入局管理局広報資料から
平成21年の「不正行為」認定について(22年3月)


 今年3月に入局管理局から研修生・実習生に対する第一次受入機関、第二次受入機関ごとの不正行為数を発表しました。第一次受入機関とは外国から研修生を受入れる機関で大半が○○協同組合という形態をとり、傘下の組合員である企業(第二次受入機関)に送り込んでいる機関を指しています。今年の6月までは、1年目は研修生として労働者として扱われませんでしたが、2年目、3年目は第二次受入機関と雇用契約を結び労働者としての扱いでした。研修生は労働者ではないため1日8時間の研修が基本とされ、それを超えた研修は禁止されていました。実習生になると日本人労働者と同じように労働関係の法律が適用されるため問題となる事項は日本人労働者と同じですが、外国人特有な問題として、第1類型、第2類型や第5類型のうちの不法就労者の問題があります。
 また解雇の問題がここに挙げられていないのは3年間の期限を切られた研修であるため原則として解雇の問題は発生しないからですし、立ち入り調査では把握できないためといえます。現実には非常に大きな問題として存在していますし、私達のような個人的な活動によるものやユニオン等に持ち込まれて処理された事案はこの統計には反映されておらず、反映させれば第2類型以降は大きく数字が変わることになるといえます。
 「平成21年に「不正行為」に認定した受入機関は324機関であり,類型別では383件である。」とされています。実際に不正があった項目を見ると所定労働時間外作業が29%となっており、第5類型の労働法規関係違反が31.3%であり、合算すると60.3%となります。

◎第二次受入れ機関に対する類型別「不正行為」認定件数の推移

類   型
平成19年
平成20年
平成21年
第1類型 @二重契約
1
0
0
0%
A研修・技能実習計画との齟齬
30
36
14
3.7%
B名義貸し
109
92
87
22.7%
Cその他虚偽文書の作成・行使
6
6
2
0.5%
第2類型  研修生の所定時間外作業
90
160
111
29.0%
第3類型  悪質な人権侵害行為等
64
32
28
7.3%
第4類型  問題事例の未報告等
0
1
1
0.3%
第5類型  不法就労者の雇用
29
14
20
5.2%
 労働関係法規違反
172
153
120
31.3%
第6類型  準ずる行為の再発生
0
0
0
0%
※ 一つの受入れ機関が,複数の類型により「不正行為」認定されている場合は,それぞれの類型に計上しているので,認定機関数と類型別
 の認定件数とは一致しない。

 報告書には類型別に問題点と不正行為の具体例が示されていますのでそれに即しながら実際に経験してきたものを参考にしながらみていきます。

(1) 第1類型に関する事項
@第1類型A「研修・技能実習計画との齟齬」
 研修できる職種は、法律によって定められている職種に限られます。平成22年7月1日現在66職種123作業が定められており、単純作業は除外されています。労働契約書にこの職種が記載されていながら現実には全く関係のない作業をさせている例によく遭遇します。研修とは名ばかりで現実は出稼ぎであるためこの点を問題として取り上げると入国管理局から受け入れ停止とされ、結果として、帰国させられてしまう可能性があるため私達は問題とすることは少ないといえます。子会社も含めて100人近く受け入れているマツダ関連の企業でも平気でやっていました。ここで例示されているのは、「産業廃棄物処理業を営む受入れ機関は,「プラスチック成形」の研修を実施する設備を有していないにもかかわらず,同研修を実施するとして研修生を受け入れ,主として廃プラスチックを加工する作業に従事させていた。」という例が上げられています。

A第1類型B「名義貸し」
 「「名義貸し」とは,申請に係る受入れ機関では研修生や技能実習生を受け入れずに他の機関で受け入れられていた場合であり,典型的には,A機関で研修を実施するとして申請しながら,実際はB機関で作業に従事していた場合である。」と説明され、「型枠大工工事及び鉄筋工事等の研修・技能実習を行うとして研修生・技能実習生を受け入れた事業協同組合は,傘下組合員である受入れ機関の倒産や仕事量の増減に応じて,地方入国管理局の許可を受けることなく研修生・技能実習生を申請とは異なる企業で作業に従事させていた。』という例が挙げられています。実際、交渉中、賃金計算はよそがしており現金を渡すだけという会社がありましたし、残業代は別の会社が支払っているという例もありました。

