知っていますか労働の法律!! 

     事務所等での喫煙対策をとられていますか ?



事務所や工場の喫煙対策8割

   厚生労働省が職場の喫煙対策を初めて全国規模で調査した結果、8割の事務所や工場が分煙などに取り組んでいるものの、屋外排気などは不十分であることが30日わかった。きょう31日は世界禁煙デ−で、来月6日まで「禁煙週間」。調査結果を受け同省は近く、一層の対策を企業に求めるよう全国の労働局に通達する。
 回答した1805か所のうち83%が対策に取り組んでいた。対策のうち92%は喫煙場所を設ける「分煙」だった。
 しかし喫煙場所で屋外排気を行わず、空気清浄装置だけの所が41%。また浮遊粉じん、一酸化炭素の濃度測定も、それぞれ7割以上が行っていない。同省は「分煙による受動喫煙の防止が十分でない場合、全面禁煙を勧めたい」としている。(読売新聞H17.5.31)

 ここ数日、アスベストを長年吸い続けることにより中皮腫を発症し亡くなられた方が沢山出ているとの報道がされています。当然仕事に従事した人は労災事故として補償されます。工場の周辺住民に対しては事業主が補償することになるでしょうが、公害問題になるとどの程度まで被害が及んでいるのか、被災の認定、補償の額等では難しい問題がいろいろあるといえます。

 アスベスト程の害はないかもしれませんが、煙草の害も無視できないものがあります。人ごみで歩きながら煙草を吸っている人が沢山いますし、路上への投げ捨てもあります。煙草の害は本人だけではなく、その煙草の煙を吸わされる者にも害が及ぶことから、煙草を吸わない人に対する受動喫煙の害が問題視され、事務所等人の集まるところでの喫煙対策が進んできています。この調査結果に見られるようにかなりの事業所で喫煙対策がとられていますが、記事を読むとかなり厳しい対策をとることが要求されているといえます。

 喫煙対策について法律的にまたどのような指導を国が行っているのかをみていきます。

 法律的には、健康増進法の規定ということになると思います。労働安全衛生法では有害な業務を行う屋内作業所とか中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物等では、一酸化炭素や粉塵等の検査が義務図けられていますが、直接煙草に関する規定とはいえません。健康増進法では受動喫煙について次のように定めています。


 第25条 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない

 この規定は喫煙を禁止する規定ではなく、受動喫煙を防ごうという主旨から定められているもので、結果として、喫煙者が隅に追いやられることとなっています。あくまでも努力規定としてのものですから、事業主等には守る義務は無いといえます。しかし、東京の江戸川区役所の職員が、分煙の徹底を申し入れても、対策がとられず、頭痛や血痰の症状が出るなどの体調不良となったことから、「他人が吸ったたばこの煙を吸い込む受動喫煙で肉体的・精神的苦痛を受けた。」として区役所を訴えた結果、裁判所は、「区には受動喫煙の危険性に配慮する義務がある。」と区に対して安全配慮義務違反による損害賠償を命じています。(H16.7.12判決)。厚生労働省の定める「職場における喫煙対策のためのガイドライン」では、妊婦及び呼吸器・循環器等に疾患を持つ労働者については、受動喫煙による健康への影響を一層受けやすい懸念があることから、空間分煙の徹底を行う等により、これらの者への受動喫煙を防止するため格別の配慮を行うこと。」されています。こうした状況を考えれば、喫煙対策は事業主が積極的に取らなければならない事項といえます。

 ちなみに、平成元年以降の喫煙習慣者の統計調査をみると、男性では55.3%から46.8%へとすべての年齢で減少してきています。しかし、女性では9.4%から11.3%へと上昇しており、年代別に見ると、20歳〜29歳台は8.9%から19.2%に、30歳〜39歳台は11.7%から18.1%に、40歳〜49歳台は10.6%から15.5%へと大きく喫煙者が増えています。成人人口の過半数に喫煙習慣がない時代になると喫煙者は形見が狭くなってくるのはやむを得ないとしても、女性の喫煙者が増加していることは、受動喫煙問題以前に、出産に対する影響を考えると大きな社会問題ともいえます。

 厚生労働省が発表している「職場における喫煙対策のためのガイドライン」を見ていきます。


このガイドラインの骨子は次の2点になります。
(1) 「職場における喫煙対策を実効あるものとするためには、事業者が労働衛生管理の一環として組織的に取り組む必要があること」
(2) 事業場全体の禁煙までは求めておらず、「一定の要件を満たす喫煙室又は喫煙コーナーでのみ喫煙を認めそれ以外の場所を禁煙とする」という空間分煙対策を講ずること

 喫煙対策を推進するためには、経営者層、管理者層そして労働者それぞれが喫煙対策に取り組むことを要請しています。同時に、「喫煙問題を喫煙者と非喫煙者の個人間の問題として、当事者にその解決を委ねることは、喫煙者と非喫煙者の人間関係の悪化を招くなど、問題の解決を困難にする可能性がある。このような事態が生ずることを避け、喫煙対策を効果的に進めるには、事業者の責任の下に労働衛生管理の一環として、次のとおり喫煙対策の推進体制を整備すること。」と定め、その体制としては、喫煙対策委員会の設置と喫煙行動基準等を検討することとされています。

 骨子の(2)について、基本的には喫煙室を設けることとしていますが、これができない場合は喫煙コ−ナ−の設置とされていますが、いずれの場合であっても空気清浄機だけでは足りず屋外への排気が要請されるとともに「におい対策」への配慮も必要としています。当然、喫煙室等の空気環境の問題があるため浮粉塵測定と一酸化炭素測定等が求められています。

 このガイドラインで注意しておかなければならないのが先にも述べた「妊婦及び呼吸器・循環器等に疾患を持つ労働者については、受動喫煙による健康への影響を一層受けやすい懸念があることから、空間分煙の徹底を行う等により、これらの者への受動喫煙を防止するため格別の配慮を行うこと。」という点になると思います。事業主には、労働者の労働提供義務に対する反対給付としての職場環境への安全配慮義務がありますのでこのことを忘れると喫煙問題にかかわらず大きな問題を惹き起こしかねないといえます。

 ガイドラインではこれら以外にも、労働者に対して、喫煙対策に関する施策情報の提供についても触れています。

 事業場での喫煙対策の問題以前のこととして、喫煙者のモラルの問題もあります。会社の名前が入った車でくわえ煙草で運転していたり、車外に吸殻を捨てたり、酷い場合は、信号待ちの間に車内の灰皿の吸殻を道路に捨てたりしている人がいます。これをみた人はその会社に対してどんな感情を抱くでしょうか。テレビでどんな美しいコマ−シャルをしてもイメ−ジが壊れてしまうと思います。こうした点の指導も喫煙対策の一環として行う必要があるのではないでしょうか。車内で喫煙した運転手は即解雇するというタクシ−会社もあります。ここまで徹底することは難しいかもしれませんが、サ−ビス業としては長い目で見ればプラスになるといえます。