労働基準法−12 (第32・34・35条)
外国人技能実習生を中心として

労働時間、休憩および休日



 第32条から第41条までは第4章として「労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇」についての決まりが定められています。私たちに相談のある内容では残業代の問題が一番多いのですが、この問題は賃金未払いの問題ではあっても実際は労働時間をどのように計算するか、祭日や土曜日や日曜日の休日をどのように考えればよいのか、また年次有給休暇の問題との関係で考える必要があります。このあたりのことをしっかり理解していなければ賃金計算の基になる実際に働いた労働時間が1日何時間あったのかが正確に計算できませんし、働く日と考えていた日が実は残業時間として計算しなければならないといった問題が把握できなくなってしまいます。また、第32条と第34条の間には変形労働時間制と呼ばれる第32条の規定(1日8時間1週40時間)を外れた例外的な労働時間の計算方法が定められた条文がいくつかありますが、この変形労働時間制を形式だけ導入しただけで規則通り実施されていなければ第32条の本来の労働時間の計算方法に基づいて労働時間を計算し直して未払賃金を確定するということも少なくありません。
 また技能実習生は来日すると座学の中でこうした簡単な労働法の講習がありますし、母国語と日本語が併記されたJITCO作成の実習生手帳が全員が配布 (現実には、貰ってないと人もたくさんいますが・・) されているため知識はあっても、中には「当社の定めた規則に従って計算をしている。」と洗脳されているケースもあります。
 残業代の問題で相談を受ける場合、持参してもらうものとして、労働契約書、賃金支払明細書とこれまでの労働時間の記録(タイムカードや自分が記録したノート)を持参してもらう必要があります。労働時間の記録がなければ翌日からでも毎日1分単位で記録をつけてもらいデータが集積され、帰国の時期との兼ね合いで本人たちが希望する時期に交渉に入ることになります。帰国時期が迫っており、記録もなければ大雑把な計算で交渉に入り会社にタイムカード等の提出を求め、計算するということもあります。どのような場合であっても、本人たちはかなりのプレッシャーをかけられることになりますので、帰国まで精神的に支えていくことも必要となります。

 まず最初は基本的な労働時間についての条文です。

(労働時間) 第32条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
○2  使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

【罰則:6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金】

 労働時間の大原則は、「1週間40時間労働、1日8時間労働」となります。これを超えて働かせることはできません。ただ、第36条に基づいて労使協定を結べばその協定した時間内であればこの時間を超えて労働(残業)させることが出来ます。俗に36協定と呼ばれるものです。
 従って、1日8時間労働の会社であれば土曜と日曜日を休日にしなければこの原則が守れないことになります。労働時間が7時間30分の会社であれば、月曜日から金曜日までの5日間で、7.5×5日=37.5時間となり、土曜日に2.5時間働かせても構わないことになります。
 ここに定められている「1週間40時間労働、1日8時間労働」を法定労働時間と呼びます。法律で定められた労働時間の上限という意味になります。これに対して、会社が定めている労働時間のことを所定労働時間と呼びます。また残業したら25%の割増賃金が付くといいますが、これは法定労働時間を超えた場合の話であって、所定労働時間を超えても法定労働時間内で収まっていれば割増賃金を支払う必要がないのが原則論です。時間給1000円で、1日7時間労働の人が2時間残業した場合には、法定労働時間内の8時間までの1時間はプラス1000円の残業代となり、法定労働時間8時間を超えた1時間については25%増しの1250円となります。ただ労働契約や就業規則で、「所定労働時間を超える労働に対しては25%の割増賃金を払う」となっておれば残業すれば8時間以内の残業であっても25%の割増賃金が支払われることになります。
 労働時間の計算は1分単位で計算するのが原則ですが、賃金の締切日に1か月の労働時間を合計して30分未満の端数は切り捨て、30分以上の端数は切り上げとすることは認められています。現実には日々適当に丸め処理されていますが、トラブルが起こり未払賃金を計算するとなると1分単位で計算して請求することになります。始業時間前と終業時間後に行われるミィーティングや掃除なども当然労働時間とみなされます。工場などでは15分前からミィーティングが実施されながら労働時間として計算されていない例をがあります。始業前15分の朝礼と終業後10分の掃除がある場合、1週間2時間5分の残業となり、広島県の最低賃金で計算すると、719円×1.25×2.08時間×4週間=7478円となります。労働基準監督署が事業所に立ち入り調査すると、事務系の場合、パソコンのログオンとログオフの時間をチェックします。当然、その間の休憩時間を除いて時間が労働時間とみなされます。問題提起がなければ、始業前後の問題まで、取り上げることはありませんが、いったん問題となれば、厳格に法律に従って未払額を計算せざるを得なくなるのが実情です。この辺りのことはこちらが気を付けておかなければ技能実習生にしても日本人にしても労働時間としての意識がないため話に出ることはありません。
 通常は、残業時間が正確に計算されていなかったり、全く支払われていないといった単純な例が大半ですが、先日次のような例がありました。漠然とした残業の問題もありましたが、メインは有年次有給休暇をとったら1週間ペナルティーとして休まされる問題でした。会社の稼働時間集計表も持ってきていたのでチェックしてみると稼働表と賃金明細書の労働時間は一致していましたが、残業時間数や休日時間数の計算が両者違っていたため、正規な計算をして残業代未払がこれだけあると話すと、「私の会社では、1週間の労働時間を合計して40時間を超えた部分のみ25%の割増賃金が支払われるようになっている。」と黒板に図を描いて説明をしてくれました。ここでの不正は、@1日8時間を超えても残業扱いとしていないこと、A賃金締切日の属する週は7日なくても40時間を超えなければ割増賃金をつけないこと、B1日8時間労働であるため土曜日は全ての時間が割増賃金の対象となるはずなのに無視されているというものでした。これくらいの未払金があると話すと、なかなか私の話を信じてくれませんでしたが、時間をかけて納得させました。