(2) 第2類型「研修生の所定時間外作業」
 研修生の研修時間は1日8時間1週40時間を基本として組み立てられていますので、1日8時間を超えることは出来ませんし、土日は休日とする必要があります。現実にはこれを超えて残業させているのが普通であり、研修生になった月以降80時間から100時間の残業をさせている例もありました。また賃金が支払われていない例もありますし、支払われていてもフィリピン人の場合は時給500円とおなじでした。解説には「監督すべき立場にある第一次受入れ機関が,研修生の残業を隠ぺいする目的で,所定時間外作業に対する手当を「功労金」として研修生の帰国の際に手渡すよう指南していた。」とあるような例もありました。
(3)第3類型に係る認定(悪質な人権侵害行為等)
 労働基準法第5条は「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。」と強制労働の禁止を定めています。しかし第5類型に労働法違反があるため労働基準法第5条違反として処理されていないようです。事例としては、セクハラ・パワハラ、パスポートの取り上げ、強制貯金に加えて賃金の不払いも含めています。セクハラと賃金未払から逃げ出してきた実習生を保護したとき監督署に連れて行くとセクハラの問題は多発しているとのことでした。また、残業代未払で会社に交渉を申し入れたその晩に第一次受入機関が研修生のアパートに押しかけ深夜12時過ぎまで取下げを強要し、取り下げなければ50名の研修生たちを帰国させることになると脅迫して取り下げさせた例もありました。これなどもこの類型に入るといえます。また、携帯電話の所有禁止や教会に行くことの禁止なども当たり前に行われています。

(4)第4類型「問題事例の未報告等」
 ここでは定期報告物の未提出と研修生の失踪等を報告しなかった例が挙げられています。現在の懸案事項の一つに、研修生が日本人と結婚しているフィリピン女性と駆け落ちした問題があります。そのとばっちりで他の研修生たち10名ほどが外出禁止となって既に3週間が経過しています。全く個人的な問題での失踪を共同責任とされることには大きな問題があるといえます。失踪したことについては入国管理局に報告済みとのことで問題はありませんが、外出禁止については第3類型の人権侵害行為といわざるを得ません。

(5) 第5類型に係る問題
@ 不法就労者の雇用について

ここでは他人名義の旅券を利用し入国させた例が挙げられています。他人名義での入国については研修生については聞いたことがありませんが、こうした話はよく聞きます。年齢が低いためタレントとして来日できないため可能となる年齢までは他人名義で来日したと話してくれたフィリピン女性がいましたし、自分の親戚が他人に名義を使用され外国に行けないとも聞きました。また偽装結婚の問題もいろいろ聞こえてきています。偽装結婚防止のためフィリピンでは60歳以上の外国人との結婚が禁止されたそうです。

A労働関係法規違反について
 ここでの違反の大半は賃金不払いの問題であり、労働安全衛生法違反もあるとされています。
 賃金未払については二つのことが考えられます。一つは残業代の未払です。残業時間に見合った残業代が支払われないもの、二つ目は、研修生の賃金は最低賃金で設定されているのが普通です。最低賃金には一般の最低賃金と産業別の最低賃金があり産業別最低賃金が高く設定されているのに一般の最低賃金で賃金を支払っているケースがあります。あくどい例では、労働契約書には産業別賃金を記載し、実際は一般の最低賃金を支払っている例です。こうした例では労働契約書を渡していませんし、渡していない企業には何らかの問題があるといえます。また、最低賃金とならざるを得ない理由として第一次受入機関に対して研修生管理費を3.5万円前後毎月支払っていることがあります。合計して15万円から16万円となっても日本人よりは安い賃金で雇用可能といえます。