日系フィリピン人労働者強制帰国未遂事件

ACT−1

 研修生問題に関する本が昨年の11月から今年の3月にかけて次の3冊が出版されました。


  1.トヨタの足元で 〜 ベトナム研修生・奪われた人権
  2.<研修生>という名の奴隷労働 〜 外国人労働者問題とこれからの日本
  3.外国人研修生時給300円の労働者2 〜 使い捨てを許さない社会へ



 このことは研修生の増加に伴い各地で問題が表面化し、サポートする団体が組織されてきた結果といえます。しかしこうした支援団体がどの程度あるのか、どこに相談に行けばよいのか分からないのが現状であり、問題が表面化するものは氷山の一角でしかないといえます。どの本を読んでも、低賃金、賃金未払い、休日もなく、高額な家賃を取られたり、パスポートを取り上げられたりと.同じような情況が報告されています。研修生が正当な権利を主張すれば強制帰国をさせられてしまいます。それを防がなければ問題は闇の中に消え去ってしまいます。


 強制帰国の問題については、身近なところでは、作業中に目を負傷し、失明した研修生がすぐに帰国させられた例が今年発生しています。それがどこで、誰かまでの情報は得られず、他人事で済んでいました。しかし、8月18日に労働基準監督署に申告予定であった日系フィリピン人夫婦から強制帰国させられると17日の朝早く連絡が入って他人ごとから一転現実の問題として対応に追われることとなりました。その日午後6時ごろ二人を迎えに行き、ホテルに宿泊させ、翌日は労基署への申告、この日宿舎の段取りができずホテルに宿泊し、翌日以降は二人のフィリピン人の家に別れて住んでいます。現在進行形の問題ですが、とりあえず概略を報告します。


 この事件の当事者が研修生ではなく日系フィリピン人とその配偶者である点が他の事例と違っています。しかし扱いは研修生と同じでした。彼らの在留資格は「定住者」であり、どこに住んでも構いませんし、職業も自由に選ぶことができます。強制帰国させられたとしても入国は自由にできますので、フィリピンでの連絡先さえ分かっておれば再入国させ労働基準監督署への申告も可能となります。


 日系フィリピン人夫妻からの相談は教会で知り合ったフィリピン人を通じて広島フィリピン人協会に連絡があったものです。フィリピンでは90%を超える国民がカトリックの信者といわれており信仰心も厚く年齢を問わずミサに出てきます。ただ研修生などではバス代に事欠き参列できない現実もあります。彼らの相談は、妻が仕事中に右腕を骨折した事故のことでした。労災扱いとはされず一旦会社が医療費を立替、後日賃金から控除されるため5日間の手術入院後は賃金カットされれば生活の問題もあるため働いていました。仕事の内容、事故の概況、労働条件などを調べているうちに労災事故はもとより、最低賃金法違反、賃金未払いなど大きな問題があることが分かりました。労災手続きは被災者が保険請求をおこない、会社はそれを証明をするだけです。しかし会社は労災事故と認めていませんので証明をすることはないでしょう。この場合、証明がもらえない旨の書面を添付すれば労働基準監督署が調査します。労災事故として労働基準監督署を納得させるだけの事故発生時の状況を説明ができるか否かということになります。仕事は農作業であり、当日は雨天で仕事ができず、レストランでの仕事となり、午前6時30分に派遣先からの迎えがあり、午後4時過ぎに調理の仕事を終え、派遣先の社長に自宅まで送ってもらいました。昨日までに終了させておかなければならない仕事が残っていたことから、社長が派遣元に電話し、折り返し会社の担当者から仕事に行くように指示がありました。雨天で仕事中止、他の仕事に振り替えられ所定労働時間終了後、雨天で中止となった仕事の開始を指示されています。


 妻の労働条件通知書を見ると労働時間は「1日8時間労働」、賃金については「月給は労働日数にかかわらず、月額80,000円です。」とあるだけで、残業の有無、休憩時間、休日、休暇についての記載はありません。現実には、休日は協会に行くための日曜日2回しか与えられていませんし、毎日3時間程度の残業が義務付けられていました。契約書に従いいくら働いても8万円の賃金しかもらえないと理解せざるを得なかったといえます。休日等について記載がないのは労働条件通知書が労働法の知識のある人に見られても1週40時間労働に違反していることを隠すためとしか言いようがありません。賃金8万円についてはあくまでも法律が定めた1週40時間労働をベースに考えなければならないため土曜・日曜日は休日となります。そうすると1カ月22日から23日の労働日ということになりますので1カ月の賃金未払概算額は次のようになります。


