身元保証書について


   就業規則に採用時の提出書類の一つとして身元保証」の提出を義務付けている場合があります。たいていの場合、親か親戚の誰かに身元保証人になってもらうのが一般的ではないかと思います。身元保証人を依頼する方にも依頼される方にも具体的にどのような効力を持つのか、身元保証人なると何時まで保証人でいるのか分からないまま署名捺印しているのではないでしょうか。一般的には、電話で了解を得て勝手に記名捺印しているケ−スも少なくはないと推測されます。私がそうでしたので・・。
 一方、会社の人事労務の担当者が身元保証書の効力またその法的な根拠をどの程度知っているのかはなはだ疑問に感じざるを得ない面もあります。就業規則に書いてあるから取っているだけであって、採用時にとってファィルに綴ったらそれで終ってしまったのでは、身元保証書をとる意味が全くないといわざるを得ませんので、簡単に、「身元保証書」について見ていきたいと思います。
 身元保証人は、身元保証した人物が会社に対して損害を与えたり、精神的疾患に陥り問題が発生しているなど会社での行動の全てについて責任を負っているのかと云うと必ずしもそうではありません。会社のお金を横領したり、業務中に交通事故を起こした場合であっても、当然、会社には労働者を指揮監督する義務がありますし、安全衛生教育を施すなどの安全配慮義務もありますので、身元保証人に損害額すべてを請求することができるものでもありません。また逆に、会社にこうした義務違反があったとしても、身元保証人が責任を免れるものでもありませんが、こうした問題が入社後6年目に発生した場合で、会社は身元保証書を入社時に提出させていただけであれば身元保証人は何らの責任を負う必要はありませんし、入社時は人事課に配属され、2年目に経理に配属され、半年後に横領事件を起した場合にも会社が業務内容の変更を身元保証人に連絡していなければ身元保証人は何ら責任を負う必要がないといわざるを得ません。
 身元保証は「身元保証に関する法律」に基づいて行う損害賠償保証契約ということができます。この法律が予定しているのは、損害賠償についてであり、本人の勤務態度や私生活上の問題また精神的疾患に陥った時の責任までは定めていませんので、もし、このあたりのことまで身元保証人に求めるのであれば身元保証書の中に明記しておく必要があります。
 「身元保証に関する法律」は末尾に掲げたように全6条からなる小さなものですが、会社側にとっては有効に活用しようとするとかなり手間のかかるものといわざるを得ません。

【有効期間】
 第1条と第2条に定められているように期間を定めない時は3年間、期間を定める時は5年間が限度となりますので、その都度、更新手続きを取らなければ失効してしまいます。だからといって、自動更新の条項を付け加えればいいともいえますが、これは認められてはいません。

【使用者の通知義務と身元保証人の契約解除権】
 労働者の勤務地や勤務内容を変更したことに伴って、身元保証人の責任が重くなった場合、例えば庶務担当から金銭出納担当に職務内容を変更した場合など、また、金銭出納しながらも問題の発生しそうな処理をしている状況があれば身元保証人に報告していなければ問題が発生しても身元保証人に損害額の補償を請求できないことになります。同時に、身元保証人は、こうした報告を受けたときには身元保証人を辞めることも出来るとされていますので、身元保証書を提出させてもその後のフォロ−を十分に行わなければ、「もし会社に迷惑をかけたときには身元保証人に迷惑がかかるぞ。」との精神的な負担を負わせる以外の効力はないものといわざるを得ません。しかし、大半がこの程度のことで満足されているのが現状ではないでしょうか。

身元保証に関する法律
(身元保証契約の存続期間)
第1条
 引受、保証その他どのような名称であっても、期間を定めずに被用者の行為によって使用者の受ける損害を賠償することを約束する身元保証契約は、その成立の日より三年間その効力を有する。但し、商工業見習者の身元保証契約については、これを五年とする。
第2条 身元保証契約の期間は、五年を超えることはできない。もしこれより長い期間を定めたときは、これを五年に短縮する。
2.身元保証契約は、これを更新することができる。但し、その期間は、更新のときより五年を超えることはできない。
(使用者の通知義務)
第3条
 使用者は、左の場合においては、遅滞なく身元保証人に通知しなければならない。
1.被用者に業務上不適任または不誠実な事跡があって、このために身元保証人の責任の問題を引き起こすおそれがあることを知ったとき。
2.被用者の任務または任地を変更し、このために身元保証人の責任を加えて重くし、またはその監督を困難にするとき。
(保証人の契約解除権)
第4条
 身元保証人は、前条の通知を受けたときは、将来に向けて契約の解除をすることができる。身元保証人自らが、前条第一号及び第二条の事実があることを知ったときも同じである。
(補償責任の限度)
第5条
 裁判所は、身元保証人の損害賠償の責任及びその金額を定めるとき、被用者の監督に関する使用者の過失の有無、身元保証人が身元保証をするに至った事由及びそれをするときにした注意の程度、被用者の任務または身上の変化その他一切の事情をあれこれ照らし合わせて取捨する。
(強行規定)
第6条
 本法の規定に反する特約で身元保証人に不利益なものは、すべてこれを無効とする。