身近にある労働の法律


 新しく社会人となった人達も1カ月が経過すると多少は周りを見回せるようになり、今まで抱いていた思いと現実のギャップに気付いてくるではないでしょうか。積極的な人は新しい問題意識をもってやるべき方向に進んでいくでしょう。厚生労働省が昨年11月に発表した平成23年(2011年)3月新規学卒者の卒業後3年以内の離職状況の調査結果を見ると、「大学卒」の32.5%、「短大卒」の41.2%、「高校卒」の39.6%、「中学卒」の64.8%が3年以内に離職しており、全学歴で離職率が前年を上回る結果となったそうです。運悪くブラック企業に就職した人たちも、満足して働いている人達も自分を守ってくれる労働の法律を、また自分が人事労務の担当者として労働者を取り巻く法律を知っておくことは必要なことではないでしょうか。その辺りのことを簡単に説明していきます。

1.労働者とは誰か
 働き方にはさまざまなものがあります。派遣、請負、正規や非正規、事業経営また歌手や俳優という働き方もあります。しかし労働の法律でいう労働者と認められるためには次の二つの条件を満たす必要があります。@指揮命令のもとに労働をしていること、Aその労働の対価として報酬が支払われていることです。派遣、正規非正規と呼ばれるグループが労働者に当たります。その呼称には、正社員、嘱託、パート、アルバイトなど様々な呼び方があっても前記の要件に該当すれば労働者とされ、労働の法律が適用されます。そうすると、学生のアルバイトであっても労働者に該当し、仕事中や通勤途中に怪我をすれば、健康保険で治療するのではなく、労災保険で治療を受けることになります。テレビに映るアナウンサー、司会者、歌手、タレント、バックで踊っている人やコーラスをつけている人達の誰が労働者に該当するのでしょうか。

2.労働の法律
 では労働者と認められるとどのような法律が関係してくるのでしょうか。主なものを挙げておきます。
(1)労働基準法
 就活の学生がよく口にするブラック企業と言う言葉があります。凄まじい働き方を強要したり、会社の指示に従わなければ精神的に追い詰めていびり出すことをする会社です。その結果、過労死やうつ病といった事態が引き起こされます。こうした働き方を規制し、まともな労働条件や労働環境を確保しようとするのが労働基準法です。労働時間や賃金、休日や有給休暇、どのような条件で働いているのかといった就業規則や労働条件の書面での交付また職場での安全衛生の確保また労働災害に対することなどが定められています。ちなみに、1週1日数時間しか働かない人にも有給休暇が与えられると定めています。
(2)労働保険
@労災保険・・仕事中や通勤途中の怪我や病気に対して治療費、休業補償、後遺症への補償等、また会社が倒産し、賃金が支払われないときの未払い賃金立替払制度などがあります。臨時的に労働した場合やアルバイトであっても適用されます。
A雇用保険・・失業中には失業給付、その他、在職中に資格取得の講座等に通った場合の費用の補助また求職中の職業訓練で資格取得等の講座受講ができます。
(3)社会保険
 病院の医療費や病気で会社を休み賃金が出ないときに傷病手当金が給付される健康保険と、老後の年金や事故で障害を負ったとき、またうつ病等で働けなくなった時の障害年金等が給付される厚生年金あります。

3.労働契約・労働条件
 わたしたちがアパートを借りると賃貸借契約を、物を買う時には売買契約を結びます。これと同じように就職すると労働契約を結ぶことになります。普通この契約書を交わすことは少なく、口頭契約が普通です。それではどのような労働条件で働き、いくら賃金を貰い休日や休暇がどうなっているのか分からない為、労働基準法は労働条件を書面(労働条件通知書)で交付するように定めています。同時に、常時10人以上の労働者を使用していれば就業規則作成して労働基準監督署への提出を義務付けています。この二つで自分の労働条件が決定されます。

4.労働時間・残業
 無際限に働くと体調を崩し、最悪の場合過労死となってしまいます。こうしたことを防止するため労働基準法では1日及び1週間の労働時間の限度を定めています。1日の労働時間は8時間、1週間の労働時間は40時間が限度となります。使用者がこれを超えて働かせようとするときには労働基準法第36条の定めに従った労使協定(36協定)を結び労働基準監督署に提出しなければこの限度時間を超えた残業や休日労働をさせることはできません。当然、1日8時間1週40時間では問題のある職場もあるため変形労働時間制等で設定した変形期間を平均して1週40時間となれば良いと言った制度もあります。

5.賃金・明細書
 賃金の計算や支払い方法などについて労働基準法は5つの原則を定めています。@通貨で支払う、A労働者に直接支払う、B全額を支払う、C毎月1回以上支払う、D一定の期日に支払う、の五つです。賃金支払明細書を交付するよう定めた法律はありません。しかし所得税法では所得税が分かるものを渡す必要があるとされているので、これを満たすだけの簡単な賃金支給明細書から稼働状況が良く分かる詳細なものまで様々なものがあります。しかし一方で労働基準法は使用者に労働時間等所定の事項を記録した賃金台帳を備え付けるよう義務付けています。

6.休業手当
 労働者にやらせる仕事が無くなると会社は労働者に休業命令を出します。ひどい場合には数か月と言うこともあるでしょうし、月の内に数日と言ったものもあります。この日については賃金がどうなるのかといった問題があります。「働いていないのだから賃金は支払わない。」との例も少なくは無いでしょう。これについても労働基準法に定めがあります。過去3か月の平均賃金の60%を支払わなければいけないとなっています。

7.退職・解雇
 「明日から来ないでいい。」と突然解雇される例も少なくありません。これについても労働基準法は30日前に解雇予告をしなければ、平均賃金の30日分を支払う必要があるとしています。