   @最低賃金違反・・80,000円÷ (8時間×22日)=454円(時給)
    違反分未払金・・(最低賃金683円−454円)× 8時間×22日=40,304円
   A土曜日の労働・・(最低賃金683円× 1.25)× 8時間× 4回=27,296円
   B残業未払金・・・(最低賃金683円× 1.25)× 3時間×26日=66,534円
   C休日労働未払金・(最低賃金683円× 1.35)× 8時間× 2回=14,752円
                                      合計 148,886円


 次に、「月給は労働日数にかかわらず、月額80,000円です。」とあるため入院して欠勤が発生しても80,000円が補償されなければならないはずですが、入院期間中は無給とされ、しかも、退院後は能率が低下したとして4万円の賃金に減額されています。


 こうした内容についての申告をする予定でしたが、会社に知られるところとなり、不当な労働条件の発覚を恐れ強制帰国を画策したといえます。その証拠として、夫妻が帰国を告げられたとき「再入国後に裁判などおこさない。」との念書にサインすれば再入国させるといわれた言葉でも裏付けられます。こうした言辞を弄しながら私達に向かって帰国は本人の希望、了解済みだったと説明してきます。


ACT−2


 二人を保護した翌日、計画どおり入国管理局と労働基準監督署に行きました。入国管理局ではパスポートを取られていることまた強制帰国、外国人に対する労働条件の問題などのことでしたが、パスポートについては入管法に何も触れていないため取り上げられているとしても何もできない。研修生についても同じで指針に基づき強制力のない指導しか出来ないとのことでした。強制帰国についても在留資格が「定住者」であるため他人が強制帰国させることなどあり得ないし、入国管理局の問題でもないとの回答です。今回のように職場から保護するとなれば研修生であれば在留資格に基づく活動ができなくなるため入管法に基づいて強制送還されることになります。素人の悲しさでこの辺りのことが分からないまま日系外国人に対する一定の保護が期待できるかと考えていましたが、「日本人と同じ。」と一蹴されてしまいました。日系外国人の問題については強制帰国させられたとしても連絡さえ付けば簡単に再入国させることができるため逆に扱い易いことも分かりました。研修生技能実習生が一つの制度の枠の中で運用されているため労働条件の問題があった場合、入国管理局が労働基準監督署と連携をとり対応していますが、定住者となれば入国管理局は関係なくなってしまいます。この会社が問題を起こしたときの参考となればと思い作成していた資料は一式渡してきました。


 次に同じビルの1階にある労働基準監督署に申告し、夕刻にスクラムユニオン広島に行き概要説明の後、組合員として加入させ、今後の交渉を依頼しました。24日にはスクラムユニオンの事務所で団体交渉となり、会社から担当者2名が参加し、申告の内容等についての確認をおこないましたが、労災事故の件については「その日頼まれた仕事はその日に済ましてください。」といっただけで「すぐ終わらせるように。」との指示はしていないため労災事故ではないと主張しています。最低賃金違反、時間外未払いについては理解し、あとは残業時間数の問題となっています。強制帰国の件については社長と日系フィリピン人で会社側の立場で世話をしているA氏とが主人の勤務態度を問題にして了解のうえの帰国だったといっています。ただ、この背景には、事故の発生した山口の職場から広島の職場に移動していますが広島では賃金の月額が4〜5万円にしかならない。これはそこで働く全ての日系フィリピン人にも該当するためA氏に帰国の相談をしたとのことです。このときA氏から37名の日系人が来る予定なのでこの問題は一切口にするなと指示されていたり、社長に帰国の話しをしたときも引き止める動きをしていたようです。A氏が両者の間で自分に都合の言いように双方に対応していたようです。ブローカーとしての収入の問題があったのではないかと考えると、入国時の貸付金10万円の内4万円しか貰っていないにもかかわらず10万円が貸付金台帳に記載されている点に納得がいきます。翌25日が7月分の賃金支払日であるため時間外等を除いた争いのない部分の支払いを求めるとともに至急雇用保険への加入手続きを取るよう求めましたが、即答はなく検討するとのことでした。拒否してくればこちらからハローワークに確認申請をすることになります。これを求めたのは雇用促進住宅への入居を考えていることからでした。併せて生活保護の申請をすれば就職までの生活が安定します。


