労働基準法−14 (第37・39条)
外国人技能実習生を中心として

割増賃金・年次有給休暇


第37条 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働につい
  ては、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払
  わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、
  通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
 使用者が、午後10時から午前5時までの間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の
  2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
 第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

 残業代と年次有給休暇の問題は労働する者にとっては大きな問題といえます。技能実習生の問題で一番多いのがこの問題といえます。日本人も同じように問題を抱えているはずですが問題とする人は少ないのではないでしょうか。波風を起こしていやな思いをするよりは早く就職する方を選ぶためかもしれません。しかし外国人の場合と比べて契約に対する意識の違いととらえた方が正確かもしれません。技能実習生の場合には契約だけではなく警察も弁護士も信用できないお国柄からや保証金を返してもらえないことなどへの恐怖感が先に立っていることもあって問題提起する人たちはそれほど多くないのが実情かも知れません。

 今回の条文は、残業や休日労働また深夜労働にその時間に相当する賃金に対してどの程度上乗せした賃金の支払いが必要かということを定めた条文です。残業代は25%以上、休日労働は35%以上、深夜の労働については25%以上の割増分を支払う必要があると定めています。また賃金には様々な手当が支給されている場合もあることから、第5項で時間単価を計算する場合には、基本給だけでなく手当類も含めて時間単価を計算するように定めています。ただし労働の対価とは直接関係のない手当類は除くように定めています。ちなみに、残業代の単価から除かれる手当には次のものがあります。@家族手当、A通勤手当、B別居手当、C子女教育手当、D住宅手当、E臨時に支払われた賃金、F一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金です。

 この条文の中の幾つかのキーワードを説明していきます。

【2割5分以上5割以下、2割5分以上】
 これらは残業や法定休日そして深夜時間帯に労働させた場合には時間単価に加えてこうした割増賃金を支払うようにと定めている部分です。前段の「2割5分以上5割以下」は残業と休日の割増率はこの範囲内で別途定めるとしたもので、労働基準法施行規則で、所定時間労働については25%以上、法定休日労働については35%以上と定められています。後段の「2割5分以上」は深夜労働については労働基準法自体でこの率以上の率で支払わなければならないとしていることになります。この率の適用自体問題となることは少ないのですが、労働契約書に「所定休日35%」と記載されたものがあります。この場合、三通りの解釈が可能となります。@これで問題がない場合、A法定休日とすべきところを校正ミスで所定休日と訂正しなかった場合、B法定休日と所定休日の区別を知らない場合です。しかし契約書にこのように記載されていれば残業代の問題でこちらから指摘されてから25%の間違いだったといわれても「そうした契約内容となっている」と答えざるを得ません。

【労働時間を延長した場合】
 労働時間については第32条で1週40時間、1日8時間と労働させることが出来る時間が制限されています。これを法定労働時間と呼びますが、この法定労働時間を超えた場合に割増賃金を支払う必要があるとこの条文は定めています。例えば1日の労働時間を7時間30分と定めている会社の例でみると、月曜日に60分残業させたとすると8時間までの30分については労働契約外の労働ですからこの30分の労働に対する賃金の支払いは必要となりますが法定労働時間8時間を超えていないため割増賃金の支払いは必要ないことになります。残りのの30分については法定労働時間を超えているためこの条文に従って割増賃金の支払いが必要になります。このような会社の定めた労働時間を所定労働時間と呼び、労働契約書なり就業規則に「所定労働時間を超えた時に割増賃金を支払う」と定められていれば当然25%以上の割増賃金の支払いが必要になります。「法定か所定か」言葉の選択ひとつで答えは違ってくるので注意が必要がです。

【休日に労働させた場合】
 第35条で「 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。」と定められています。ここでいう労基法が定めている義務としての週1回の休日を法定休日と呼びます。今週休二日が一般的ですが、このうちの一つが法定休日で、あと一つが会社が定めた休日、所定休日と呼びます。この条文に言う「休日に労働させた場合」とは週1回与えなければならない休日のことを指しています。従って所定休日の労働については「労働時間を延長した場合」に該当することになり、通常の残業に準じて計算することになります。ただここで問題となるのが、週休2日制で1日7時間労働の場合、残業なしで働いた週は35時間の労働となりますが、もし土曜日に5時間働いたらどうでしょうか。1週間の労働時間の合計は40時間となりますから、割増賃金の支払いは必要なく、5時間分の賃金の支払いだけとなります。この場合、労働契約書や就業規則には「法定休日に労働した場合に35%の割増賃金を支払う」と記載されているはずです。もし、「所定休日に労働した場合は35%の割増賃金を支払う」と記載されていれば、土曜日や祝日の労働に対しても35%の割増賃金を支払う必要があります。言葉遊びのような話ですが、この辺りのことが意外と理解されていないのではないかと思う事例が少なくありません。

