
「外国人技能実習適正化法」の条文を抜粋してみました。

外国人技能実習適正化法の目的 (第1条)

 この法律は、技能実習に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにするとともに、技能実習計画の認定及び監理団体の許可の制度を設けること等により、出入国管理及び難民認定法その他の出入国に関する法令及び労働基準法、労働安全衛生法その他の労働に関する法令と相まって、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図り、もって人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進することを目的とする。

 技能実習生制度の建前論が述べられ、技能実習生保護を目的として、受入機関に対する許認可による締め付けと労働法令による取り締まりだけが記載されています。技能実習生問題を労働問題に矮小化していると言えます。この背景にあるまた前号でも触れたように全員に係る人権的な観点からの配慮には触れられていません。しかしリーフレットには、「技能実習生に対する人権侵害行為等について,禁止規定を設け違反に対する所要の罰則を規定するとともに,技能実習生に対する相談や情報提供,技能実習生の転籍の連絡調整等を行うことにより,技能実習生の保護等に関する措置を講ずる。」と明記されています。

技能実習生に第3号が追加されました。(第2条)

 第一号企業単独型技能実習生
 第二号企業単独型技能実習生
 第三号企業単独型技能実習生

 第一号団体監理型技能実習生
 第二号団体監理型技能実習生
 第三号団体監理型技能実習生

 必要な講習を受けること及び当該機関との雇用契約に基づいて当該機関の本邦にある事業所において当該技能等に係る業務に従事することをいう。

 従来通り企業単独型と団体管理型に分かれており、今回の法律で、第3号が設けられ、優良な事業所に対しては2年間の延長、また受入人員の増員が認められました。2015年12月の統計では、企業単独型が7,499人(3.9%)、団体管理型が185,156人(96.1%)となっています。

実習実機関の認定制と監理団体の許可制

(技能実習計画の認定)
第8条 技能実習を行わせようとする本邦の個人又は法人は、主務省令で定めるところにより、技能実習生ごとに、技能実習の
    実施に関する計画を作成し、これを主務大臣に提出して、その技能実習計画が適当である旨の認定を受けることができる。
(監理団体の許可)
第23条 監理事業を行おうとする者は、次に掲げる事業の区分に従い、主務大臣の許可を受けなければならない。

 実習計画は在留資格認定時の添付書類となっていいますが、今回実習実施機関は事前に外国人技能実習機構の認定が必要になりました。当然、3年間の実習実施計画が作成されることになりますが、在留資格は、「1年,6月又は法務大臣が個々に指定する期間(1年を超えない範囲)」となっています。更新の都度、来日前に交わされた3年の労働契約書が添付されるのではなく、新たに1年若しくは6か月の労働契約書が交わされます。実習実施機関が3年を待たずに契約期間満了で更新しないとした場合、外国人技能実習機構は自ら認定した技能実習計画に従がって契約期間満了による実習打切りを認めないのか、来日前の労働契約は上陸用のためのもので、2年目以降の契約が交わされなければ労働者の地位を失い帰国は当然として処理するのでしょうか。
 また、第15条で、主務大臣は、認定された実習計画が実施されていない場合やこの法律や命令に違反したりしている時には改善命令をすることができると罰則(6月以下の懲役又は30万円以下の罰金)付で定めています。

技能実習生は労働力調整の為ではないこと(第3条2)

第3条2 技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。

H26年実習実施機関の規模(法務省)

10人未満

50.9%

10〜19人

15.5%

20〜49人

15.3%

50〜99人

9.3%

100〜299人

6.5%

300人以上

2.4%

 不況の為雇用調整の必要が生じれば、非正規から切っていくのか、技能実習生を先にするのかとなります。第1条目的の中に、「人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進することを目的とする。」と記載されています。技能実習生は、安価な労働力でもなければ、労働力の需給調整となるものでもありません。しかし実習実施機関の状況を見ていくと零細企業の雇用確保としか考えられず。この条文も建前と本音の世界の建前の部分の表明でしかないといえます。本音の世界で言うと、3年間の賃金保障または雇用の確保を担保してもらいたいと言わざるを得ません。


技能実習生の保護 (第2章第三節 第46条〜第49条) (改善命令等 第36条)

第46条 実習監理を行う者又はその役員若しくは職員は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する
  手段によって、技能実習生の意思に反して技能実習を強制してはならない。

【1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金】

第47条 実習監理者等は、技能実習生等又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他技能実習生等と社会生活において
  密接な関係を有する者との間で、技能実習に係る契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約を
  してはならない。

【6月以下の懲役又は30万円以下の罰金】

実習監理者等は、技能実習生等に技能実習に係る契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は技能実習生等との間で貯蓄金
  を管理する契約をしてはならない。

