四国の造船所で働いている技能実習生の問題から


 この造船所で働くフィリピン人技能実習生との関係は平成24年5月に5名が広島まで相談に来た時に始まります。5名は造船所の下請で勤務しており勤務する会社は違っていました。問題は寮での生活と通訳の問題でした。寮では火気厳禁で食事を造ることは禁止されていることそして通訳が日記に卑猥なコメントを加えることでした。賃金については始業前の打合せ時間が残業処理されていない程度で した。お城と平和公園など広島観光で楽しい一日を過ごしました。
 昨年の12月に彼らとは別のフィリピン人技能実習生から「会社に来ないでいい」と言われたと言って相談がありました。この時は、「来るなと言われても毎日普通通りに会社に行くように」と伝え問題は解決しました。この時、賃金が正しく払われているかどうかチェックするので労働時間の記録をつけるように伝えていました。今年の2月の終わりに、契約書と賃金明細書と記録がフェイスブックで送られてきたので調べてみるといくつか問題が出てきました。対応はえひめユニオンに依頼しましたので契約書と賃金明細書と送られてきた団交の情報等を交えて問題となる点を考えてみました。

  @ 始業前の打合せの時間が未払となっている。(始業20分前に出社している)
  A 契約書には1日7.5時間労働、休日は日曜日と月当たり3日の休日の合計年間88日の休日でカレンダを配布と記されています。
  B 年休取得は認めず出勤日1日について0.5時間の調整手当として支給しているようです?
  C 社長の自宅の草取りをさせられている。
  D ユニオンが団体交渉を申し込んだ後社長が本人のところに来て「労働基準法通り正しくしている」と行ってきたり、よく分からない
   お金を清算するといわれるとのメールが入りました。

 怖いのはお金を渡し、「本人との間で解決した」と言われることですが、こうしたことは不当労働行為の問題となり問題の解決を難しくさせる原因となります。
  この問題について、私自身本人と直接話が出来ていませんし、交渉の経緯がユニオンから届いても詳細な点は分かりませんが、始業前のミィーティング時間の問題を除けば契約書の作り方のミスと言う感じを持っています。この原因は会社には労働法の知識かせなく、契約書を協同組合任や社労士任せにして実態と乖離したものとなっている点にあります。

【補足:変形労働時間制の問題】
 造船所では変形制の導入如何にかかわらず年間カレンダーを作成しているのが普通です。従がって契約書には「年間の休日日数と日曜日が休日であることと残りの休日はカレンダーで指定する」となります。しかしこの下請けは1か月の変形制として、「1日の労働時間は7.5時間、休日は日曜日と月3日の86日でカレンダーで指定」とされています。10月を例にとると、31日−日曜日4日−休日3日=24日の労働となります。とすると、労働時間は24日×7.5時間=180時間となります。しかし1か月の労働時間の限度は177.14時間であるため、この差2.86時間に対して1.25の割増賃金の支払いが必要となります。併せて、年末年始、ゴールデンウィークやお盆などについては、日曜日+3日を超えた休日に対して休業補償の支払いが必要となり、1カ月変形は成立しないことになります。1年単位の変形制であればこの問題は発生しません。
 1か月の変形制は就業規則に定めておけば労使協定は不要となりますが、実態として成立しないのであれば土曜日の扱いをどうするかが問題となります。土曜日は休日とするか2.5時間の勤務にするかとなります。従がって土曜日の労働に対しては少なくとも(7.5時間×6日)−40時間=5時間に対しては25%の割増賃金の支払いが必要になります。契約書には「法定外休日25%の割増」と明記されているため、休日扱いとすれば7.5時間すべてに対して25%の割増賃金が必要になります。所定労働時間7.5時間と定められているため、土曜日は休日扱いと考えざるを得ないといえます。造船所の実態として1日2.5時間労働などありえないでしょう。
 労働契約書に従がって考えると、1週間で見た場合、土曜日の問題そして年末年始等の月3日を超える所定休日に対する休業手当の支払いが発生するためかなりの額の未払い賃金があるともいえます。実態を無視した杜撰な契約書から様々な問題が噴出してくる例といえます。
 1年単位の変形労働時間制で技能実習生に発生する問題として、年末年始、お盆が属する賃金計算期間の稼働日数が15日程度になります。時間給や日給計算であるため手取り額が5万円を切ってしまい、仕送りすると手元に残らず借金して生活している実態もあります。