労働基準法−1 (第3条・第4条)
外国人技能実習生を中心として

均等待遇・男女同一賃金



 日本に働く外国人に対して日本の法律はまず私たち日本人と同じように適用されます。これがいいのか悪いのかというと技能実習生にはそのまま適用することには問題もあることは前回で説明しました。しかしそれ以外の外国人が日本の法律の内容を理解することはまずありえないといえますので会社が当然適正に法律に即した扱いをし、説明をする必要があるにもかかわらず外国人だからとの理由で不当な取り扱いをする例は非常に多いといえます。当然そうであれば労働基準法第3条の規定に違反し、また違反の内容によって該当の条文違反として罰則が適用されることになります。労働基準監督署は罰則規定の適用については全く考えていません。労働条件通知書を交付していないことまた残業代未払問題などで民事訴訟を起こしていればそれが解決したあとでなければ調査も行わないとの態度をとっています。行政の民事不介入の原則があるからと言う人もいますが、道交法違反の場合そうした問題とは無関係に罰金が科されてくるはずです。同じように条文に従って機械的に罰則の適用をしてもらいたいとは思いながらも、そこまでする人的余裕が無いのも現実ですし、それ以前に真面目に取り組めばほとんどの会社が対象となってしまうということもあり仕方がないことと諦めざるを得ないのかもしれません。

(均等待遇)
第3条
 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

【罰則:6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金】

 こうした問題は別として、労働基準法は「国籍、信条又は社会的身分」の三つについては差別的な労働条件を設定してはいけないと定めています。ここで規定されている「賃金、労働時間その他の労働条件」とは何かと考えると労働基準法に定められている労働条件に限られていると考えてもいいでしょう。当然、労働条件通知書や就業規則は労働基準法で規定されているものですからそこに記載する内容はこの第3条に基づいて記載する必要があります。従って必要最低限の記載内容にし、福利厚生制度等は極力なくすのが良いということも言えます。また支給する条件の設定の仕方によっては外国人を合法的に差別していくことも可能だといえます。そうした面から考えて問題が持ち込まれるたびにもう少し上手に規定を作成すればいいのにと思うことが少なくありません。法律は白か黒かで片付く問題は少なくグレイゾーンの中での綱引きを行っているのが現実ですからどのような理論構成をするかということにつきます。そうはいっても賃金面について差別的取り扱いは難しいと思いますが、外国人労働者の賃金を意識的に低く抑える例は当たり前のことといえます。技能実習生の賃金はごく一部の例外を除けば最低賃金が適用されています。広島県の場合1時間710円ですから、1日8時間労働の22日稼働として計算すると、
 710円×8時間×22日=124,960円
 となります。会社は協同組合に1か月一人当たり3万円程度管理費を支払っているので日本人労働者の最低あたりの月給を支払っているのと考えていいのかもしれません。日本の経済を支える単純労働者を外国から合法的に確保するための制度ですから技能実習生制の賃金を安く抑えて口入屋である管理組合を養っていく必要があるからやむを得ないことかもしれません。貨幣価値が違うのだからとの話も聞こえてきますが、こうした考え方はこの均等待遇の規定に違反する考え方といえます。基本給の問題以外に日本人と手当が違っている例もあります。日本人が敬遠する仕事を押し付け、日本人には1日1000円の手当て、技能実習生には500円というものもあります。2月初旬に帰国する技能習生は株式会社に勤めていながら社会保険に加入させられていませんでした。また、社内で暴行を受けた技能実習生にしても社会保険への加入が無視されていたので傷病手当金を受給できませんでした。もし彼らが死亡することがあったとしたら母国の奥さんや子供は遺族年金を受給できないことになってしまいます。これらは厚生年金保険法の関係ではあっても就業規則や労働条件通知書に記載すべき事項であり均等待遇違反という面もあります。また技能実習生には年休を与えないというのが当たり前のようになっています。帰国時に未行使の年休を買い上げてくれる企業はまだいい方かもしれません。年休の買い上げについては、使わせないが帰国時には買い上げるという形はダメですが、自由に使用させて残りを買い上げる場合には違反とはなりませんので、話の持って行き方ひとつで合法にも非合法にもなります。

 次に第4条には男女同一賃金について定めてあります。

(男女同一賃金の原則)
第4条
 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない

【罰則:6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金】

 前条の均等待遇はあくまでも「労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として」であって、男女で差別しても構わないという規定です。ただ賃金だけでは男女間の差別をしてはいけないというのがこの4条の規定です。男女間の差別が禁止されたのは男女雇用機会均等法が制定されてからといえます。この規定にもかかわらず男女間の賃金格差に時々ぶっつかることがあります。技能実習生でこの問題は聞いたことがありませんが日系外国人の問題で男性と女性で時間給が異なっている例がありました。それに合わせて女性については一定年齢からさらに低い額に落とされるというものでした。やっている仕事は同じなのに不思議な話です。生計維持の中心になっているのが男性で女性は生活維持の補助的な労働と位置付けているからのようでした。同時に、そこで働く日本人は年配の女性、要するに小遣い銭稼ぎ的なパート労働している人を意識しているようでした。

 このあたりの問題は少ないと思いますし、あるとすれば外の問題の陰に隠れているのかもしれません。むしろ日本人の方が問題を抱えているのかもしれません。道交法並みに罰則規定を適用すれば大きく改善されると思いますが・・。