 25日の賃金受領時に事故の起こった場所が畑の横の排水溝でなく、畑手前の排水溝の上との指摘があり確認の結果、当初の聞き取り調査に誤りがありました。この点について、後刻、電話があり、労災ではなく、通災であるから監督署にはそのように届けて欲しいとのことでした。労働への指示を出していなければ通災にも労災にもなりません。「すぐ行くように。」との指示であれば自宅を出たときから労働となり通災には該当しなくなります。どのような意味の電話か不明です。労災事故治療中は解雇できないこととの絡みでしょうか?移動後の職場での労働についての指示の有無についても違いがあり担当者に対して、「嘘つき。」と気色ばむ場面もありました。賃金全額が受け取れなくても当面の生活の目途が立ち一安心しました。


 引き続き夫の問題の提起となりますし、同じ会社に雇用されている多数の日系フィリピン人も同様の問題を抱えています。ただ彼らが法律違反で働かされていることを知らず賃金が低いだけの認識しかなく、パスポートは取られていることなどから行動を起こすことに不安を持っています。一方私達にとっては、支援者また資金的なことを考えると次の事例が発生した場合どこまで対応していくべきなのか、相談のみにとどめるのか悩ましい問題が残っています。

ACT−3

 外国人労働者の問題を考えるとき、どのような在留資格で日本に滞在し、労働しているのかが問題になります。よく耳にするのが研修生・技能実習生の問題ですし、昨年の派遣切りで大きな問題となった日系ブラジル人の問題になるといえます。私自身が関係しているのはカトリック教会に集まる外国人労働者が対象になるので、フィリピン人が中心となります。若者から年配者まで100人前後の人たちが日曜日に集まってきます。毎週ここに遊びに行っていると彼らの日本での生活、またフィリピンの情況など面白い話が聞かれますし、誕生会などの集まりなどに呼んでもらったり、簡単な料理や食料品なども目にすることができます。こうした関係を通じて様々な問題があることが分かりますし、お互いが助け合いながら生活している情況も見えてきます。今回の日系フィリピン人の問題もこうしたネットワークを通じてスムーズに運んできています。
 外国人の場合一番問題になるのが住む場所の問題です。研修生・技能実習生は勿論新たに来日した日系フィリピン人の場合でも派遣会社が絡んでおり、借金とパスポート等を取り上げており、労災事故が発生したり、残業代が支払われていないなど執拗に訴えたり、今回のように労働基準監督署に申告することが知られてしまうとすぐ強制帰国させてしまいます。今も残業代でクレームをつけている技能実習生がいますので強制帰国の話があれば真夜中でも電話連絡できる体制をとっています。この場合でも問題が発生すれば住む場所となります。何時までも居候はできませんのでアパートを借りざるをえなくなります。
 今回は、幸い雇用促進住宅(注1)に入居することができました。入居手続きはハローワークを通して行い、財団法人雇用振興協会(住宅の管理人さん)に2か月分の敷金を支払い2年間の定期借家契約を行いますが、この度はハローワークで「緊急入居あっせん書」を交付してもらい、敷金なしで6ヶ月の定期借家契約を結びました。この場合、さらに6ヶ月の延長が認められ、その後は退去するか通常通りの契約に移行するかの選択となります。ここは広々した敷地内にあり、海に面し、眺めもよく釣りも出来るうらやましい環境で広さは3DKで家賃が32千円です。雇用促進住宅への入居が可能ということで今後住宅の問題にはある程度対処できるといえますが広さと場所の問題があります。一人であれば、安佐南区相田と安芸区の中野と畑賀の2Kが16,400円〜17,400円が広島市内では一番安いようです。落ち着く先が決まったとは言っても布団、コンロ、照明器具、炊事用品など揃えるとなると大変です。入居に関する動きとしては、9月9日にハローワークで手続きを行い、雇用促進住宅の管理人さんが来る直近の日の9月16日に入居手続きを行い即入居することになりました。これに先立って手続きに必要な外国人登録証明書の入手と、居住地が変わるため役場への転出届けを行い、入居した日には該当の役場に転入の届けまた銀行口座の作成や買い物そして荷物の運搬とバタバタすることになりました。
 これからの家賃・生活費の問題を解決するには派遣会社との未払い賃金・解雇予告手当の交渉ですが、労務管理がなされていないため説得力のある賃金を計算してきていません。日々の労働情況を記録したノートの写しを渡していますが、「通勤時間が含まれている。たびたびトイレ休憩を取っている。真面目に仕事をしていない。」などを理由として労働時間を削って来ています。スクラムユニオンとの下交渉でも労働法に基づいての話ではなく感情論で捲くし立ててくるとのことです。本人達が日々記録したノートしかなければ法律的にはそれを否定することは難しいと思われます。当然、賃金計算の仕方についても私の計算方法と違いがあります。前回も記したように労働条件通知書に労働時間は「1日8時間労働」、賃金については「月給は労働日数にかかわらず、月額80,000円です。」と記載されているため、月額賃金を算出し、これに時間外数に最低賃金(農業のため割増なし)を乗じた額を加算することになりますが、1カ月の総労働時間数×最低賃金で計算してきています。そのため労災で入院した日についても同様の計算をしています。交渉ごとですから落としどころをどのあたりにするかの問題ですが、どこまで派遣会社が歩み寄ってくるかにかかっています。本人達の生活を考えれば早く解決したいのですが、歩み寄りがなく頑なに感情論の世界に止まっているのならば裁判に進むことを考えています。裁判のメリットとして未払賃金額および解雇予告手当と同額の付加金(注2)の支払いが見込めること、さらに強制労働の問題、強制帰国等の損害賠償請求の問題を通じて会社への糾弾が行える点があります。個人的には裁判に進みたいと考えています。まず負ける要素は何もないので裁判費用は立て替えれば済みますし、裁判期間中の生活費は解雇無効の仮処分の申請をし、賃金を派遣会社に支払わせる方法もありますし、最終手段としては生活保護も考えられます。裁判まで考えることになったのは相手に全く誠意が見られず、悪いことをしたとの反省がなく、フィリピンにいても仕事はなく、日本で仕事を与えているという良いことをしているとの意識で対応してくることからです。そこだけをみれば確かにそうかもしれませんが、日本の法律を無視したひどい労働条件で働かせ、暴利を貪っているということには思いが廻らないようです。日本人に対しては世間相場の労働条件で募集しているのに外国人となるとスイッチが切り替わるようです。


