ある日系フィリピン人の死亡から

 日曜日の午後2時半から広島市幟町にあるカトリック教会で英語ミサが毎週行われています。フィリピン人を中心とした外国人が沢山集まってきてミサ前後は楽しい時間を過ごすことが出来ます。80数%がカトリックというお国柄であっても教会に来る人はごく少数です。それも生活基盤が出来た人たちが中心といえます。教会からほど近いところに流川や薬研掘といった歓楽街があり、そこには30軒程度フィリピン人の経営する店があるらしいと聞きますし、この界隈で働いている人たちは100名は下らないと考えられますが、教会で顔を見るのは極少数の人達だけです。こうした人たちとは別に、広島市周辺、江田島市や呉市の音戸町や倉橋町あたりのカキ養殖業で働く日系フィリピン人が多数います。ただ教会には来ることが出来ない地域に住んでいるため教会との関係はほとんどないのが現状です。当然、生活上の問題が発生しても泣き寝入りしているというのが現状です。彼らの動きを見ていると、派遣会社や親せき・友人等の繋がりから職場や住居の移動をしています。
 10月下旬に、こうした人の一人が亡くなったと夜遅く電話がかかってきました。会社で気分が悪くなり、帰宅し、そのまま亡くなったということでした。心筋梗塞のようでした。お葬式で会社の人と会ったので健康診断について聞いたところ、年に1回の健康診断をしているが、検診結果表は本人に渡すだけで会社は貰っていないとのことでした。この人の場合、検診内容ではいろいろ異常があったかもしれません。しかし日本語が読めない人が検診結果表を貰っても内容が分からないまま放置されてしまいます。会社もチェックしていないのであれば当然会社に健康管理義務違反の問題が発生します。この問題に限らず、日本語が読めないため行政からの書類も放置されているのが現状です。現実に、この会社では、以前、雇用保険はもとより、社会保険も無視され、通勤災害も放置されたままでした。団体交渉の結果、ユニオンの組合員については、改善されましたが、今も、アルバイトやパートとして時間単価の高い人たちがおり、社会保険に加入させた人達には残業をさせないなどの差別的扱いがおこなわれています。こうした状況の中で、組合員ではない人が亡くなられたのですが、会社もフィリピン人の通訳も教会には連絡してきませんでした。この会社を退職して近くの会社で働いているフィリピン人から電話がかかってきたものでした。亡くなられた方の奥様とは連絡が取れないまま、明日、お別れ会的な物があって、すぐ火葬されるらしいとの情報だけでした。なにも分からないまま、明日、神父様とそちらに行くということになりました。翌朝、奥様から電話があり、ミサをしてもらいたいこと、見送り会的なものの予定時間が分かりました。出向いて、ミサを挙げ、翌日、お葬式をすることになりました。本来はこの日に火葬する予定だったためか、社長夫婦と連絡をくれた家族と数名の友人がいました。翌日の、お葬式には、会社から2名と通訳、そして亡くなった人の家族と、兄弟夫婦が二組と言う寂しいものでした。会社から数分程度の距離で、11時からの葬儀でしたが、誰も参列していませんでした。11時からの葬儀ですから、休憩時間をずらす等多少の配慮があれば参列できた友人も少なくなかったと思います。お葬式のミサの前、フィリピン人の通訳は、神父様に、「英語ではなく、日本語でミサをするように」と話したとのことですが、英語でミサは行われました。日本語で行えば、家族と親族は日本語が分からないため、なぜこのようなことを言ったのかよく分かりません。ただここの会社の以前の労働争議の問題も関係があるのか、通訳が自分の思うとおりに進められなかったためなのか、私や教会を排除したいためだったのかよく分かりませんが、全てが関係していると考えています。
 この会社には40名を超すフィリピン人がいます。これがルソン島中部のイロカノ地方で話されるイロカノ語圏のグループとセブを中心としたビサヤ語圏のグループとに分かれています。通訳はビサヤのグループであるためイロカノのグループを差別しており、ユニオンへの加入も阻止してきました。その解消のため、月一回のミサを開催しても通訳の指示があってビサヤ系は出てこない状態があります。また、今年から江田島で2か所月1回のミサを始めましたが、これについてもビサヤ系のフィリピン人に対して参加しないように指示をしているため、参加していた人が出てこなくなり、一か所は中心となって活動していた家族が退職移動したため参加者が1名となり開催を一時中止とすることになりました。
 話は戻りますが、亡くなった方が厚生年金に加入しておれば遺族厚生年金を受ける可能性があります。また健康保険か国民健康保険から埋葬料の給付も受けられるはずです。手続を会社がしてくれるかどうか不安があるため一度会って様子を聞かなければと考えています。この会社では、幸い全員までとはいかないまでも労働保険や社会保険の加入が進んでいますが、カキ養殖の業界ではこれらは全く無視されているのが現実です。ミサに来る人に国民健康保険に加入しているか否かを聞いても加入していないとの回答が多くあります。当然滞納扱いとなりますし、併せて住民税も滞納していると考えられます。過去に、この問題で差し押さえ通知がきた例もありました。日本語が出来ないため行政から送られてくる書類も会社の人にでも聞いてくれればいいのですが、そうすることもないまま放置されているのが現実です。以前、労働審判の期日の連絡書で同じような経験がありました。たまたま相手方に連絡すると、労働審判を申し出た。その期日が数日先であると聞かされびっくりしたことがありました。また夏場の2〜3カ月程度は仕事がないため帰国していますが、これももし雇用保険に加入させてくれていれば90日間の失業保険が受給できるため帰国しなくても済むはずです。
 カトリックの信者であれば、教会の所在地をまた連絡すればお葬式も低額か場合によっては無料で行うことも可能です。当然、それ以上にこれからのことについて様々な情報を得ることが出来ます。そうした外国人に向けた情報センターまた対応センターが出来ればいいのですが、フィリピン人は仲良しグループは簡単につくりますが、それらの連合組織をつくって共同して運営することが苦手のため不可能に近いといえます。日本人より外国人の信者の数の方が多い時代となった今、教会がそうした動きをすべき時になっていますが、高齢化が進み動脈硬化起こしているのが現実かもしれません。

※ 第3パラグラフ第1行目の{タガログ語を話すマニラ周辺のイロカノと呼ばれるグループ}を「ルソン島中部のイロカノ地方で話される
 イロカノ語圏のグループ」に修正しました。(H26.6.13)