年休使用時の賃金



労使協定なく有給賃金算定 ヤマト運輸支店に是正勧告


 運送大手のヤマト運輸(東京)徳島主管支店(徳島県松茂町)が、有給休暇の賃金を労働基準法で義務付けられた労使協定を結ばずに算定していたとして、徳島労働基準監督署が同支店に是正勧告をしていたことが9日、ヤマト運輸への取材で分かった。
 同社によると、勧告は4月20日付。支店の就業規則に従って、健康保険法が定める標準報酬日額を基準に算定していたが、支店と支店労組の間で労使協定は結んでいなかった。
 同社労組関係者によると、標準報酬日額で算定した場合、繁忙期の実態が反映されないケースなどがあり、労働者側に不利になる可能性がある。
 ヤマト運輸広報課は「勧告を真摯に受け止め、是正に努めたい」とコメントした。

(共同通信)5月9日 メールマガジン労働情報/No.624

 ゴールデンウィークはサラリーマンにとっては待ち遠しいものです。5月1日がメーデーで休日だったので4月30日に年休を取り3連休としてよく旅行をしていました。こうした時期や盆、年末年始などは比較的年休を取りやすいのですが、それ以外の時期になると病気や怪我であっても休むこと自体精神的な重荷になっているのが現実ではないでしょうか。労働法の講座では「1週間に1日1時間しか働かない労働者にも年休は発生します。」と話しますが、「当然の権利として行使できるかどうかは別問題・・」と話し、参加している人たちの会社の状況を話してもらっています。平成20年の厚生労働省の調査を見ると一人当たり付与日数は17.8日、取得状況は8.5日で前年度も同じ数字とすれば、9.3日が時効で消滅した日数となります。こうした取得状況の中には、本人の望まないまま取得させられる例があります。外国人の例になりますが、一つは仕事が無くなって休業した場合、休業手当を支払わず休業期間の一部を年休取得として処理されているものがありました。また一方では会社がシフトの中に年休を組み込んでいる会社もあり、これではクリスマスにフィリピンに帰れないと嘆いていました。こうしたケースは年休の計画的付与として労基法が認めている方法なので直ちに基準法違反とは判断できませんが問題が無いともいえません。
 こうした年休取得に関してはこれ以外にも問題は色々有ります。年休を取得したとき、当然有給の休暇ですから賃金が支払ってもらわなければなりませんが、どのような計算で幾ら支払ってもらうかが問題となります。普通は出勤したものと看做されているはずなので上記に掲載した記事はピンと来ないかもしれません。実際、年休に対する賃金の計算方法について、労働基準法は次の3つの計算方法を定めています。
  (1)平均賃金
  (2)通常の賃金
  (3)健康保険の標準報酬日額


【平均賃金による場合】
 労基法第12条で「この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。」と定められていますのでこの方法によって計算した金額となります。


【通常の賃金による場合】
 この場合は手間がかからないため大多数の事業所で採用されており、月給であれば欠勤カットを行わず出勤したものとして計算されます。日当の場合にはその日当の額になり、時間給であれば時間給×所定労働時間で計算することになりますので特別な計算をする必要がありません。


【健康保険の標準報酬日額による場合】
 掲載した記事の場合のものですが非常に特殊な例ではないかと思います。賃金に関する事項は就業規則に必ず記載しなければならない項目であるため支店の就業規則に記載されていたのは当然として、この方法による場合には、就業規則への記載に加えて、労働組合又は過半数労働者の代表と「年休時の賃金の支払い方法については健康保険の標準報酬日額による」との書面による協定(労使協定)を結んでおく必要があるにもかかわらず、労使協定を結ばずにこの方法を採用したことに対して是正勧告がなされたものです。


 年休に対する賃金については上記の通り3通りの方法があります。平均賃金によるとすれば毎月平均賃金を計算する必要があり労働者にとっては正しく計算されているのかどうか判断が難しいところがある反面、残業や手当の状況を見ながら年休取得の時期を考えることも可能かもしれません。また標準報酬日額による場合には、毎年4月から6月の賃金の平均で標準報酬月額の改訂が行われますし、基本給等定期的な賃金の変動があった場合にも同様に改訂が行われるため賃金計算担当者にとっては面倒くさいことになってしまいます。労働者が年休の取得時期を損得勘定の上で考えることは問題ありませんが、事業所は就業規則にどの方法を取るか記載しておかなければならないためその都度一番支払い賃金が少ない方法を選択するということはできません。
 この記事の中で「同社労組関係者によると、標準報酬日額で算定した場合、繁忙期の実態が反映されないケースなどがあり、労働者側に不利になる可能性がある。」とのコメントがありますが、確かに1年間標準報酬日額が固定されているため残業が大幅に増えても反映されることはありません。逆に4月から6月が残業のピークが来たときの標準報酬日額の場合には、残業が全く無くなっている場合には労働者にとって有利といえます。また「通常の賃金」による場合には残業代等一切反映されませんので繁忙期の実態を繁栄させようと思えば平均賃金による方法をとらざるを得ないといえます。