最低賃金について
平成20年7月1日から改正施行されます。

 私たちが就職するとき必ずチェックする労働条件は、賃金、労働時間そして休日だろうと思います。当然それ以外の賞与、退職金、年休や休暇など労働条件も気になるところです。こうした労働条件について、労働基準法は、採用時には書面で労働条件を交付(労基法15条)しなければならない、また賃金については、最低賃金法の定める額(注1)を下回る額を賃金として定めてはいけない(労基法28条)としています。最低賃金は都道府県労働局長が決定していますので常に注意しなければならないのですが、あまり関心を持たないのが現状でしたが、先日新聞に、広島県内の造船関連会社に対する労働局の調査で最低賃金(798円)を下回る外国人実習生がいた事業所は3割に上っていたとの記事を目にしましたし、知的障害者の方で、民間企業に時給100円(1日10時間労働)で長年勤務していたのに解雇の問題が発生してきたとの相談もありましたので少し関心を持って調べたら、平成19年6月に厚生労働省労働基準局が最低賃金に関して調査した資料が見つかりました。これを見ると11,120事業場を調査し、770事業場(違反率6.4%)で違反があったと報告しています。違反事業所の内の56.9%がパート・アルバイトに対する違反であり、障害者に対しては13.8%、外国人に対してはが7.3%の違反があったと報告しています。次に違反した事業主の最低賃金法違反に関する認識状況を見ると、36.6%が最低賃金の額を知っており、53.6%の事業主は最低賃金の額までは知らないが、最低賃金額が定められていることは知っていたと報告していることから、90.2%の事業所が意識的に違反を行っていたといえます。
 こうした状況を受けてか、平成20年7月1日から最低賃金法が改正施行されますので、主な改正点と障害者等労働能力の低い人たち等に対する扱いを見ていきたいと思います。

【罰則が強化されます】
 改正点の一番大きな点は罰則規定の強化といえます。こうした背景には最低賃金法違反が広く行われていることを意味していると考えられます。

@  地域別最低賃金に満たない賃金を支払った場合には、2万円以下(注2)から50万円に
A  産業別最低賃金違反は最低賃金法の罰則でなく、労働基準法の全額払い違反の罰金30万円以下の適用に変わりますが、地域別最低賃金を下回っていれば@の違反として50万円以下の罰金が適用になります。
B  周知・報告違反や検査忌避などの罰金は2万円以下から30万円以下に
C  最低賃金法違反を労働基準監督署に申告した労働者に対して解雇等の不利益取扱い禁止の規定が新たに設けられ、これに違反した場合には、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金とされました。


【最低賃金が時間額のみに変更】
 従来、最低賃金は、時間額、日額、週額又は月額によって定められていましたが、時間額のみにより定められることになりました。従って、月給制の場合、下記の計算式で時間給を算出し最低賃金と比較する必要があります。

    (月給額×12か月)÷ 年間総所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)

 なお、(1)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当(2)所定時間外労働、所定休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)(3)臨時に支払われる賃金(結婚手当等)(4)1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)は月給の額には入れる必要はありません。

【派遣労働者に対する最低賃金の適用の新設】
 派遣労働者については、派遣元事業所所在地の最低賃金が適用されていましたが、今回新たに条文が設けられ派遣先の事業所また業務に適用される最低賃金が適用されることになりました。

【適用除外が減額の特例に変更】
 従来、@精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者、A試みの試用期間中の者、職業能力促進法により基礎的な技能知識の訓練を受けている者、C軽易な業務に従事する者などは都道府県労働局長の許可を受けた場合には、最低賃金の適用が除外されていましたが、今回、最低賃金から一定の率で減額していくというものに変更されました。@の精神又は身体障害者で著しく労働能力の低い者については、「減額しようとする最低賃金額と同程度以上の額の賃金が支払われているもののうち、最低位の能力を有するものの労働能率の程度に対する当該掲げる者の労働能率の程度に応じた率を百分の百から控除して得た率」に相当する額を最低賃金額から控除することになります。
 先に触れた時給100円で働いている人の場合、その職場の最低の能力の人の15%(広島の最低賃金669円)の能力しかないことになります。親御さんとしては、働く場所があるだけよいと考えてこられたと思いますが、監督署に問い合わせたところこの例では許可は下りていないだろうとのことでした。監督署に申告し、同じような悩みを持っている障害者を掘り起こしていくことも必要ではないかと思います。労働能率による減額も必要かもしれませんが、最低賃金額のせいぜい50から60%程度が限度かとも思います。

(注1)  最低賃金には、地域別の最低賃金と産業別の最低賃金が定められています。広島県の地域別最低賃金は669円で、産業別最低賃金は、造船798円、自動車製造758円など8業種が定められています。
(注2)  現在の法律では1万円以下とされていますが、罰金臨時措置法で「その多額が2万円に満たないときはこれを2万円とし、その寡額が1万円に満たないときはこれを1万円とする」とされています。