【午後10時から午前5時までの間において労働させた場合】
 この時間帯に働いた場合には25%の割増賃金を支払う必要があります。通常人間が寝ている時間帯ですから、それに対するものとしての性格があるといえます。交代制勤務でこの時間帯に勤務していれば「時間単価×1.25」の賃金の支払いが必要になります。残業がこの時間帯にまで及べば法定労働時間8時間を超えた割増賃金の25%プラス深夜割増賃金の25%、すなわち「時間単価×1.05」の割合の賃金の支払いが必要となります。管理職には残業代を支払う必要はないと聞かれている方は多いと思います。第41条に「この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。」と規定され、この第2号に「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」となっているためです。ここの規定で、1日8時間を超えて、また1週40時間を超えて働かせても、休日を与えなくても問題ないし、割増賃金の支払いは必要ないと定めているわけですが、この深夜の時間帯は人が寝ている時間に働くことに対するご苦労賃としての性格として定められているため25%k割増賃金支払いは必要となります。

第39条 使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の
  有給休暇を与えなければならない。
 使用者は、1年6箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して6箇月を超えて継続勤務する日(以下「6箇月経過日」という。)か
  ら起算した継続勤務年数1年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる6箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に
  掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満
  の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出動した日数が全労働日の8割未満である者に対しては、当該初日以後の
  1年間においては有給休暇を与えることを要しない。


 年次有給休暇の問題は技能実習生だけでなく、日本人にとっても大きな問題があります。厚生労働省の平成23年就労条件総合調査結果の概況を見ると平均付与日数が18.1日、行使日数が8.9日で、行使率が49.3%となっています。年休を行使するのが難しい状況があるため半分以上は時効によって消滅してしまいます。この対象者は常用労働者となっているだけでパート労働者が含まれているのかどうか不明ですが、パート労働者の実態を見ると年次有給休暇が付与されること自体知らないケースが多いでしょうし、知っていても行使できない状況が普通だといえます。技能実習生達についてはどうかというと、一部の企業を除いて、取得できないのが現状といえます。法律上年次有給休暇を行使すると自分が表明する必要があることから、この点を盾にとって「そうした要求がないので欠勤とした」と処理されるケースが少なくないのが現状です。中には会社都合の休業に対して年次有給休暇を行使させるという悪い会社もあります。
 年次有給休暇の与え方は、採用されて6か月経過した日に10日与えられます。その後、1年経過するごとに下記の通り与えられます。

採用日から

付与日数

採用日から

付与日数

採用日から

付与日数

6ヶ月

10日

2年6ヶ月

12日

4年6ヶ月

16日

1年6ヶ月

11日

3年6ヶ月

14日

5年6ヶ月

18日

 

 

  

6年6ヶ月

20日



 ただ条件として、年次有給休暇が付与される前の期間の出勤率が80%以上あることが前提となります。またいつまでに行使しなければいけないかといった時効の問題もあります。時効は付与された日から2年間となりますので、2年以内に消化できなければ権利の放棄として消滅してしまいます。技能実習生を帰国前日まで働かされる会社は少なくなくありません。残業代未払等で交渉に入った会社に対しては、帰国前に一括行使を認めるか、買い上げるかといった話も出てきます。買い上げについては、年次有給休暇の行使自体を認めず買い上げるという買い取りの予約は禁止されていますが、自由に行使させたうえで残日数がある場合の買い上げはなんら問題はありません。現実に就業規則にこのように定めている会社もあります。通常の場合、年次有給休暇を行使させると業務に支障がある場合には使用者に時季変更権を行使する権利が認められていますが、退職時のように時季変更ができない状況下では付与せざるを得ないことになります。