【6月以下の懲役又は30万円以下の罰金】

第48条 技能実習を行わせる者若しくは実習監理者又はこれらの役員若しくは職員は、技能実習生の旅券又は在留カードを保管
  してはならない。

【6月以下の懲役又は30万円以下の罰金】

技能実習関係者は、技能実習生の外出その他の私生活の自由を不当に制限してはならない。
  【第48条第2項の規定に違反して、技能実習生に対し、解雇その他の労働関係上の不利益又は制裁金の徴収その他の財産
  上の不利益を示して、技能実習が行われる時間以外における他の者との通信若しくは面談又は外出の全部又は一部を禁止
  する旨を告知した者

【6月以下の懲役又は30万円以下の罰金】

第49条 実習実施者若しくは監理団体又はこれらの役員若しくは職員がこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実
  がある場合においては、技能実習生は、その事実を主務大臣に申告することができる。
実習実施者等は、前項の申告をしたことを理由として、技能実習生に対して技能実習の中止その他不利益な取扱いをしては
  ならない。

【6月以下の懲役又は30万円以下の罰金】

(改善命令等)
第36条 主務大臣は、監理団体が、この法律その他出入国若しくは労働に関する法律又はこれらに基づく命令の規定に違反
  した場合において、監理事業の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、当該監理団体に対し、期限を定め
  て、その監理事業の運営を改善するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
主務大臣は、前項の規定による命令をした場合には、その旨を公示しなければならない。

 技能実習生保護の為様々な禁止行為が挙げられ、それぞれに応じた罰則が定められています。こうした行為に対する罰則規定の適用は検察庁に送検することによって実施されると思います。またその前段となる調査はどこが行ない送検するのかということになります。外国人技能実習機構は民間の団体であるためこうした権限は付与されるはずはないでしょう。第13条で「主務大臣は、この章(次節を除く。)の規定を施行するために必要な限度において・・当該主務大臣の職員に関係者に対して質問させ、若しくは実習実施者等若しくは監理団体等に係る事業所その他技能実習に関係のある場所に立ち入り、その設備若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。」と定められています。当該主務大臣の職員について、第105条で職権の行使として「主務大臣は、報告徴収等に関する事務について、第35条第1項に規定する当該主務大臣の職員の職権を労働基準監督官に行わせることができる。」とされています。外国人技能実習機構に労働基準監督署で調査に従事した職員が出向するため実習実施機関の問題点の把握は的確に行われるはずですが、その段階で指導する職権があるのか疑問になります。これまでJITCOも調査に入っていましたが、わたしたちが問題があると相談しても権限が無いとして相手にしてもらえませんでした。第90条の第2項には、「機構は、その業務を行うため必要があると認めるときは、国の行政機関の長及び地方公共団体の長その他の執行機関に対して、資料の提供、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。」と定められています。調査することには問題ないとしても問題があった場合には即座に是正勧告をすることはできず、労働基準監督官に報告したところで業務終了となるのでしょうか。

外国人技能実習機構の業務の範囲 (第87条)

第87条 機構は、第57条の目的を達成するため、次に掲げる業務を行う。
 1 技能実習に関し行う次に掲げる業務
   イ 認定事務を行うこと。
   ロ 報告若しくは帳簿書類の提出若しくは提示を求め、又はその職員をして、質問させ、若しくは検査させること。
   ハ 届出、報告書、監査報告書又は事業報告書を受理すること。
   ニ 事実関係の調査を行うこと。
   ホ 申請書を受理すること。
   ヘ 許可証の交付又は再交付に係る事務を行うこと。
 2 技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るために技能実習生からの相談に応じ、必要な情報の提供、助言
   その他の援助を行う業務
(次号に掲げる業務に該当するものを除く。)
 3 技能実習を行うことが困難となった技能実習生であって引き続き技能実習を行うことを希望するものが技能実習を行うこと
   ができるよう、技能実習生からの相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うとともに、実習実施者、監理
   団体その他関係者に対する必要な指導及び助言を行う業務
 4 技能実習に関し、調査及び研究を行う業務
 5 その他技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する業務
 6 前各号に掲げる業務に係る手数料を徴収する業務
 7 前各号に掲げる業務に附帯する業務

 以上外国人技能実習適正化法の内技能実習生問題に関係ある条文を抜粋してみました。実際に動き出して見なければわかりませんが、「建前と本音」の制度であることから外国人技能実習機構が張り切りすぎると受入停止の問題に直結してしまいかねません。これまでユニオン等はこの辺りの問題を考慮しながら対応していたから実習実施機関にとってはまだよかった面もあるのかもしれません。しかし個人でこの問題に取り組んでいる者にとっては、その辺りには不満が残るところでしたので、外国人技能実習機構と連携を取って進められることを祈っています。