職員の多重債務の問題また賃金差押え請求を受けたら?



 

アイフル過払い金返還請求訴訟和解

  消費者金融の大手「アイフル」に利息制限法の上限金利を超える利息を払わされたなどとして、広島市内の会社員ら計14人が過払い金の返還と慰謝料計約1190万円の支払いを求めた訴訟は21日、アイフルが過払い分など計約1230万円を支払うことで全員と和解が成立した。  訴状によると、14人は約4〜17年前に、同社から約5〜50万円を借り入れた。同社との契約により、出資法上限の金利(年29.2%)に近い利率で返済しており、利息制限法(年15〜20%)の利率で計算し直すと、約8万円〜140万円払いすぎていた。  アイフル広報部は「裁判を長期化するより早期和解する方がお互いのメリットになると考えた」としている。」読売新聞H17.10.22

   上記の記事に先立って、「多重債務者らを狙ってダイレクトメ−ルなどで「低金利」などをうたい、融資を持ちかける。その後、「多重債務者のブラックリストから外す」などと偽り、保証金や手数料名目で金を搾取するという」(平17.10.16 読売)多重債務者を狙った融資保証金詐欺が横行しているとの報道がありました。こうしたサラ金の実態は私たちにはよく分かりませんし、私たちの周りで多重債務に苦しんでいる人がいるかどうかもなかなか知ることは出来ません。だからといって、こうした問題は、会社の業務と全く関係ないともいえず、いつ職場に問題を投げかけてくるかもわかりません。具体的には、返済が滞って会社に電話がかかってくるようになったり、賃金の差し押さえといった事態が発生するとなれば、業務遂行上いろいろな問題が発生してくることになります。こうしたことについて簡単に見ていきます。

 サラ金のことから見ていきます。サラ金の利率は会社によっても違うといえますが、この記事のように29.2%の利率が一般的だといわれています。今の時代凄まじい利率だといえます。何らかの理由で返済が滞り、返済のためにまたサラ金から借り入れるとなれば殆ど返済は不可能にならざるを得ないといえます。こうした状況を解消する手段として、全く財産がない者であれば自己破産でもいいかもしれませんが、自宅があったり、自己破産として認められない事由で借金していれば難しい面があります。しかし、借りたお金は返さなければなりませんので、法律の上限を超えた金利を法定金利に置き換えて計算し直して借金を支払っていくという「任意整理」という方法があります。これは、弁護士や司法書士に依頼してサラ金と交渉してもらうものです。簡単に言ってしまえば、29.2%の金利を法定金利(元本100万円以上の場合)15%で借金した当初から利息計算しなおします。従って、29.2%で支払っていた金利のうち15%を越えていた部分は元本部分の返済金に組み入れられることになり、長期間支払い続けていたとすれば任意整理前の要返済金額が大きく減額されることになります。併せて、任意整理後の返済については一切金利がかからないということになりますので債務者にとっては非常に助かるといえます。これと同じ様な内容で、裁判所に調停を依頼する「特定調停」という制度もあります。ただ、これらの制度を利用するとブラックリストに登録され5年〜7年間はカ−ドを造ったり、金融機関からの借り入れが出来なくなります。

 次に、賃金の差し押さえについてみると、サラ金以外にも離婚後の子供の養育費の不払い等職員が有する債務不履行に伴って債権者から、会社に賃金差し押さえを言ってくることがあります。この場合、いわれたとおりに賃金を職員に支払わず、債権者に渡しても良いのかという問題が発生します。まず第一に、労働基準法第24条は「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定めていますので、ここの問題はどうなるのかといえます。この条文の主旨は事業主が労働者に対して確実に賃金を支払うことを目的としていることから、条文中にも「法令に別段の定めがある場合」には控除して支払うことも出来るとされており賃金の差し押さえ命令が来れば、事業主は従わざるを得ないことになります。次に、賃金全額が差し押さえられてしまうと生活費がなくなってしまい、サラ金地獄に落ち込んではいけませんので、債務者の生活に配慮して、民事執行法は差し押さえできる賃金の額に制限を設けています。月額賃金の場合、賃金の4分の3(上限額は21万円)に相当する額は差し押さえできないとされていますので、使用者はこの規定に基づいて処理していかなければならないことになります。もし、会社に貸付金の制度があるようであれば、自社の貸付金回収のため、賃金差し押さえがあった場合の対処法も就業規則に定めておく必要があります。

 こうした問題は、職員の個人的な問題であり、会社がタッチすべき問題だとはいえないかもしれませんが、会社が存続発展していくのも職員がその能力を十全に発揮することで成り立っているといえますし、職員自身が抱える多重債務その他の問題の解消についてどのような解決方法があるのか知らないのが普通だといえますので、可能な限り、職員の抱える問題解決を図ることが出来る体制を整えておくことは会社又担当者の仕事と考えていかなければならないのではないでしょうか。