(休憩)
第34条  使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
○2  前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
○3  使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

【罰則:6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金】

 休憩時間はこの条文通りで、6時間以内の契約で労働契約を結んでいる人には与える必要がないことと、6時間を超えて、8時間以内の人については45分の休憩でいいとされています。条文にあるように8時間を超えた場合には1時間以上の休憩が必要となります。要するに法定労働時間をこえて残業させる場合には1時間の休憩を与えておかなければならないことになります。昼休みが45分の休憩時間であれば、残業が終わるまでの間にあと15分の休憩を与えなければならないことになります。もし、昼休みの休憩が1時間であれば改めて休憩を与える必要はないことになります。また、休憩時間はまとめて与える必要はなく、分割して与えることも可能ですから、建設業や工場などでは10時に10分、15時に10分程度休憩を与えているところもあります。この旨、契約書に記載があれば休憩でいいし、記載がなければ労働時間として考えればいいといえます。
 「休憩時間とは単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取り扱うこと。(昭22.9.13発基27号)」との通達があり、労働者が自由に利用できる時間でなければいけません。職場から出ていいかどうかについては、「休憩時間中の外出について所属長の許可を受けさせることは、事業場内において自由に休息し得る場合には必ずしも違法にはならない。(昭23.10.30 基発1575号)」があります。
  あと一つ、一斉に与えるのが原則ですが、銀行やバスの運転手さんなど一斉に休憩をとる社会的に問題がある幾つかの業種は免除されていますし、業務の都合上一斉休憩が難しい場合には、労使協定で与え方の変更も可能となります。 

(休日)
第35条  使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
○2  前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

【罰則:6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金】

 週1回の休日が与えられていないということはないと思いますが、技能実習生では時折こうした事例に遭遇します。少し前、縫製工場で働く中国人の残業代を計算したら数か月に1回程度しか休日がありませんでしたし、坂出の造船所で働くインドネシアの技能実習生の場合もお正月ぐらいしか休日はなく、おまけに残業代も一切支払われていませんでした。この条文で休日とされている週1回の休日は日曜日に限らてはいません。現実には週休2日制が普及しているので土曜日と日曜日が休日と考えてしまいますが、この条文が言っているのはあくまでも週1回の休日のことで、特別に会社が指定していなければ日曜日が法定休日となります。この週1回の休日のことを法定休日と呼び、それ以外の土曜日や祭日などの休日を所定休日と呼びます。労基法がらみの書類で休日と記載されていれば法定休日を指しています。未払残業代を計算するとき問題となるのが法定休日は35%で問題がないのですが、所定休日の割増率はどうなるのかということがあります。契約書に所定休日の割増率が記載されてなかったら土曜日や祭日は会社が勝手に与えた休日であり、法定休日とは見做されないため通常の残業と同様25%の割増率が適用されます。残業代未払で問題となった会社の契約書を見ているとこの違いが分からないまま法定休日も所定休日も35%の割増率が記載され、その通りに支払われている例もありました。