生理休暇の扱いは?
就業規則から-3

 デパ−トなど女性の多い職場のことは良く分かりませんが、普通、生理休暇自体あまり問題とならないと思います。就業規則も、労働基準法第68条の規定に基づいて「生理日の就業が著しく困難な女性従業員から請求があったときは、必要な期間休暇を与える。」と定めていると思います。しかし、この規定に続けて、1ヶ月に1回とか、一ヶ月に2日とかの制限を加えたり、生理休暇を取得したことにより賃金や昇格などの算定時に不利益な取り扱いをしていれば問題が無いとはいえませんのでこのあたりのことに少し触れてみたいと思います。
 生理休暇は労働基準法第68条に「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。」と定めています。休暇の日数についても、時間単位でもいいのか、また賃金の支払いは必要か、など何も定めてはいませんので通達や判例を基にしてみていく必要があります。

(1) 就業困難の証明
 症状については千差万別でしょうし、必ずしもお医者さんの治療が必要ということも無いでしょうから、医師の診断書などを要求すると生理休暇自体取るることが出来なくなってしまうため、「その手続きを複雑にすると、この制度の趣旨が抹殺されることになるから、原則として特別の証明が無くても女性労働者の請求があった場合には、これを与えることにし、特に証明を求める必要が認められる場合であっても、右の趣旨に鑑み、医師の診断書のような厳格な証明を求めることなく、一応事実を推断せしめるに足れば十分であるから、例えば同僚の証言程度の簡単な証明によらしめるよう指導されたい。」とされています。(昭63.3.24 基発150号 婦発47号)

(2) 付与する単位と日数制限
 この規定は生理日に休ませるのが目的ではなく、あくまでも「就業が著しく困難」な場合に本人が請求すれば就業を免除するとの主旨てせあるため、症状に応じて本人の申し出が時間単位また半日単位での請求であればその単位で与えればよいとされています。(昭61.3.20 基発151号 婦発69号)  年次有給休暇の場合には最低でも半日単位とされていますが、その主旨は休日に加えて精神的身体的疲労の回復が目的とされていることとの違いといえます。
 また、「生理期間、その間の苦痛の程度あるいは就労の難易は各人によって異なるものであり客観的な一般基準は定められない。したがって就業規則その他によりその日数を限定することは許されない。ただし、有給日数を定めておくことはそれ以上休暇を与えることが明らかにされていれば差し支えない。」(昭63.3.14 基発150号 婦発47号)要するに、「生理休暇は2日間」と限定すると違反となるが、「必要な期間生理休暇を与える。ただし、有給とする期間は2日間のみ」と規定することには問題が無いことになります。

(3) 生理休暇とその期間中の賃金・精皆勤手当と昇給の問題
 ここで問題点は、生理休暇を取得することによってもたらされる不利益の程度が当該労働者にとって生理休暇の取得を放棄させるほどのものであるかどうかといった点にあります。このことについては次の二つの判例が参考になります。
 労働基準法に定められている休暇で賃金の支払いが命ぜられているのは年次有給休暇のみで、これ以外の休暇についてはなにも規定されていませんので生理休暇で休んだ日(時間)に対して賃金を支給しないとし、また精皆勤手当を不支給としても、賞与においても欠勤扱いとして減額することには問題がないということになります。しかし、賃金については時間単価に基づきカットされるでしょうから問題は無いかもしれませんが、精皆勤手当が著しく高額である場合とか、賞与のカットが単純な欠勤控除額を上回るようであれば問題が無いとはいえません。(注1)

 次に、生理休暇を取ったことにより、昇給・昇格時の考課要件として前年度の出勤率を計算するとき、生理休暇を欠勤として処理する問題があります。この場合には、賃金カットのように一回限りのことではなくその会社にいる限り退職するまで本人の賃金に影響を与える問題となるため労働基準法が認めている権利行使を抑制するという不利益を及ぼすものとして無効とされた判例があります。(注2)

(注1)

 「「67条(1985年改正前のもの−引用者注)は、使用者に対し生理休暇取得日を出勤扱いにすることまでも義務づけるものではなく、これを出勤扱いにするか欠勤扱いにするかは原則として労使間の合意に委ねられているものと解することができる。」とした上で、「使用者が、労働協約又は労働者との合意により、労働者が生理休暇を取得しそれが欠勤扱いとされることによって何らかの形経済的利益を得られない結果となるような措置ないし制度を設けたときには、その内容いかんによっては生理休暇の取得が事実上抑制される場合も起こりうるが、労働基準法67条の上述のような趣旨に照らすと、このような措置ないし制度は、その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、生理休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、生理休暇の取得を著しく困難とし同法が女子労働者の保護を目的として生理休暇について特に規定を設けた趣旨を失わせるものと認められるものでない限り、これを同条に違反するものとすることは出来ないというべきである」と述べたものがある。(エヌ・ビ−・シ−工業事件 最判昭60.7.16)この事件では、精勤手当の算定に当たって生理休暇を欠勤扱いとする制度が、制度目的や不利益の程度から違法ではないと判断された。」(労働基準法コメンタ−ル第4版)

(注2)

 「一方、前年の稼働率が80%以下の者を賃金引上げの対象から除外する旨の労働協約条項の適用にあたって、会社側が、欠勤・遅刻・早退による不就労のほか、年次有給休暇・生理休暇・慶弔休暇・産前産後の休業・育児時間・労働災害による休業ないし通院・同盟罷業等組合活動による不就労をも稼働率算定の上で不就労と扱った事案においては、「本件80パ−セント条項は、労基法又は労組法上の権利に基づくもの以外の不就労を基礎として稼働率を算定する限りにおいては、その効力を否定すべきいわれはないが、反面、同条項において、労基法又は労組法上の権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎としている点は、労基法又は労組法上の権利を行使したことによって権利の行使を抑制し、ひいては、右各法が労働者に各権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものというべきであるから、公序に反し無効であるといわなければならない」(日本シェ−リング事件=最判平1.12.14)との判断が示された。」(労働基準法コメンタ−ル第4版)