シェラトンホテル広島での知的障害者雇用から
(平成27年1月30日)


新聞  全ての企業は、障害者雇用促進法の定める障害者雇用率で計算した以上の障害者雇用が義務付けられています。障害者雇用率を達成できない場合には、ペナルティーとして障害者雇用納付金を納付する必要があります。この障害者雇用納付金が適用される企業規模がこの4月から200名以上から100名以上の事業所へと変更されますので障害者雇用に向けて取り組まれた企業も少なくないと思います。対象となる障害者は知的障害者、身体障害者そして精神障害者の三障害の内知的障害者と身体障害者が対象となっていますが、精神障害者を雇った場合も同列に扱われることとされています。
 しかしハローワークに求人を出して雇用すればいいといった簡単な話ではないといえます。それぞれ障害特性があります。特に知的障害者の場合には導入に当たって受け入れ態勢と支援体制をしっかり整えておく必要があります。シェラトンホテル広島は知的障害者施設を運営している広島市手をつなぐ育成会との連携の下に知的障害者雇用に取り組みました。昨年からこの4月の雇用に向けての取り組みの一端を紹介します。
 知的障害者の雇用に向けて双方がそれぞれの業務内容を理解するための見学から始まりました。まずシェラトンホテル広島が広島市手をつなぐ育成会を訪問し、施設の概要またどのような事業を行なっているかの説明と見学を通して知的障害者雇用だけでなくホテルの業務の一部外注も可能ではないかとの感想も聞かれました。またシェラトンホテル広島ではこれまで職員が交代で行っていたバックヤードの清掃を知的障害者雇用によって行おうとしているため清掃場所全てを見学しました。私たち健常者が清掃する場合には問題とならない部分が知的障害者には問題となること、また業務の状況に応じて変化する現場の状況にどのように対応するか、安全の問題等健常者として気づかない指摘もありましたし、掃除用具としてどのようなものを用意するべきかも当然問題となりました。こうした双方の施設見学を経て具体的な内容、1日の清掃スケジュール造りへと進んでいきました。こうした打合せを進めながら、総支配人以下職員多数が集まる月1回実施されるミィーティングの中で広島市手をつなぐ育成会の指導員2名から「障害者雇用に向けて」と言う題で知的障害者を受け入れるに当たっての注意事項等の説明が行われました。1.障害者雇用の歴史、2.各障害の特徴(発達・精神・知的障害を中心に)、3.知的障害の特性と業務を遂行する上での課題、4.事例(これまで関わった中から)と言う項目で話がありました。この話の中から知的障害者の受入に関する部分の概略を抜粋します。

 @ 話の内容を理解できなかったり、自分の考えや気持ちを表現することが難しく、コミュニケーションを上手にとれないことがある。
 A 複雑な話や、抽象的な概念(あれ・これ)の理解が不得手な人もいる。
 B 判断したり、見通しをもって考えることが苦手な人もいる。
 C 読み書きや、計算が苦手な人もいる。
 D 困ったことが起きても、自分から助けを求めることができない人もいる。気持ちを落ち着かせるのが難しい人もいる。

 これ等に対する具体的な支援策として、
 上記@とAに対しては、言われていることが分からなくても「はい」と言ってしまうので具体的に分かり易い言葉で短く、ゆっくり話す。具体的には、
 『手伝って』→『○○をして』、『少し』→『○分』『○分〜○分まで、時計の6から8まで』、『あれをとって』→『固有名詞で』、『適当にやっといて』→具体的な範囲を支持する。など・・。言葉や文字ではなく、身振り(指さし)、絵や写真を活用して手順書を作成する。また理解できたかどうかの確認は『話したことを言ってもらう』、『実際にやってもらう』必要があること。また「なかなか言葉が出ない人や一度に離せない人」に対しては、『なぜ?』『何?』という聞き方ではなく、『○○と□□、どっち』、『○○するけど、やりたい?やりたくない?』などと具体的な聞き方をする必要があり、ことばが出てこなければ、急がせず、落ち着いて言葉が出るのを待つ必要があることまた保護者との連携が欠かせないことなど細かく説明がなされました。職員の方たちは指導員の話に聞き入り、感想を聞いても受入に前向きな回答が返ってきていました。
新聞  採用する者が決まると本人と各セクションの中心となる職員との顔合わせを行ない、その後、清掃箇所を見て回りどのようなことをするか、また各セクションの職員との顔つなぎを進めていきました。この清掃箇所の見学に先立ってシェラトンホテル広島では「出社から退勤まで」というパンフレットを作成しました。
 これは通用口の場所→受付での自分の名前(分かり易いよう一番下にある)に○を付け→エレベーターに乗る→・・と一日の工程のすべての場面が写真と簡単な解説付きで作成されたものでした。左の写真は出勤してきた時の着替えと始業までの待機場所を説明したページです。
 ホテルが一体となり、知的障害者の雇用に取り組まれているのも、ホスピタリティーを第一とするホテルならではの対応と言えるかもしれません。ホテルには知的障害者に向いた業務も少なくありませんので、新たな雇用に向けて進んでいけばと思っています。ただ障害者の雇用に当たっては、受入側が相当の努力をする必要がありますし、それを支援する機関との連携が無ければ継続雇用が難しいといえます。始まったばかりで、これから試行錯誤しながら、より良い知的障害者雇用体制が構築されていくことと思います。他の事業所でも広く障害者雇用が進んでいくことを祈っています。