(注1)

 財団法人雇用振興協会が運営しており、職業を安定させる目的で全国に設置されており、公共職業安定所の紹介が必要となります。要件に合致し、空室があれば入居できます。敷金として2か月分が必要ですが、後悔のように緊急を要する場合には敷金なしで6ヶ月の入居が可能であり、延長し、敷金を払って継続することも可能です。所在地・空室情況等財団のHPで検索できます。ちなみに広島市内を見ると中区光南、西区は井口明神と草津新町、安佐南区相田、安芸区は中野と畑賀にあります。
  http://www.e-d-a.or.jp/cgi-bin/index.html

(注2)

 労働基準法第113条で解雇予告手当、休業手当、割増賃金、年休への賃金未払に対してこれらの未払い額と同額の付加金の支払いを命じる権限を裁判所に与えています。内容にもよりますが、時間と余裕があれば裁判に持ち込むのが有利となります。




ACT−4

 7月26日から始まったこの問題が10月5日の団体交渉で決着をみました。強制帰国の問題が発生したのが8月17日ですから約1ヵ月半の間相手との交渉が続いたことになります。早かったのか長かったのか、満足の得られる結果なのかどうかよく分かりませんが裁判に進まなくてよかったのかもしれません。個人的には裁判に進めたかったのですが・・・。


 当日の交渉で、先方から、「1カ月8万円の賃金という契約は、農業であり、雨が降れば仕事ができないため15日を基本として考えていたものなので、それに基づいて賃金を計算し直した。」と振り出しに戻るような発言がありました相手が示してきた金額と大差ありませんが、開いた口がふさがらない思いでした。先方は、法律的には対抗できないのが分かっているため契約書を基とにした話は一切してきませんでした。これまで何度も委員長が細かな賃金計算をしても意味が無いので大まかなところで決着をつけようとの提案を理解していない発言です。単純にここまで出せないとの発言であればまだ理解できるのですが、契約の根幹に係る勝手な言い分を理由としてより低い金額での解決を図ろうとしている態度であるためこの時点で交渉を打ち切りたいとの思いでした。解決金の金額提示にしても「職員の賞与も出していない。これ以上出すと会社が倒産する。倒産すれば解決金ももらえなくなるがそれでも良いのか。」などと理由にもならない説明をしてきます。会社が倒産してもこちらとしては関係のないことですし、解決金がもらえなくても、働き先を見つけるのが難しい情況にあるため、遅かれ早かれ生活保護を受けざるをえなくなるのは目に見えています。経営状況がどうなのかよく分かりませんが、白と黒の中間での決着という考え方に乏しい私と違い委員長はその辺りの駆け引きを心得ておられ、粘り強く交渉され、フィリピンの派遣会社に支払う手数料、渡航費用と生活費などの借入金残高32万円程度の返済は不要とし解決金85万円を支払うという内容で解決しました。


 裁判外での解決となると実際の賃金未払額と解雇予告手当の問題に限定されてしまいます。これらと同額の付加金や損害賠償の問題また労基法第5条の強制労働の禁止に該当するパスポートの取り上げや、借金による強制労働の問題など俎上にのぼってきません。労働基準法は刑法であることを再認識する必要があります。条文ごとに刑罰が定められており第5条強制労働違犯については最も重い刑、「1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する。」と規定されています。労働基準法で罰則規定が適用された例があるのかどうか分かりませんが、私達の意識に上ることも少ないのですが、外国人労働者に関しての違犯は常軌を逸しており罰則規定の適用が望まれます。2006年には千葉県であまりにも低い賃金で多額な借金の返済も出来ないとのクレームを発端に強制帰国させられることになった中国人研修生が派遣会社の担当者を殺すという事件が発生しています。派遣会社にとっては問題が発生すればすぐに強制帰国させてしまい外国人労働者の人権は無視されています。今回の二人の場合も同様でしたが、幸い保護出来たから問題が面に出たといえます。


 こうした問題の背景には同じ国の人間が管理するという形で関わっています。今回の場合、金銭的な流れは分かりませんが日系フィリピン人が一人関わっています。”descendants consultants”の肩書きでフィリピンに事務所を持ち、広島にも住まいを持っています。どのような立場か分かりませんがフィリピン人の相談相手が表向きの立場のようで、今回も広島フィリピン人協会にアプローチして社長が金銭での解決を求めていると言ってきました。また、二人が労働基準監督署への申告を仲間に告げたことを会社に報告したスパイ的な立場の人間もいます。同国人に管理させる例は研修生・技能実習生についてもみられ、自分のことも含めて時々相談に来る人もいます。同じ国の人を管理する立場のフィリピン人が「不公平な研修−技能実習制度の暴露」としてコムスタカのホームページに会社の不当な扱いについて発表しています。(注1)


 外国人労働者の問題はあまりにも理不尽な扱いであることを会社も分かっており、正当な扱いに移行するのではなく、隠蔽する方向に動いています。今回の問題も合意がまとまった後、会社からスクラムユニオンにこの問題を口外しないように念書の提出を求めてきたとのことでした。念書に記載する内容を連絡するように伝えたとのことでしたが、マスコミ関係、金額、会社名などの口外禁止のようですし、後日、雇用保険への加入も求めないとの文言もあるとのことでした。果たしてこのような念書が効力を持つのでしょうか。民法第90条に「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」との規定があります。法律に違反した行為を公表すること、また雇用保険への加入を求めないなど当然法律的に行われなければならないことを放棄させるという念書が有効といえるのでしょうか。逆に「このような不正行為は今後一切行いません。違反すれば今回の内容を公表されても構いません。」との念書をこちらに入れるのなら分かりますが・・。「不正行為を辞めるつもりは無い。」との宣言のつもりでしょうか。だた、地元の新聞社には労働基準監督署に申告する前に連絡して、同様の内容の書類も送っていますし、強制帰国が分かった日にも電話でそのむね伝えましたが、衆議院の選挙と重なってそのままになってしまいました。


 今回の件と平行して春から燻っていた不当な賃金引下げの問題が、9月に一方的に引き下げられ、そして10月21日就業後に即日解雇へと進んでしまいました。このケースは当初から解雇を目的としてきていると伝え会社と戦っていく勇気があったからよいのですが、他の事案では不満より恐怖心の方が強くじっと我慢しています。こうした問題を防ぐためにはサポート体制を作り上げることとマスコミとの連携も必要だと思いますが、まだ二の足を踏んでいます。


(注1)  熊本の手取教会を本拠地として外国人問題に積極的に取り組み、大きな成果をあげています。活動内容など詳しく報告されていますのでご参考ください。
 http://www.geocities.jp/kumustaka85/intro.html
 「不公平な研修−技能実習制度の暴露」はこのHPの「技能実習生-研修生問題」の中にあります。